助三郎

誰でもない誰かに語りたいんだ。

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最近の記事

センス・オブ・ワンダー

センス・オブ・ワンダーという言葉をご存知だろうか。知っているという人はSF小説の論評などで目にしたことが多いかもしれない。SF小説を評する上でかなり上位に食い込む褒め言葉がこれではないだろうか。 言葉でうまく説明できない感覚のようで、僕もうまい説明に出会ったことがないのだけど、うろ覚えの説明を辿れば、「今まで当たり前だと思っていたものが、(小説を読んだ後には)全く違うものに見える」というものだったと思う。 SF小説でよく評される、とは言ったが、この文脈で一番わかりやすい例は、

    • アポロ18号の殺人 はえ〜

      宇宙飛行士ってすごいんやな〜。 以上、感想終わり! 本作の流れは宇宙飛行士の搭乗前訓練から始まり、地球軌道でのゴニョゴニョミッションを経て、月面でのミッション、そして地球へ帰還しハワイ沖へ着水、という構成になっている。 著者のクリス・ハドフィールドは元宇宙飛行士だけあり、彼が描くディティールはまさに微に入り細を穿つ、という描写になっている。 とはいえ、申し訳ないがそれらはメインストーリーである殺人事件の背景でしかないはずである。肝心の殺人がどうなのかというと、こちらはまる

      • 一冊!取引所が魅力的な話

        一冊!取引所とは!! BtoB事業のため、うまく理解できているか怪しいのだが、個人経営でこれから本屋を開きたいといった、卸先との関係があまりないような起業者向けに、出版社への発注を仲介するクラウド型プラットフォーム、のようだ。発注者である本屋からは仲介料を取らず、出版社に月額制で受注可能な本を登録してもらう仕組み。 恐らく小ロットでも発注できるような仕組みなのではないだろうか。実店舗を持つかどうかなどで難易度も変わるだろうけれど、自分セレクトの非常に偏った本屋、というのも面白

        • 映画数珠繋ぎ

          先々週の金曜日に公開された「ソー ラブアンドサンダー」を見た。 なんやかんやでマーベルのヒーロー映画は全部見ていると思う。だっておっさんだもん。 この映画はマーベルというアメリカの漫画に登場するソーというヒーローが主人公の映画第4弾だ。前作の「バトルロイヤル」から監督がタイカ・ワイティティというニュージーランド出身の人になり、前2作よりもかなりコメディよりになった。バトルロイヤルはすごく気に入っているのだけど、同じ上映回に(おそらく)アメリカ人のグループがいて、コメディシー

        センス・オブ・ワンダー

          カメラ(のボディ)どうするか問題

          先日、カメラのレンズを買った。 Sonyのレンズだ。 Youtubeでよく見るVlog(を録るVlogger)向けのレンズで、カメラと、被写体である自分との距離が近くても見切れることなく撮れる広角のレンズで、なおかつ、よくある商品レビューなどでも使用できるよう、至近距離でもしっかりピントを合わせられるレンズだ。しかも軽くてコンパクトなのだから言うことなし。てんこ盛りの機能の皺寄せは当然あるが、そこはスマホなどでもやっている電子補正で賄っている。 僕はVlogを撮りたくて買

          カメラ(のボディ)どうするか問題

          プロジェクト・ヘイル・メアリー 一か八か!

          プロジェクト・ヘイル・メアリーは早川書房より2021年12月16日に刊行された上下巻のSF小説だ。 僕が知ったのはこの6月に入ってからだが、もし刊行当時にこの本を知っていたなら、さぞかし素晴らしいお正月休みを過ごせていただろう。悔やまれる。 とはいえ今読んだからといって感動が薄れるわけでもなし。この本とお付き合いした1週間は大変素敵な日々だった。 本書の感想を書いている方は軒並みネタバレなしで読んでほしいと思っているようだ。僕もそうだ。あらすじだって事前に読んで欲しくないし

          プロジェクト・ヘイル・メアリー 一か八か!

          春の重労働

          4月の第3週頃にビニルハウスを建て、翌週末に種を撒く。苗を作るためだ。そして田んぼに肥料を撒き、耕す。その後、水を引き込み、トラクターで水と土をかき混ぜ泥を作り、平らにならす。代掻き(しろかき)という。ビニルハウスの中の苗から葉が3枚ほど出たら田植えの時期だ。田植え機で田んぼに苗を植えていく。翌週に役目を終えたビニルハウスを解体して春の農作業は一段落だ。雪深い僕の住む地域では、ビニルハウスをそのままにしていると雪でつぶれてしまう。 ひと段落とは言っても、ここからが大変で、今

          春の重労働

          興亡の世界史6② イスラームの理念

          小杉泰著、興亡の世界史6 イスラーム帝国のジハード、その2 セムってなんぞや? ユダヤ教やキリスト教、そしてイスラム教はセム的唯一神教とカテゴライズされている。この並びは成立年の古い順となっている。 セム的というのはセム語系、という事らしく、各預言者の言語はセム語系に属し、それぞれモーセのヘブライ語、キリストのアラム語、ムハンマドのアラビア語によって教えが始まっている。ではセムってなんぞや? その正体はノアの一子セム。ノアはユダヤ教の洪水と箱舟の伝説がなじみ深いが、中東の

