Disciplined Agile(DA)とは? スクラムとの違い、概要、使い方について
今回はアジャイルのフレームワークであるDisciplined Agileについて解説します(結構なボリュームになります)
Disciplined Agileは、チームの意思決定を支援し、より場面に適したアジャイルを行うことができます。
他のフレームワーク(スクラムなど)と何が違うのでしょうか。Disciplined Agileの概要(仕組み)や使い方についてご紹介していきます。
Disciplined Agile(DA)とは
意思決定を支援するツールキットです。
アジャイルだけではなく、リーンやウォーターフォールから得られたベストプラクティスを集めたものになります。これによってチームはフレームワークの型に縛られず、状況に応じて柔軟で最適な選択が可能となります。
Scott AmblerさんとMark Linesさんによって作成されました。2019年8月にPMIによって買収され、現在の最新版はv5.2です(以下を参照)
最新のDAはPMIのサイトから確認できます(アカウント登録が必要です)
こちら:https://www.pmi.org/disciplined-agile/da-browser
PMIには、DAについて以下のように紹介されています。
Mark Linesさんが2020年3月に行ったオンラインセミナー『ディシプリンド・アジャイル概説(講師:Mark Lines)』が無料で視聴できます。お時間許す方はご覧いただくと良いかもしれません(画像がリンクになっています)
ディシプリンド・アジャイルの仕組み(4つのビュー)
ディシプリンド・アジャイルはツールキットであるため、使い手が選択肢から選択する必要があります。
実際のところコンテキスト(背景、状況)に依存するため、選択した内容が必ずしも適切とは言えません。状況によってはうまく機能し、他の状況ではうまく機能しないことが考えられます。
コンテキストをどのように捉えるかという点で以下の4つの観点が用意されています。
1.Mindset
2.People
3.Flow
4.Practices
ビュー1.Mindset
「1.Mindset」は、「Principles」「Promises」「Guidelines」の3つで構成されています。
ビュー2.People
「2.People」は、「Primary roles」と「Supporting roles」の2つに分かれています。Primary rolesが俗に言うステークホルダーを含めたアジャイルチームです。Supporting rolesは一時的に必要になるロールです。
Primary rolesには、5つの役割が登場します。
1.プロダクトオーナー
2.チームリーダー
3.アーキテクチャーオーナー
4.チームメンバー
5.ステークホルダー
ディシプリンド・アジャイルでユニークなのは、アーキテクチャーオーナーが存在することです。ソリューション設計全体の作成と進化を促進する人と定義されています。
大きな組織の場合、アーキテクチャーに責任を負う人が存在していることが多いためのようです(テクニカルアーキテクト、ソフトウェアアーキテクト、ソリューションアーキテクトと呼ばれる人たち)
小さなチームの場合はチームリーダーがこの役割を担うことが多いとの記載がありました。大規模な場合を前提としたロールのようです。
アーキテクチャーオーナーは上級開発者でありながら、チーム内で作業することが期待されています。したがって、階層的に報告を受けるようなロールではないということに注意が必要です。
ロールの詳細はこちらを参照ください。
https://www.pmi.org/disciplined-agile/process/introduction-to-dad/people-first-roles-in-dad-introduction
ビュー3.Flow
「3.Flow」は、「WorkFlows」と「LifeCycles」からなります。
WorkFlowsは、DevOpsを主としたワークフローのことで何段階かの階層レベルがあります。
最終的にはDisciplined Agile Enterprise(DAE)と呼ばれるようなビジネスアジリティを満たすようなフローになります。
LifeCyclesは、アジャイルやリーンなどのアプローチのことです。
6つの種類が定義されています。
1.The Agile Life Cycle: A Scrum-based Project Life Cycle
2.The Lean Life Cycle: A Kanban-based Project Life Cycle
3.The Continuous Delivery:Agile Life Cycle
4.The Continuous Delivery:Lean Life Cycle
5.The Exploratory (Lean Startup) Life Cycle
6.The Program Life Cycle for a Team of Teams
アジャイル以外にもリーンやウォーターフォールが含まれていることがわかります。
