見出し画像

第2回 Instagram ハッシュタグ観測報告【撮影】カテゴリ篇

前回のエントリ第1回Instagramハッシュタグ観測報告【大カテゴリ】百選では、あらゆるカテゴリのビッグワードを比較し、概況の把握を行いました。「#ファインダー越しの私の世界」は14,319,110件という「#猫」に次ぐ大規模なハッシュタグであることをが確認できましたが、写真を中心としたSNSであるインスタにおいて、「撮影」に関するハッシュタグは多岐に渡って存在し、合算としてのボリュームはかなりの規模になると推察されます。

そこで第2回のハッシュタグ観測においては、「撮影」カテゴリのワードを観測してみました。(観測日:2018年10月14日)75件のハッシュタグを選定し、同日で一斉に観測を行っております。

「撮影」カテゴリという括りはありつつも、意味、用法、組み合わせの幅を広くとった形で観測を行い、100万超えのハッシュタグが約3分の1程度観測される結果となりました。インスタの中で「撮影」に関するハッシュタグ群が一大カテゴリを形成しているだろうという仮説は、概ね間違っていないだろうことが推察されます。

2,000万件超え!「#写真好きな人と繋がりたい」

第1回のハッシュタグ観測においては、「写真」、「撮影」などのビッグワードを凌ぎ1,400万件以上のハッシュタグ数を記録した「#ファインダー越しの私の世界」を「撮影」カテゴリの暫定最大のハッシュタグとして取り扱いましたが、本観測で「#写真好きな人と繋がりたい」が21,445,342件という2,000万超えのハッシュタグ数であることがわかり、「#猫」に次ぐ2件目の2,000万超えのハッシュタグの発見となりました。

「繋がりたい」は「つながりたい」ではダメなのか

21,445,342件のハッシュタグ数を記録した「#写真好きなと繋がりたい」という言葉を観察してみると。「繋がる」という漢字より「つながる」の方がInstagramのカジュアルな世界観に合うのではないか?繋がるのは「写真好きな人」ではなく「写真撮ってる人」でもいいのではないか?などの疑念が湧いてきます。そこで、「#写真好きな人とつながりたい」「#写真撮ってる人と繋がりたい」という2つの言葉についても観測を行い、差異を比較しました。

まず、「繋がりたい」>>「つながりたい」であることがわかりました。特に「つながりたい」は「繋がりたい」の1%未満でもあり、大きな差異を確認することができました。現代人は漢字が弱くなっているとまことしやかに叫ばれる中、「繋」というやや複雑な形状の漢字を使用した「繋がりたい」が「つながりたい」を大きく凌いだのは、大変興味深い結果です。活字重視でなくビジュアル重視のSNSであるInstagramという場所でこのような結果が観測されていることが、より一層興味深いです。

また、「繋がりたい」のは「写真好きな人」より「写真撮ってる人」である!という結果となりました。「#写真好きな人とつながりたい」が「#写真好きな人と繋がりたい」の1%にも満たなかったのに対し、「#写真撮ってる人と繋がりたい」が「#写真好きな人と繋がりたい」の半分弱程度を維持しています。また、絶対値としても889万件のハッシュタグ件数という全体として大きな規模のハッシュタグの件数となっています。

これらを併せて考えると、「~と繋がりたい」を軸に「#○○好きな人と繋がりたい」という定型の文法がインスタの中で根付いているということが推察されます。

「#ファインダー越しの私の世界」から見る言葉の世界

次に14,563,283件を記録したハッシュタグ、「#ファインダー越しの私の世界」。被写体を選ばない汎用性の高さに加え、エモーショナルに写真を少しいいものに見せてくれそうな響きもあって、「#写真」、「#撮影」などのビッグワードを差し置いてインスタ上で広く使われているだろうと推察されます。

「#ファインダー越しのわたしの世界」と「#ファインダー越しの世界」の2語については「#ファインダー越しの私の世界」の5%以下となり、「#ファインダー越しの私の世界」という組み合わせの強さが確認できる結果となりました。

ここで1つ気になったことがあります。インスタはスマホを前提としたアプリであり、感度の高い人は一眼レフやGoProで撮影したりもしていますが、多くの人はスマホで撮影をしています。スマホで撮影するときの情景を「ファインダー越し」と表現するでしょうか?

