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トンネルを抜けよう。

トンネルを抜けると雪国であった。

川端康成の雪国は、新潟県の越後湯沢らしいけど、僕の住んでいる秋田県もそんな感じだ。東北地方には日本海側と太平洋側を隔てている奥羽山脈がある。
東京に新幹線で向かう場合、その奥羽山脈を貫くトンネルを抜けることになるが、冬の場合、トンネルを抜けた途端に広がる青空にひどく驚く。

秋田の冬は本当に晴れない。天気なんて雪が降っているか、いないかの違いだけで、空はいつでも灰色だ。他とどのくらい違うのかと思いググってみたら、日照時間は全国最低の1,526時間だそうで驚いた。ちなみにこれは県庁所在地に限ったもので、その条件を外すと全国最低は山形県新庄市らしい。秋田と県境にある市だ。

最近の気候変動もあるのか、ここ2,3年は晴れている日が少し多い気がする。
冬に青空を見た時の高揚感はすごい。逆に、曇り空に生きてきた昨日までの自分は、なんて億劫な心持ちだったのだろうとびっくりする。
そして、太平洋側の人は毎日こんな気持ちなのかと思うと、どうして秋田に住んでいるのだろうと真剣に考えてしまう。

僕も友人や同級生と同じく、都会に住む選択肢はあったけど、なんとなく地元で生きている。郷土愛があるかと言われると微妙だ。地元を離れるほど強い理由もなかったし、地元に残ると決めた強い理由も、今振り返ると別にないなあと思う。

僕は正直、心配性だ。旅行だって目的に問題なく着くだろうか、迷ったりしないだろうかと、いつも強くストレスを感じる。とりわけ一番ストレスを感じるのが、車を停められる駐車場が空いているかだ。目的地に着く直前が僕のストレスMAXな時間だ。

だから新しいことを始めるということにも、すごくエネルギーを使う。考えてみればゲームだって、とある街に着いたらそこでこなせるイベントをこなし、揃えられる最高の装備を整え、上げられるだけレベルを上げなければ次の街へは行かなかった。

そんなことする必要がないのは分かっている。そんなことせずにヒラヒラと行きたいところに行ったり、やりたいことをやったりする人を、僕はずっと羨ましく思っていた。
だから、僕は少しでもそうなりたいと思って、強い決断力を必要としないよう、なるべく身軽になろうと心がけることにている。たとえば荷物を減らしたりだとか、日課を減らして自由な時間を作ったりだとかだ。

去年の夏は、普段着をスポーツウェアとしても使えるものにし、仕事から帰ったらそのままランニングシューズを履いて走り出せるようにした。これはかなり効果てきめんだった。何かを始める時の準備や手順をなるべく少なくすることが、すごく大事なのだと学んだ。僕は準備に本当に、本当に時間をかける人間だったけど、先に進むために必要だと思っていたその準備が、先に進ませることを阻んでいたのだから皮肉なものだ。

準備をしなくてもなんとかなった。大丈夫だった。こういう経験を今年はもっと積んでいけたらと思っている。頭では分かっているのだけど、僕はまだ少し臆病なので、「思い切って踏み出す」ことが、まだ必要だ。

それにしても、大人になったからとて、子どもの頃とやっていることは変わらないのだから、可笑しい。

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