各ライフサイクルのメリット・デメリット等の詳細はこちらを参照ください。
https://www.pmi.org/disciplined-agile/lifecycle
ビュー4.Practices
「4.Practices」 は、プロセスゴールというものがあります。各プロセスに関連した詳細な決定と選択肢をまとめたプラクティス集です。
チームが直面している状況に応じて適切な戦略を調整し、拡張できるようになります。
プロセスゴールの全貌は、DAブラウザーというものが提供されており、PMIのサイトから確認できます(アカウント登録が必要です)
こちら:https://www.pmi.org/disciplined-agile/da-browser
その他
さいごに1〜4で説明したすべてを包含する形で「Process Blades」というものがあります。ディシプリンド・アジャイルの全体像といってもよいかもしれません。
ディシプリンド・アジャイルの使い方
ディシプリンド・アジャイルに「WoW」というものがあります。「way of working」の略です。WoWを選択することで適切なアプローチを始めていくことができます。
ステップは以下です。
1.コンテキスト分析
2.ライフサイクルの選択
3.プロセスゴールの選択
4.プラクティスの選択
5.継続的な改善と実践
ステップ1.コンテキスト分析
「1.コンテキスト分析」は、現状を分析します。以下のようなレーダーチャートを用いることで視覚的に把握することが可能です。
ステップ2.ライフサイクルの選択
「2.ライフサイクルの選択」は、適切なアプローチを選択します。以下のようなフローの質問に答えていくことで導き出すことができます。
ステップ3.プロセスゴールの選択
「3.プロセスゴールの選択」は、チームにとって取り組むことが必要なゴールを選択します。
ステップ2で選択したライフサイクルに、フェーズが定義されています。「インセプション」→「コンストラクション」→「トランジション」の3段階です。
各フェーズの最初にそのフェーズで対応するプロセスゴールを選択します。プロセスゴールはディシプリンド・アジャイルで定義されており、その一覧の中から選びます。
ステップ4.プラクティスの選択
「4.プラクティスの選択」は、3で選択したプロセスゴールに紐づく、詳細な取り組むべき事項です。
プロセスゴール図と呼ばれ、各取り組むべき事項(ディシジョンポイント)に対してプラクティス(オプション)が紐付いています。
ステップ5.継続的な改善と実践
「5.継続的な改善と実践」は、上記を選択し、実行に移したあとの改善です。
スクラムでいうレトロスペクティブですね。チームのフェーズに応じて1〜5を繰り返すことになります。
スクラムとディシプリンド・アジャイルの違い
決定的な違いは、スクラムはフレームワーク、ディシプリンド・アジャイルはツールキットだということです。
ツールボックスなので、スクラム or ディシプリンド・アジャイルのように二者択一ではなく、すでにスクラムで行っているチームが意思決定のサポートとしてディシプリンド・アジャイルを使うことができます。
ディシプリンド・アジャイルは、アジャイルのフレームワークに縛られることを脱するために存在しているようなものです。
そのためディシプリンド・アジャイルでライフサイクルを選択する際、アジャイルアプローチになればスクラムが含まれます。ディシプリンド・アジャイルがスクラムを包含する形になるということです。
これはスクラムに限らず、他のフレームワークも同じです(カンバンやSAFeなど)
このように根本から異なるため、比較すること自体がナンセンスに感じますが、強いて上げるならロールにアーキテクチャーオーナーが存在する部分かなと思います。
イベントの呼称ですが、呼び方が異なるので読み替えが必要です。(ディシプリンド・アジャイルに限らず、フレームワークあるあるですが)
ディシプリンド・アジャイルのまとめ
けっこうなボリュームになってしまいましたが、ディシプリンド・アジャイルについてご紹介しました。
4つのビューからなるツールボックスだということがポイントです。
ディシプリンド・アジャイルはこれまで英語の情報しかなかった印象ですが、日本語訳も徐々に広がってきています。少しずつメジャーになってくるかもしれません。
個人的には、かなり現場よりのアプローチかと思います。スクラムのようにシンプルではありませんので実際に導入する場合は教育コストがかかりそうな印象です。
とはいえ、使えこなせるようになれば便利だろうと思います。プラクティス集なのでPMBOKのアジャイル版のように感じました。
研修も増えてきているので気になる方は参加してみてはいかがでしょうか。私はアクシスさんで受けました。よかったですよ!
こちら:https://aitrainingcenter.axis-ing.com/
よければこちらもあわせてご覧ください。
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※本記事の内容は個人の見解であり、私が所属する組織とは一切関係ありません。
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