そんな観点から、「#スマホ越しの私の世界」を調べてみることにしました。また「ファインダー越し」と同じように「私の」を「わたしの」と開いたもの、脱落させたものの合計3語について観測を行いました。

結果として、「#スマホ越しの私の世界」は137,232件となり、「#ファインダー越しの私の世界」1%程度に留まりました。相対的には少なく見えますが、総数としては10万件以上あることから、一定の層が「ファインダー→スマホ」の変換を脳内で自主的に行い新たなハッシュタグとして派生したのだろうと推察されます。

また、「#スマホ越しのわたしの世界」と「#スマホ越しの世界」は、「#スマホ越しの私の世界」のそれぞれ2%以下となり、「#ファインダー越しの私の世界」とかなり近い傾向を示したことは興味深いです。「#○○越しの私の世界」という文法が少しずつ形を変えながら広がっていっている可能性が示唆されています。

「#ゴープロ」or「#ゴープロのある生活」?

「#写真好きな人と繋がりたい」や「#ファインダー越しの私の世界」などの考察を通して、インスタの中で必ずしもシンプルなハッシュタグのみが強いわけではないということがわかりました。

「#ゴープロのある生活」「#goproのある生活」という2語に対し、「#ゴープロ」はどのような数値を示すか確認したく、「#ゴープロ」を含めた3語について観測したものをまとめたものが下記になります。

「#ゴープロのある生活」>「#ゴープロ」という結果となりました。理由はいくつかの可能性を残しますが、go proで撮影した写真を投稿する際に「#ゴープロのある生活」という定型のハッシュタグをつけて投稿する文化が流通した結果、「#ゴープロ」というシンプルなハッシュタグを超えているのはとても興味深い事象です。また、「#ゴープロのある生活」>「#goproのある生活」という結果も併せて観察を行い、日本語表記の方が表記として優勢であることが確認できました。ちなみに今回は「#gopro」という英語表記のハッシュタグは英語圏の投稿との区別がつかなくなるため、観測を行いませんでした。

「#カメラ女子」と「#カメラ男子」 

カメラで撮影するのが好きな女子を表す「#カメラ女子」は、8,295,408件と今回の調査では5番目に大きいハッシュタグ数であることが観測されました。「女子」に対して「男子」はどうなんだということで調べてみると「#カメラ男子」は1,105,240件という結果となり、「#カメラ女子」の15%以下程度の数値となりました。確かに「カメラ女子」は耳にすることがあるけれど、「カメラ男子」ってあまり聞かない気がします。この差異を「#カメラ女子」に比べて単純に数値が小さいとみるか、「#カメラ女子」という規模の大きなハッシュタグによって「#カメラ男子」が100万超の数値にまで引き上げられたのかは、もう少し別角度からの検証も必要かもしれません。

また、女性の方が男性よりカメラとハッシュタグの相性がよいのか?を検証するため、「#カメラおばさん」と「#カメラおじさん」も試しに比較してみました。

まず「おばさん」・「おじさん」の両ワード共、「女子」・「男子」の1%に達しない規模であることがわかりました。その上で、「#カメラおばさん」が「#カメラおじさん」の3倍近い数値を示す結果となり、現状のハッシュタグにおけるカメラとの親和性は「女性」が優位であろういうことがわかりました。

まとめ|定型ハッシュタグの流通と派生

今回、「撮影」カテゴリのハッシュタグ群の観測を通じて、「#写真好きな人と繋がりたい」や「#ファインダー越しの私の世界」など、インスタならではの定型のハッシュタグが太く流通していることを実感することができました。また、規模は落ちるにせよ、ハッシュタグがさまざまに形を変えて派生し、生活者の中に浸透を進めている一端が垣間見えました。その詳細な動態については、今後別の観測なども併せて検証していくことで明らかになっていくかもしれません。

以上、本観測報告について、皆さんの参考になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!サポートは今後のnoteを書くための活動に活用させていただきます!