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今日から実践できる、門外不出のクロージング

営業研修を依頼される際に、商品説明は非常にうまいが、成約率に課題があるという相談を多く受ける。
実際に営業ロープレを拝見しても、課題のヒアリングや解決策としてのプレゼンテーションは非常にスムーズである。しかし、最後の最後、『クロージング』になると急に大人しくなり、顧客の言いなりになっているケースが散見される。

今回は、苦手意識を持っている方も多い『クロージング』に特化したお話をしてみようと思う。

クロージングをしっかり行えない営業に理由を聞くと、

・無理やり売ろうとしている感じが嫌
・相手に嫌われるのは苦手
・「検討する」と言われたら、それ以上追及するわけにはいかない

などの声が上がった。なるほど。

クロージングに対して負い目を感じている営業は案外多い。

確かに、相手の意見に対して論理的に反論し、導入できない理由を次々に排除していくクロージングは、強引な姿勢で行うと顧客との関係性を悪化させる。

しかし、以下の言葉について少し考えてみてほしい。

本当に相手にとって必要な提案であれば、負い目を感じることなくクロージングが行えるのでは?

例えば、あなたが医者だったとする。
目の前の患者は39℃の高熱、扁桃腺の炎症、激しい頭痛、加えて中耳炎&蓄膿症というかなりしんどい症状だ。
患者を目の前にして、こう伝えた。

「薬は1日に、"もし可能であれば"3回飲んでください。あ、でも大変であれば1回で構いません。睡眠時間は十分に取ってほしいですが、忙しいでしょうからお任せします。注射も本当は打ちたいですが、少し待ち時間が出てしまいますので今回は止めておきます。薬は2週間分出したいですが、費用がかさむので5日分にしておきます。少し様子を見て、もし必要であれば改めてお越しください。」

どうだろう。
あなたは医者として、患者の意思を尊重し、自分の意見を押し付けないように提案を行った。さぁ、これで患者の病状は早期に改善するだろうか?
これが本当に、患者にとってベストな提案なのだろうか?

医者に対して求めるのは、優しさではない。
症状を治せる診察や処方を期待している。

同じように、営業に対して顧客が求めるのは、優しさではない。
企業の課題解決のための分析や、施策の提案を期待しているのだ。

少し言い方はきつくなるが、本当に価値のある提案であれば自信をもってクロージングができるはずである。そこに嘘偽りがないのだから。
一方、少しでも負い目を感じていたり、顧客にとってベストな提案なのか自信がないときはクロージングも弱気になる。
これは、クロージングどうこうの問題ではなく、

営業として自信をもった提案が行えているか否か

という問題が大きいように思う。
これを踏まえて、自信のある提案はしたものの、クロージングに不安があるという方に、クロージングのコツをお伝えしたい。

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先ず、クロージングの目的を確認しておきたい。
クロージングの目的は、

顧客のサービス購入の意思決定を後押しすること

である。これ以外にない。
では、なぜ顧客が購入の意思決定ができないのかについて考えてみたい。
サービスの提案が終わった時点で、顧客は4つに分類することができる。

顧客の四種類

縦軸は、目の前にいる商談相手が意思決定できる人か否か。例えば、事業部長しか決められない案件の提案をイチ担当者に熱弁したところで、その場での受注は絶対にあり得ない。

横軸は、ネック(反論)があるかないか。基本的にネックはあると考えるのが自然である。導入にあたって何らかの障害が存在しているはずであり、仮にネックがないのであれば受注しているはずである。
「ネックはありませんでしたが、失注しました」
という訳の分からない報告は存在しない。
ネックがなければ受注、ネックがあるから失注しているのだ。

