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峰庭梟
2022年11月6日 00:34
さっき遠くにいたはずの雲が、もう頭の上まで来ています。そんなに急いでどこへ行くのでしょう。風は冷たい声で早く帰りなさい、とけしかけてきます。夏の終わり。夏が終わると、世界はやるべきことが増えるのです。ご覧なさい。太陽までが野原を金色に輝かせています。実りの季節はまだだというのに。ところで、あなたは秋になるとどうして草木が赤くなるのか、知っていますか?山の木々たちはみな、夏を愛しています
2021年11月20日 13:54
絵を描くのが大好きな少女がいました。少女はいつも外に出ては、お気に入りのクレヨンで風景を描いていたのです。 その日も少女は公園で絵を描いていました。朝からとてもいい天気だったのです。 少女が画用紙に絵を描いていると、画用紙の上にちょこんと何か白いものが乗りました。どうやら、空から落ちてきたようです。 それは少女の手の甲くらいの大きさで、綿の塊のようにも、なにかの繭のようにも見えました
2021年11月15日 01:02
私には、自慢のおばあちゃんがいた。おばあちゃんは長年図書館司書として働いて、ついには館長にまで上りつめた人だった。それでいながらお母さんのこともしっかりと育て上げた。我が家の誇りだ。お母さんはよく言っていた。亀の甲より年の功って言うけど、うちのおばあちゃんは亀の甲と年の功両方だから最強なのよって。亀の甲が何だかはよく分からないけれど、豊富な人生経験に加えてさまざまな本を読んで身につけた
2020年11月7日 13:50
飛ぶことなどできるわけがない。かつて世界の果てで、そう呟いた魔女がいました。 その言葉は力を持ち、呪いとなって世界を覆ったのです。そう、それは今よりも、ずっとずっと昔のこと。 それからというもの、この世界から空を飛べるものはいなくなってしまったのでした。 鳥も、蝶も、空を飛ぶものはすべて、この世界から消え失せてしまったのです。 しかし、老人たちは過去を覚えていました。かつてはこの