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サンクチュアリ-聖域-に涙し、幼かった相撲ファン時代に思いを馳せた話

Netflix作品「サンクチュアリ-聖域-」がとても評判よく、話題ですね。公開から1カ月弱経ち、ようやく時間をとって観はじめたものの、止まらない止まらない、ほぼ2日間で観終えてしまいました。

さすがNetflix、ここまで描くか~としびれるとともに、日本ドラマもまだまだやれるな~なんて偉そうに感動しました。そして、相撲というスポーツや文化、力士の身体や相撲シーンはもちろん、業界の闇やしがらみについても、ここまで相撲界にメスを入れて、リアルに描いた作品はなかったのではないでしょうか。この作品のストーリーは言わずもがな、このテーマをここまで描き切ったということを心から賞賛したいです。

そして私、小学生時代に相撲ガチ勢でした。最近はもう全く見ておらず力士のお名前もわからないのですが、当時ものすっごく真剣に相撲を見ておりました。このドラマの主人公のモデルと言われている"千代大海"が輝いていた、まさに私が相撲に夢中だったあの時代のことを思い出し感傷に浸ってしまい、記事に残しておこうと思い立ちました。
(以下ネタバレ含みますので、ご注意ください)

リアルに描かれる相撲

この作品で本当に素晴らしかったのは、相撲というものをリアルに丁寧に描いていたところだと思います。スポーツをテーマとした映画やドラマって、描写やストーリーにどうしても嘘っぽさや非現実感が出てしまいがちですし、それが見えると多少なりとも冷めてしまう部分があるのが事実。もちろん本作品にも突っ込みどころはあるんでしょうけど、あらゆるシーンから、相撲へのリスペクトや作品への情熱がヒシヒシと伝わってくるものでした。

まず力士の皆さんの身体!元力士の方も登場しているし、それ以外の皆さんは年単位で時間をかけて身体を作ったとのこと。凄すぎる。ちゃんとお相撲さんに見えるし、取組のシーンも本当に相撲を見ているみたい。ああ俳優さんってすごいなあと改めて感じました。

続いて皆さんの演技について。主人公クラスの方々はもちろん、登場人物のキャラが立っているし、皆さんの演技がとても良かったです。どんどん好きになる猿将(えんしょう)部屋の仲間たち。嫌~~~なヒール役である相撲協会の親方たちのネチネチ感。ライバル静内(しずうち)の恐ろしい存在感と、幼少期に登場する家族たち。役柄がぴったりだなと感じました。中でも私がしびれたのは、ピエール瀧さん。この方の演技、昔からとても好きです。元横綱の相撲部屋親方役、ぴったりすぎて、お顔がもう親方顔過ぎて、笑ってしまいました。

リアルさという点だと、どこかのシーンで外国人力士が土俵際に映っていたのが、あぁリアルに丁寧に作られてる!とじんわり嬉しくなったりもしました。

仲間がいる、個人スポーツ

この作品、「相撲版スラムダンク」なんて評判をちょくちょく耳にします。ヤンキーの主人公が大して知らない競技の世界に迷い込み、可愛い女の子に振り回されながら、仲間を見つけて成長していく物語。
私はチームスポーツ狂で、複数人が苦しみながら支えながら組織として成果をあげるストーリーが好きな人間です。個人競技ってそこまで興味が強くないのですが…「個人競技もやっぱりひとりでやってるわけじゃないよな」という当たり前のことを改めて痛感した作品でした。

猿将部屋の力士たち、親方、女将さん、呼び出し、スタッフ、取材をするメディア側。部屋の中はもちろん、関わる様々な人たちがその熱に巻き込まれ動かされ夢中になっていく変化が、とてもわかりやすく描かれていたと思います。

色々な経験を経て成長し、相撲への向き合い方が変化していく主人公 猿桜(えんおう)に影響を受け、部屋の力士陣も変化をし団結していく姿に心を掴まれまくりました。最終8話で、静内戦に向かう花道に部屋の仲間たちが集うシーンでは号泣。皆さんの表情がよすぎて、うおおお混ざりたい…!とすら思ってしまいました(笑)

引き際のかっこよさと切なさ

私が一番感情を揺さぶられ好きだったキャラクターが、主人公の先輩力士である猿谷(えんや)。小結まで上り詰めるものの、膝に大きな怪我を抱え幕下まで陥落。それでも期待をするファンや、憧れる後輩力士、愛する家族もいながら、引退を決意します。多くは語らないが男気に溢れ、後輩育成や部屋の成長にも熱い思いを持つ強い男。葛藤しながら自分は表舞台から去り、部屋に貢献をしていく決断をするその姿は、本作品が描く大きなテーマのひとつだったと思います。