A:意思決定権者×ネックなし 
⇒ これは、受注している。もしも受注していないとすれば、本当はネックがあるにもかかわらずネックが存在している。もしくは、目の前にいる人が意思決定権を持っていない。
B:意思決定できない人×ネックなし
⇒ 担当者のネックがない状態であれば、その場での受注はできないが担当者には納得してもらえているはずである。商談を前に進めるために、意思決定権者への稟議を通してもらう、または次回の商談に同席してもらうなどのアクションを明確にしていくことが重要。
C:意思決定できない人×ネックあり
⇒ 担当者が納得していない状況では、上司に今回の商談の内容を通してもらえる可能性は非常に低い。何が引っ掛かっているのかについてクリアにしたい。
D:意思決定権者×ネックあり
⇒ 目の前の人が納得すれば受注である。これだけのチャンスを目の前にして失注するのはもったいない。何が引っ掛かっているのかについてクリアにしたい。 

今回のクロージングのターゲットは、『C』『D』とする。
本来、広義のクロージングで考えればAもBもターゲットではあるが、今回お伝えするクロージングは『ネック返し(反論処理)』のスキルに重点を置いてお伝えしていく。

ここで、ネック(反論)の種類についても確認しておこう。
代表的なネック(反論)は以下の3種類に集約される。
そして、これら3つの不安を払拭できれば受注できる。

①コストネック
②費用対効果ネック
③課題ズレネック

順番に見ていこう。

①コストネック:
想定していた予算よりも高い金額を提示されたため、金額の折り合いがつかず悩んでいる
<反論例>
「他社は〇円でした」「〇円以内で考えているのですが…」
<解決策>
単純な導入時点のコストではなく、長い目で見たときに結局安くなるという見せ方をする。
<トーク例>
確かに他社の方が導入時点では割安ですよね。しかし、この商品は買って終わりというものではありません。時間と共に部品の交換やメンテナンスが必要となります。通常1年おきに、まとまったお金が出ていくことになります。しかし、弊社のご契約ではメンテナンスにおける部品交換などの追加料金はかからないのです。つまり、安い製品をお求めということであれば、結局のところ弊社製品が最も安いということになります。

②費用対効果ネック:
コストは許容できるが、実際にそのコストに見合った成果を出すことができるという根拠が不足しているため悩んでいる
<反論例>
「他社の事例を教えてください」「本当にうまくいきますかね?」
<解決策>
顧客が期待する成果の置き所を正しく握る
(コミットできない成果指標で効果を測らない)
<トーク例>
今回の研修で、営業スキルの向上を期待しているとのことですが、定量的にゴールを定めましょう。もちろん、営業の売上向上につながるように研修を行いますが、研修を行ってすぐに売上が上がるというのは現実的ではありません。例えば、研修成果をわかりやすく定量化するために、研修後アンケートの得点と、研修前後で撮影する営業ロープレの得点比較を行って、成長度合いを測定するというのはいかがでしょうか?

③課題ズレネック:
コストも許容範囲内であり、成果についても納得感はあるが、現在一番の課題と考えている箇所へのインパクトは期待できない。提案された施策の優先順位が低いため悩んでいる。
<反論例>
「すごくいい提案ですが、今じゃないんですよね…」
<解決策>
ヒアリングによる課題形成と、サービス提案のロジックがズレているため、直接確認を行う
<トーク例>
なるほど、失礼いたしました。ちなみに是非ご意見伺いたいのですが、どのあたりが違うかなと感じられましたか?
最も大きな課題としては営業人材の不足でしたよね?ここで言う営業人材というのは、数の話でしょうか?質の話でしょうか?

以上、3つが代表的なネックである。
これらの反論については事前に社内で十分に検討し、自信をもってクロージングが行えるようにしておきたい。
今回の記事をきっかけに、自分のクロージングについて振り返ってみてはどうだろうか。

【今回のPOINT】
・クロージングに自信が持てないのは、自分の提案に自信が持てないから
・クロージングは、顧客の背中を後押しする優しさのスキル
・代表的なネック(反論)には、コストネック、費用対効果ネック、課題ズレネックの3種類がある


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