〈中秋節のラブソング〉
ごはんよー
と母に
呼ばれて
帰らなくなった
ぼくら
気がついたら
もう半世紀が
過ぎてしまった
ぼくらがあんまり
長く帰らないので
母の方が
横浜までやってきて
息子たちの
部屋の
そばに行きたい
台所にだって居座りたい
おお
母の心が跳ねる
今では
高音だけしかでない
声帯で
今宵も
ごはんよー
と
老人たちが
鈴なりの
黄色い木枠のある
窓から叫ぶ
おお
母の心が跳ねる
やがて
夜が
蒼い帳を
下ろし
今夜は
一晩かけて
仲秋の
満月が
アジアの
夜を渡るのだ
母の心が跳ねる
月のウサギが
跳ねる
おお
母の心は跳ねる
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