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Episode 098 「”魂が揺さぶられる”ということは、つまり、どういう事なのか」

Episode097にて触れたNOFXのFat MikeがオーナーであるFat Wreck Chordsの25周年を記念したライブは相当凄まじかった。SNUFF, Good Riddance、Strung Out、Lagwagon、Hi-STANDARDそしてNOFXなど。

具体的に何がすごかったかというと、つまり、その会場に溢れるエネルギーが凄まじかった。その日演奏をした全てのバンドが作り出すエネルギーに応えるように、観客からのエネルギーも尋常ではなく、その光景を目の当たりにした私は、改めて、Hi-STANDARDというバンドの大きさ、日本だけではなく世界中の人に与えた影響の大きさを感じられずにはいられなかった。

このライブに併せて、その3年前の2012年にもタカヒロと一緒にHi-STANDARDのライブを東北に観に行った。このライブも大きな意味を持つライブであった。Hi-STANDARDは2000年に突然の活動中止に突入したのだが、2011年の震災を受け、日本のために立ち上がり(本人達がステージ上でそう言っていた)、11年振りに(関東地方で)ライブを行ったのだ(尚、3万人を収容するスタジアムのチケットは即完売だったとのことだ)。

しかしながら、やはり、東北にこのAIRJAM(Hi-STANDARDの三人が立ち上げ、1997年に開催した野外音楽フェスティバル。尚、このイベントは、通称「フェス」と呼ばれるものが日本に存在する前に、彼らが作り上げたのだ)を持ってきて、震災で被害を受けた人のためになりたい、とい趣旨のもとに、2012年、東北にてそれが現実となったのだ。

このライブにて私は、初めてHi-STANDARDのライブを体感した。そう、オーストラリアは南オーストラリア州の州都であるアデレードという(当時)100万人ちょっとの街にて、たまたま出逢ったHi-STANDARDのセカンドアルバムを聴いた1998年または1999年から、約13、4年が経った2012年に初めて彼らのライブを見た。2012年当時、私は28歳。完全に成人である。しかしながら、一曲目が始まった瞬間、今までのアデレードでの想い出にずっと寄り添ってきたHi-STANDARDの曲が生で耳に入った瞬間、心は青春自体に戻り、気がつくと涙が溢れていた。魂が揺さぶられていた。あまりにもリアルで、あまりにも激しく、あまりにもストレートで、あまりにも胸に、心に、魂に直撃するような体験だった。

また、2016年、彼らは実に16年振りにシングルをリリースし、オリコン1位を獲得した。因みに、そのリリースについては、事前の告知は全く行わずに発売された。

つまり、たまたまCDショップに居合わせた人達にしてみれば、「ぬぅあぁにぃ~~~!!!??ハ…ハ…ハ…ハイスタのCDが発売されてる!!??」となった訳である。実際に、日本中の、相当の数の人達が発狂とも近い興奮に包まれ、「さっき何気なくタワレコ(Tower RecordsというCDショッップ)に行ったら、ハイスタの新作が出てた!!!」などとSNS(例えばTwitter)を通じ発信し、瞬く間にネット上にハイスタフィーバーが起こった。

尚、ここまで隠し通せた背景には、(後にメンバーのインタビュー記事などで知ることになったのだが)もちろんCDの流通に関わる人などの協力も欠かせなかった、とあった。

確かに、このご時世なので、(例えばCDショップの定員などは)やろうと思えば、「やばい!今日倉庫で、出荷前のハイスタのCDみた!!」などの発言は(口コミやらSNS上でやら)可能であるが、その様子(つまり、事前に情報が漏れる)は全くなかったと思われる(なぜなら、もしあったら、瞬時にネット上で広がる為)。

また、CDショップの店員も、当日、CDが店舗に運ばれてくるまで全く知らされていなかったらしく、店員の人達も発売当日の朝、箱を開けると、そこにはHi-STANDARDの新作が入っており、「ぬぅあぁにぃ~~~!!!??ハ…ハ…ハ…ハイスタ!!!」となった、との事である。

なにはともあれ、この様にして、ハイスタは2016年振りに(サプライズ要素をふんだんに盛り込む形で)新作をリリースし、日本中の音楽のファンを揺るがせたのであった。

実際に私も渋谷のTower Recordにアルバムを購入しに行った。

タカヒロは今(2024年現在)、山形にて、数年前まで勤めていた会社をを辞め、実家に戻り家業の手伝いをしている。その前は、東京に居た。

尚、彼の家は、新聞屋さんをやっている(一度山形に遊びに行った事があった。あれは、確か2002、3年の頃だったと記憶する。家には新聞が山のように積まれていた)。

現在彼は山形にいるが、そもそもなぜ東京では無く山形なのか、とう点については、彼は私に、家業を手伝う為に(東京を引き上げ)山形に帰る必要があると、(具体的にいつの事であったかは詳しくは憶えていないが)そう説明した。

もちろん、それぞれの家庭にはそれぞれの事情がある。故に、外野(例えば私)がどうこう言う事でもない。理屈では説明できない様々な(例えば家族内での)諸々の理由があるのかもしれない。

しかし、それら全てを考慮したとしても、やはり個人的には、全く納得がいかない。彼の様な、優秀な人間が、家業を手伝うという理由で山形の田舎、つまり若い人がみんな逃げる様に外に出て行く様な場所(と、彼自身がそう形容していた)に行かなくてはならなかったこの状況とは、どんな理由でさえ納得がいかない、というのが(超)勝手な個人的な意見である。

海外で真面目に勉強をして英語や世界の事(つまり日本国内では経験できないような様々な事)を習得し、大学では金融工学を学び、様々な企業に対しても金融工学観点から色々とアドバイスをする様な立場にいる優秀な人間なのである。

そんな彼が、家業を手伝うため、という理由で(東京を離れる理由として)田舎に戻った。もちろん、東京を離れ、山形に戻り、2021年までは一人暮らしをし、家業以外の仕事をしていたが、2024年の現在は家業を手伝っている。どう考えても、おかしな話しである。

しかしながら、もちろん各家庭には様々な事情があるのだ。あるいは、本人の(家族からの、「山形に帰っておいで」というようなプレッシャー抜きで)意思で東京を離れたのかもしれないが、個人的にはやはり納得がいっていない。

彼は心優しい男であるため、どこかで「家族のために、山形に帰るか」と、彼はそう思っていたと私は見ている。本人は、「やっぱり、都会より、田舎でゆっくり生活する方が自分には合ってる」と口では言うものの、それが100%正しいかどうかは、わからない部分もあると個人的には見ている。

現状我々は、東京と山形ということから実際に会うことはあまりないが、連絡は取り合う。大した話でもないが、「ハイスタ(Hi-STANDARD)の新曲、どう思う?」や「最近の銀杏BOYZの曲は、なんか違うな。でも、この曲は良いよ」や「Ken YokoyamaのYouTubeラジオ、めっちゃ面白いね」など。

数年前、久しぶりに連絡をし「最近どう?」とメールしたところ、(通常の返答からすると、「忙しくしてるよ~」や「ぼちぼちだよ~」などが想定される中)「イーサリウム(仮想通貨)のマイニングをしてるよ」という返事を返してくるような、そんな最高の男である。

初めて出逢ってから、(2024年時点で)約20数年、未だに(もちろん他の話もするが、多くの場合は)音楽の話をしている我々である。改めて、音楽が持つパワーには感心する。20数年以上前に聴いていた音楽が、今でも我々の胸、記憶に刻まれているのである。

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