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みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるかむ
中納言兼輔
みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ
(みかのはらわきてながるるいづみがわいつみきとてかこいしかるらん)
訳 あなたが美しい、あなたが華奢な字を書いている、あなたから良い香りがする、あなたが数々の男を夢中にさせているらしいという噂を聞くたびに、みかの原をザックリと分かちて流れるいづみ川のように私の心は張り裂ける。会ったわけでもないあなたを思って、なぜ毎夜毎夜こん
立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む
中納言行平
立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む
(たちわかれ いなばのやまの みねにおうる まつとしきかば いまかえりこん)
訳 お別れだね。
(…ああ、泣かないで)
僕は因幡国へ行ってしまうけど、
因幡山の峰には松が生えているらしい。
僕は毎日その松を見るだろう、君を想って。
君が待っていると聞いたなら、すぐに帰ってくるからね。
君は僕を待っていられるかな。
いなばの
ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは
在原業平朝臣
二条のきさきの春宮の御息所と申しける時に、御屏風に竜田川にもみぢ流れたるかたをかけりけるを題にてよめる
ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは
(ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ からくれないに みずくくるとは)
ちはやぶる…神にかかる枕詞。
神代…神々がおさめていた時代
くくる…絞り染めする
訳 二条の后が、東宮の御息所と申し上げた頃、竜田川に紅葉
陸奥のしのぶもぢずりたれゆゑに乱れそめにしわれならなくに
河原左大臣
陸奥のしのぶもぢずりたれゆゑに乱れそめにしわれならなくに
(みちのくの しのぶもじずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに)
訳 こうやってひとりで自分の心と向き合っていますと、陸奥の国に伝わる信夫摺りの布模様を見ているようです。誰のために私の心はこんなにも乱れかけているのでしょうか。このような私は私ではない。いえ、分かっているのです。本当は気づいている。これが私なのだと
わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ
元良親王
事いできてのちに、京極御息所につかはしける
わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ
(わびぬれば いまはたおなじ なにわなる みをつくしても あわんとぞおもう)
訳 私たちのことが表沙汰になってから、京極御息所に送った歌
あなたに会えなくなり、とにかく困惑しかない。困惑に侵食されているので、あなたと私はどうなるのかなんて悩み、この際どうだっていい。だってもう