相撲に限らずスポーツの付き物である、怪我や体力の限界、ピークを越えるということ。それに対しああだこうだメディアや外部から批評をされること。追いかけるファンとしても、これまでの輝きを見ているからこそ、その時が近づく苦しさや切なさを感じるものです。でも、だからこそ尊いし、その人を見ていられる有限な時間を大切にしたい、と思えるのだと感じます。猿谷というキャラクターの葛藤と、その去り際の美しさを見ながら、「やっぱりスポーツが好き」という気持ちをじんわりと噛み締めることができました。

猿谷を演じた元力士の俳優、澤田賢澄さん。とっても演技お上手で、いい顔していてハマり役でした。また何かで観たいなあ。

生い立ちから来るライバルキャラの凄み

主人公 猿桜の強すぎるライバル 静内。身体の大きさ、一切喋らない、表情も変わらないなど描き方も秀逸だったし、その不気味な存在と恐ろしい過去を思わせるシーンが、前半では不安でたまらないものでした。6、7、8話での怒涛の静内パートでは壮絶な過去が描かれ、そのあとで現在の静内を見ると、その存在がただ怖いものではなく切なくて苦しい、報われてほしいキャラクターに見えてくる。

物語の面白さは、やはりライバルやヒール役の背景の厚みによって決まってくる部分が多いなあと感じます。そういった意味では、静内という重い過去を背負うキャラの存在が、同じく家庭環境や生い立ちをある意味エネルギーとし突き進む主人公 猿桜との対立構造を、より面白く魅力的なドラマに仕立てているなと思いました。

相撲が大好きだったあの時代

最後に、私の相撲ガチファン時代の思い出を少しだけ。
私は元横綱「武蔵丸」の大ファンでした。いい力士だったよね、と思ってくださる方がいたら嬉しくて泣きます。ハワイ出身、大きな身体から来るパワーと安定感、そしてお茶目で優しい愛されキャラが魅力だった力士。外国人力士が台頭しはじめ、貴乃花が圧倒的人気を誇り外国人力士を倒すと喜ばれ、モンゴルの朝青龍や白鵬が現れたあの時代を戦った大横綱です。貴乃花の相対する強いライバルのひとりとして存在感を誇っていました。

相撲史に残るあの名シーン、小泉元首相が「痛みに耐えてよく頑張った、感動した」と貴乃花を称えた一番で、負けた対戦相手が武蔵丸です。貴乃花はもちろんすごかった。怪我を押して相撲をとり、ライバルを負かして優勝した素晴らしい一番でした。でもガチファンからすると、あの心優しい武蔵丸はもしかして、怪我を負った大人気力士である貴乃花に本気のパワーではぶつかれず、ちょっと手抜いてしまったんじゃないかな、なんて思っています。そんなこと全然なく、実力かもしれないですもちろん。でも悔しすぎて、武蔵丸の気持ちを思って、あの小泉首相のスピーチを聞きながら泣いたことを覚えています(笑)。
そんな武蔵丸も徐々に休場が増えたり、優勝ができなくなったり。幼かった私も、少しずつ引退が近づいていることを理解して切ない気持ちになったことを覚えています。断髪式で武蔵川親方が武蔵丸の大銀杏にはさみを入れたときは、私の中でもひとつの時代が終わったように感じました。

武蔵丸ガチファンでありながら、好きな力士がたくさんいて、家族とともに大相撲を楽しんでいた時代でした。同部屋だった武双山や雅山、優しいお顔ながら怪力を誇る若の里、スタイリッシュイケメンな寺尾、強くてかっこいい魁皇、琴ノ若に栃東、水戸泉、旭天鵬。「サンクチュアリ」のモデルになったとされている千代大海も、好きな力士のひとりでした。記憶をたどりながら、懐かしい気持ちでいっぱいになります。大相撲トランプが宝物で、番付を覚えて、化粧まわしを見るのが好きだったあの頃。友達に言うのはなんだか恥ずかしくて、家庭内だけで必死に追いかけていた趣味だけれど、身体ひとつでぶつかり合う相撲という精神や文化の魅力、スポーツの面白さや難しさ、去り際というものの存在、色々なことを私に教えてくれた存在でした。

最後に

今回「サンクチュアリ」をきっかけに、おそらく相撲ファンが増えて人気がまた戻ったりもするのでしょう。いろんなことがある大変な業界だけれど、日本の国技である相撲ってとっても面白いものです。私も久しぶりに見てみようかな。読んでくださった方、ありがとうございました。

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