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めぐる命 大学山岳部/増本さやかさん _17days to 彼女たちの山

【17days to 彼女たちの山】
2023年3月14日に出版した『彼女たちの山 平成の時代、女性はどう山を登ったか』(柏澄子著、山と溪谷社刊)を紹介するシリーズです。
出版前に20日間かけてSNSなどで書籍や拙著に登場する女性たちを紹介したものを、ここに再録します。

もうひとり「大学山岳部」の項でインタビューしたのは、小山(現:増本)さやかさんです。

さやかちゃんは、平成の中盤に立教大学山岳部で活動していました。
インタビューしたのは、まださやかちゃんのお腹が大きかった頃。コロナもあったのでインタビューに行くことを相談したら、「大丈夫」と。北杜市の森のなかにあるお宅にお邪魔しました。

夫の増本亮さんは、生まれてくる子のために家を増改築中でした。そんな大工仕事の音を聞きながら、さやかちゃんをインタビューしました。

増本邸は時々遊びに行くことがあり、その前は「コロナで出かけられなくなったから、鶏を飼うことにした」と卵をもらいました。私はどうも鶏が苦手なんですが、不思議とさやかちゃん達に導かれ、若干腰が引けていましたが増本邸の鶏小屋には入ることができました。少し楽しかったです。

朝、とれたての卵をいただきました!
さやかちゃんと増本さんの暮らしは、彼らが登山を通じて経験したことや培われた感性や考え方が
根幹にあるように感じています

さやかちゃんの話のなかに、学生の時に同世代で山で命を落とした方々の名前が幾人か出てきました。一方で、「好美」と彼女が繰り返し話に出す加藤(現:浦部)好美さんについては、好美さんと好美さんが産んだ命のことなど話してくれました。

さやかちゃんは、学生時代の写真は全部実家ということで、noteの冒頭に載せたのは、好美さんがリーダーでさやかちゃんがサブリーダーで登ったパンバリ・ヒマール(6887m)の写真を、JAC年報『山岳』から接写したものです。
色んな大学山岳部から集まったメンバーでの遠征。先輩たちから見守られることはあっても、強靭な先輩リーダーがいるわけではなく、同じような力と経験の者同士が自分たちの力だけで登った経験は、かけがえのないものだと思います。彼らの初めてのヒマラヤが、そんな形だったことは、とっても仕合せな経験だと思いました。「初めて」は、その人にとってたった1回しかないことだから。

パンバリ・ヒマールのレポートはコチラで読んでいただけます。
メンバーのひとりだった登山家・山岳カメラマンの中島健郎さんも以前、インタビューでパンバリ・ヒマールの登山について話してくれました。
→コチラ

さやかちゃんの最近のクライミングについては、本書のアルパインクライミングの項でも、わずかではありますが触れています。
さやかちゃんは、2019年秋に、ヨセミテのエルキャピタンにある「フリーライダー」(Ⅵ,5.12d/13a)というルートを、4日間でワンプッシュオールフリーで完登しました。当時の本人の声はココにあります。
ヨセミテはアメリカにあるクライミングの天国のようなところで、そこに標高差約1,000mもある花崗岩の一枚岩の岩壁があります。この規模は世界一と言われています。
さやかちゃんが登った「フリーライダー」は、エルキャピタンに数多くあるルートの中でもひときわ難易度が高いものです。
またほかにも、北米の各地の岩場や南米のパタゴニアなどで難易度の高いクライミングをしています。
彼女のクライマーとしての来歴については、ウィキペディアに詳しいので、ぜひコチラもご覧ください。
こちらのウィキペディアは、辺境クライマーのけんじりくんが、さやかちゃんへの敬意を基に、熱意もって作ったようです!

大学山岳部での話は、「命」の話だったと思います。そして、大学山岳部で始まった登山の経験が、いまの生活の根幹にあるということ。

本書は、平成期の日本人女性の登山の記録を記したものというよりも、ひとりひとりの物語を書いた本になりました。

『彼女たちの山 平成の時代、女性はどう山を登ったか』(柏澄子著、山と溪谷社刊)


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