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春の重労働

4月の第3週頃にビニルハウスを建て、翌週末に種を撒く。苗を作るためだ。そして田んぼに肥料を撒き、耕す。その後、水を引き込み、トラクターで水と土をかき混ぜ泥を作り、平らにならす。代掻き(しろかき)という。ビニルハウスの中の苗から葉が3枚ほど出たら田植えの時期だ。田植え機で田んぼに苗を植えていく。翌週に役目を終えたビニルハウスを解体して春の農作業は一段落だ。雪深い僕の住む地域では、ビニルハウスをそのままにしていると雪でつぶれてしまう。

ひと段落とは言っても、ここからが大変で、今の時期、6月初旬は地域で一斉に草刈りをする。田んぼの周辺に草が生い茂っていると、カメムシが住み着いてしまう。カメムシは稲の葉をかじってしまうし、実(米)が成りはじめるとそちらもかじってしまう。そうすると米は変色してしまい、食味が悪くなる。米の等級も下がってしまう。
なので、地域ぐるみで一斉に田んぼ周辺の草刈りをするのだが、これが重労働なのだ。草刈り機は重いし、それを一日中背負って振り回さないといけない。肩も背中も腕も腰もバッキバキである。土手の斜面を、足を踏ん張りながら刈り続けるため、終わった後、注意して長靴を脱がないと足をつってしまう。

そうまでしてやることとは、長い冬が明け、ようやく土から出て太陽を浴び、すくすくと育った田んぼ周辺の草花を刈り取ることなのだ。里山文化とか、自然との共生とか、農作業を形容する言葉は色々あるが、つくづく農業とは作物以外の植生を認めないということだと思わされる。
何千年も前から、ひょっとしたら何万年も前から、人はこうやって刈り、燃やし、その場の植物を排除して自分の作物を育ててきたのだろう。

農業とは何か。
耕した田んぼにミミズを見つけたとき。水を張った田んぼに住み着いたカエルの鳴き声を聞きながら眠りにつくとき、刈られてもまたスクスクと育ち、夏に生い茂る「雑草」を眺める時、刈り入れの時期、田んぼにイモリの親子を見つける時、その時々で答えは違うのだけど、

梅雨の始まる6月初旬はいつも気が(体も)重い。

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