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書き残したい日々のこと

図書館の展示用に、
日記に関する本を色々読んでいる。

日記文学というのは本当に幅広い。
古いのだと紫式部日記とか古典も色々あるし、戦時下で書かれた日記もたくさんある。
(一番有名なのは『アンネの日記』かなぁ)

数年前からの本当に大変だったコロナ禍に関する日記もたくさん出されてる。
(桜庭一樹さんの『東京ディストピア日記』とか、綿谷りささんの『あのころなにしてた?』とか)

色んな本を眺めながら、なるべく心が軽くなるような、日常をやわらかに肯定できるものを選びたいなと思う。
(戦時中の日記もコロナ禍の日記も読みごたえがあって、色々考えさせられはするけれど)


そのなかで、あらためて読み返したのは山本文緒さんの本。




膵臓がんのステージ4と診断を受けてから、亡くなられるまでの日々を綴った日記。
最初は手書きで書かれていて、そのあとテキスト化する作業の話とか、絶え間なく続いていく緩和ケアのこと、そのなかの治療や訪問看護のこと、日々の暮らしのこと…

印刷された文字も大きめで読みやすく、何度か一緒に泣きたくなるような、残りのページが少なくなっていくのが本当に切ないような、うまく言葉にできない気持ちになる。
余命を宣告されて、ゆっくり死を受け入れる日々のこと。

闘病記には違いない(本のなかでは逃病記と書かれていた)けれど、 幸せについて書かれた本でもあった。

これから書く予定だった小説の構想にも少し触れていて、あぁつくづく読みたかったと思う。
誰か書いてくださってOKです、とあったけど、山本文緒さんじゃなければ紡げない言葉がたくさんあっただろう。

残り時間が少なくなってきたとき、スーパーで売っているティーバッグのお茶が普通においしければそれでいいと書かれてて、幸せってそれくらい小さなことで充分なんだと思った。
それを教えられる本でもあった。



旅行や遠出ができなくても、家の中でやりたいことをやって過ごせて、負け惜しみではなく、とても幸せだ。

『無人島のふたり』



2023年も、あと1ヶ月ちょっと。
今年は後半(特に10月半ば) から立て続けに色んなことが起きて、仕事も欠勤したり早退したりが続いた。
だから余計、仕事に行ける有り難みを痛感したりした。他にも失わないと分からないことがたくさんあるんだろう。


どんな状況にも人は慣れていくけど、幸せの瞬間を見逃さないでいたい。
困難のなかでさえそれは紛れていて、過酷な戦時下や、闘病中のなかにもあるんだろう。
自分の内側に余白がなければ気づけないような、ささやかな幸福。


だからnoteにもなるべくそんな瞬間を残せたらいい、なんて思う。


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