マガジンのカバー画像

摂取物

10
本、映画、漫画
運営しているクリエイター

記事一覧

型を持っていることの強さ

型を持っていることの強さ

「書く仕事がしたい」(佐藤友美 著、CCCメディアハウス)読了。

さとゆみさんは「ライターになりたい」と思っている後進やその前の状態の皆さんのためにこの本を書いたとおっしゃっていたように思うので、最初に謝っておくと、わたしは書く仕事がしたいわけではありません。ごめんなさい。
わたしがこの本を手に取った理由は、ライターのお仕事が好きだ、ライターであることが幸せだ、と常に体現しているようなゆみさんが

もっとみる
つながっているむこうの国

つながっているむこうの国

劇団ノーミーツの「むこうのくに」が公演中なのです。
もちろん見たのです。

前回の「門外不出モラトリアム」が奇跡のようにあるべき時期にあるべき姿で立ち上がった反動で、期待値が高まる分、第二作を見るのは少し怖かったけれど、たった3ヶ月で裏切らずさらに進化した姿を見せてくれたスタッフと演者の皆さんにまずは盛大な拍手を。

前作はロックダウン中の大学生の4年間に焦点を当てた、本当にミニマムな閉じた「今」

もっとみる
若さの価値とは何か - あきづき空太評-

若さの価値とは何か - あきづき空太評-

ってなわけで、なんか色々すっ飛ばして漫画のお勧めに進んでしまうわけです。

いやね、ここ最近だけでも下書きが5個くらいできてるんですけれど、突き詰めると全部若さの価値について考えていたのです。
それはUSの警察による黒人男性過失致死(仮)に対する全米の反動や世界の反応を見ていてとか、 劇団ノーミーツ について考えていたのですが。

まあ色々考える中で、おそらく若さの価値を生かし切ることができる文明

もっとみる
日常が、既にSF。

日常が、既にSF。

たいへん素晴らしかったので分析note を残す。
劇団ノーミーツによる話題急上昇中のリモート演劇/Zoom演劇の「門外不出モラトリアム」を初日初回に鑑賞した。

【簡単な技術的背景】
そもそも、Zoomというのは、いわゆるグローバル企業界隈で便利な会議ツールとしてひたひたと浸透してきていたものが、このCOVID-19の外出自粛の波によって一気に広がった、という経緯のあるオンラインサービスだ。

もっとみる
Happy な読書

Happy な読書

どうしても誰かと会話したくてメッセしたらChatに付き合ってくれた友達がいて。こんな時だしハッピーな本が読みたいと言われて、少し考え込んでしまった。

ハッピーな本ってどんなだっけ?

わたしは不幸な話は全然好きじゃない(それを目的に読んだりしない)し、ホラーはお風呂で読んでると怖すぎて出られなくなるくらい苦手だし、不愉快なものの方が簡単に目に触れる世の中でわざわざ不愉快なものを求めたりはしていな

もっとみる
チャリング・クロス街84番地

チャリング・クロス街84番地

読書猿さんの今こそ本を読もう的なTweetで知った本。
大慌てで古本屋さんから取り寄せたら、江藤淳氏の翻訳だった。KO生が猿の代名詞じゃなかった時代の御仁ですな。

チャリングクロスロードといえば10年前はまだ普通に古本屋さんと新書屋さんと楽器屋さんが並ぶ小売街で。3 for 2 で英語の勉強になるペンギンやパフィンを選んだり、Sohoで夜中までライブを楽しんだあと、眠い目を擦りながらナイトバスを

もっとみる
ダウントンアビー(映画)は良くできている

ダウントンアビー(映画)は良くできている

大好きな友人が引越しの機会か何かに譲ってくれたダウントンアビーのDVD。
結局6シーズン中、もらった分の4シーズンしか見ていないのだけれど、お正月に封切られた映画版を観てきた。
4シーズンしか知らない状態で見ていうのもなんだが、なんというか、やっぱりBBCの底力ともいうべき脚本の良さを感じた。

ディズニーはともするとやりすぎるのだけれど、そういう塩梅にかけては、BBCはお家芸とも言える絶妙さを披

もっとみる
スターウォーズの漂白

スターウォーズの漂白

ディスニーのスターウォーズの最初の版を褒めた人間として、これは予測すべき未来だったと思うし、何も悪くない。

しかし、あの冷戦時代の猥雑なスペオペっぷりを思うと、ああ、随分とご清潔になったよね、と思う。

そういう正月映画でした。

(Image credit: LucasFilm)

Spitzのライヴが最高であるお話

Spitzのライヴが最高であるお話

表題通りですが。
スピッツという4ピース+1バンドは、実は生じゃないとその実力がきっとわからないバンドです。
草野マサムネさんの隠れなき歌唱力と歌詞力で、歌中心のバンドみたいに言われてますし、音源で聴く限りそれは別に間違いではないのです。
でも、実は、あれは世を忍ぶ仮の姿。あんな優等生な整い方はまったくしてないのがリアルで。
あのやばカッコ良さは生で味わわないと絶対わかんないのです。

わたし自身

もっとみる
さよならテレビを見てきた

さよならテレビを見てきた

東海テレビの「さよならテレビ」を見てきた。
褒めてない方の意味でめちゃめちゃ面白かった。どこまで意図的なのかわからないけれど、そもそもめちゃめちゃフワッとした企画(「テレビの今に迫る」みたいな)で、監督は最後まで何を撮っているか自分の言葉で説明できない、あるいはしない。寧ろ再度問いかけられた時に「え…それ初めに説明したし」とでもいうような沈黙すら披瀝する。
しかし、要するに、狙いがフワッとしている

もっとみる