          興亡の世界史6② イスラームの理念

          興亡の世界史6① ジハードとはなにか

          ジハードとは、努力すること。 小杉泰著、興亡の世界史6 イスラーム帝国のジハード。 7世紀、その過酷な環境ゆえ大きな国家が生まれず、歴史の空白地帯と呼ばれたアラビア半島。その半島の、紅海に近いヒラー山の洞窟で、40歳のムハンマドは天使の声を聞いた。 その天使、大天使ジブリールはムハンマドに己の主、すなわち神の存在を告げ、その言葉が後にムハンマドが広める啓典、クルアーン(コーラン)の最初の章句となった。 ここから世界三大宗教に数えられ、現在において信徒の数が16億人(20

          興亡の世界史6① ジハードとはなにか

          シン・ウルトラマン これはこれで

          絶賛公開中の空想特撮映画「シン・ウルトラマン」。 主演は斎藤工ということで、昔合コンで斎藤工に似ていると言われたことのある僕は勝手に親近感を覚えているので、早速見に行った。 ちなみにその合コンの時以外で斎藤工に似ていると言われたことはひとっっっこともない。淡い雪のような僕の思い出である。 「空想」「特撮」「映画」というこの映画、心配だったのは「空想」の部分で、ひょっとしたら夢オチで終わるのではと危惧していたけど、幸いそんなことはなかった。 「特撮」映画なので、シンゴジラのよ

          シン・ウルトラマン これはこれで

          ノートとペン②

          最近、若菜晃子さんのエッセイを読んでいる。 「街と山のあいだ」から始まり、「旅の断片」を昨日、読み終えた。3冊目の「途上の旅」は今日、家に届く。 若菜晃子さんを知ったのは、ミーハーで恐縮だが、Instagramがきっかけだ。3冊並んだかわいらしい色合いの背表紙が目につき、画像を拡大してタイトルを知った。こんなことをいうのは失礼かもしれないが、読まなくても本棚にこの3冊が並んでいると満足できるだろう。若菜さんの文章は落ち着いていて、読んでいると気持ちがいい。文章のリズムが自分

          ノートとペン②

          ノートとペン①

          よく本を借りている市立図書館が1~2か月ほど、設備工事のため休館となっていた。1月の中頃のことだ。本を借りられないとすごく暇になってしまうので、どうしようかと考えた先に決めたのが資格試験を受験することだった。 ということでノートとペンを買い、久しぶりに勉強を始めたのだが、これが新鮮でなかなか楽しかった。笑ってしまったのが、文字を書くのが本当に下手くそになってしまったということだ。なにしろ部首の短い線すらまっすぐ引けない。元々上手ではないけれど、普段文字を書くことなんて、メモ

          ノートとペン①

          トンネルを抜けよう。

          トンネルを抜けると雪国であった。 川端康成の雪国は、新潟県の越後湯沢らしいけど、僕の住んでいる秋田県もそんな感じだ。東北地方には日本海側と太平洋側を隔てている奥羽山脈がある。 東京に新幹線で向かう場合、その奥羽山脈を貫くトンネルを抜けることになるが、冬の場合、トンネルを抜けた途端に広がる青空にひどく驚く。 秋田の冬は本当に晴れない。天気なんて雪が降っているか、いないかの違いだけで、空はいつでも灰色だ。他とどのくらい違うのかと思いググってみたら、日照時間は全国最低の1,52

          トンネルを抜けよう。

          ハウス・オブ・グッチを見た

          創業者グッチオ・グッチの孫、マウリツィオの妻、パトリツィアがレディ・ガガ演じるこの映画の主人公だ。 イタリアのブランド、グッチは現在、フランスのコングロマリット(複合企業)、ケリンググループの中核を成すブランドだ。 かつてはグッチ一族の家族経営だったが、お家騒動と外資の流入により身売りされた。グッチ一族最後のグッチ経営者、マウリツィオ・グッチと妻パトリツィアの出会いと野望がこの映画では描かれている。ラストは妻パトリツィアの雇ったマフィアが、マウリツィオを殺す顛末が描かれ、幕

          ハウス・オブ・グッチを見た

          歯医者に勝ーつ!!

          僕がこの世で最も恐ろしいのが歯医者だ。 4ヶ月に一度の定期検診では毎回毎回、恐怖のあまり手汗で手のひらがビチョビチョになる。 歯医者に定期的に通っているだろうか? 恥ずかしながら僕は中学校を卒業してから20代も終わりに近づくまで、歯医者に近寄りもしていなかった。何しろ怖いのだ。汚いと言われればぐうの音も出ないが、当時はとにかく夜に歯を磨くのがめんどくさかった。人と会うから朝は必ず磨いていたが、宿題が終わらないまま迎えた夏休み明けの学校のごとく、まともに歯を磨いていない自覚の

          歯医者に勝ーつ!!

          男らしくなくていい

          3月11日に「ザ・バットマン」というヒーロー映画が公開予定だ。 予告編がダークでスタイリッシュでカッコよく、とても楽しみにしている。 そんなザ・バットマンの記事で、以前印象に残るものを見た。 「トキシック・マスキュリ二ティ」という言葉を知ったのはこの時が初めてだったのではないかと思う。 「トキシック・マスキュリニティ(Toxic Masculinity)」という言葉が、ここ数年で注目度が急上昇している。日本でも「有害な男らしさ」という言葉で話されるようになってきているこ

          男らしくなくていい