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日本のスローフードの現状は?環境問題を意識しながら私たちにできることとは

コロナや環境問題をきっかけに、日々の生活や価値観が変わった人は多いのではないでしょうか。量産型が得といわれた時代は終わり、今や丁寧な暮らしや少ない収入で豊かに暮らす人が増えているのが現状です。

スローフードも同じく毎日の暮らしを大切にするのを前提とし、その生活の基盤である食の大切さを学び継承していくことを目的としています。

30年以上も前に誕生したスローフードは、日本に少しずつ浸透しています。では、日本のスローフードの現状とは、そして一体どんな取り組みが行われているのでしょうか。田舎だけでなく、都会に住む私たちでもできることはあるのでしょうか。

スローフードの発祥の地はイタリア!運動を始めたきっかけは?

スローフードは食とそれを取り巻く全てのシステムをより良いものにしようとする考え方です。
1989 年にイタリアで誕生し、今では160カ国以上もの国や地域に広まっています。

凄まじい速さで私たちの食生活を操り浸食したファーストフードと対照的なスローフードは、どのように人気を集めていったのでしょうか。

スローフード協会とは?日本スローフード協会も発足

スローフードは食の大切さを伝えたいという思いの元、スローフード協会としてイタリアのピエモンテ州のブラという小さな町で誕生しました。

もともとは、1986年イタリアの町に大手ファーストチェーン店がやってきたことがきっかけです。ファーストフードの安全性に疑問を持ち、食文化の衰退を懸念した人たちによって結束され、自分たちの文化と伝統を守ろうとしました。今では世界中で賛同する人や団体が増え、「おいしい、きれい、ただしい(Good, Clean, Fair)」をスローガンに活動しています。

日本がスローフード国際本部から正式な承認を受けたのは、2016年のこと。
そこから、日本のスローフード協会としての活動が始まりました。

スローフードとファーストフードの違い

スローフードとファーストフードはよく対照的に描かれます。それもそのはずで、もともとはファーストフード店をイタリアから追い出すために広まった考え方がスローフードだからです。

ファーストフードとは調理時間が短く、注文してからすぐに食べられる簡易的な食事・食事形態のことを指します。
ただ、手軽ですぐ食べられるメリットとは裏腹に、私たちが得た便利さの代わりに払う健康の代償は大きなものでした。食品安全上の問題や栄養の偏り、食文化を大切にしようとする心の希薄化などです。
しかし、近年問題視されている環境破壊や絶滅危惧種の増加、ストレス社会の拡大など、ファーストフードがもたらしたものは食だけにとどまらないと考えられています。

これに対抗するスローフードは、食だけでなく食を取り巻くあらゆる分野での豊かさを守りぬく、または取り戻すことを目的にしています。持続可能な社会を実現するためには、人間にとって必要不可欠な食を蔑ろにするのは許されないのです。
スローフード協会のスローガンの3つ目にもあるように、正しくあらねばいけないのです。たとえば、低賃金で働かされている人が多いのも見過ごせない食を取り巻く問題で、これらの解決もスローフードの課題であると考えられています。

このように、私たちの生活は日々脅かされているといっても過言ではなく、早急に対処しなければならない問題が山のようにあります。ただ単純に「ファーストフードの反対はスローフード」で片づけられるほど、単純な問題ではないのです。

日本スローフードの現状|味の箱船と先住民族テッラマードレ

2016年にスローフードが発足して以降、日本のスローフード協会は地域、国、世界といったあらゆる規模の問題に取り組んできました。

ただ私たちは、地道に努力と試行錯誤を重ねた人たちの働きを、知らずに生活しているのが現状です。はたして、私たちの生活の中でスローフード協会の活動はどのように関係しているのでしょうか。

日本の取り組みはどんなもの?

日本スローフード協会は、食に限らずさまざまな分野で活動しています。

まず1つ目が、絶滅危惧種のように、世界からなくなってしまうと考えられている食べ物を守る取り組み「味の箱船」です。
そもそも生産者や生産数が少なく、追い打ちをかけるように農業の高齢化が問題になっています。現状、数十年後には消えるだろうといわれている食べ物がたくさんあります。味の箱舟に守りぬきたい動物や果物、野菜、加工食品などを登録することで、認知向上アップにつながり、生産維持が期待できるといわれています。

また、スローフード協会は「先住民族テッラマードレ」というネットワークを形成し、これまで先住民民族が受け継いできた伝統農法や技術、知恵をより多くの人に知ってもらうことを目的としています。日本スローフード協会は、アイヌ民族と琉球民族と連携を取り、食を通じた文化継承を目指しています。

毎日美味しい食材が手に入り、多種多様な人々と同じ土地で手を組んで生活できているのは、こういった小さいけれど偉大な活動が絶えず行われているからなのです。

私たちにできることは?やり方や取り入れ方

スローフード協会の考え方に賛同したいけれど「立ちはだかる問題が大きすぎて他人事のように感じてしまう」という人もいるでしょう。

自分事として捉えるためには、一体何ができるのでしょうか。

スローフードを毎日の食卓の中に取り入れよう!

スローフードの理念に基づいて、私たちにできることはたくさんあります。

  • 地元産の食材を選ぶ

  • 有機野菜を選ぶ

  • 和食を習う

  • 地域のイベントに参加する

  • 博物館や美術館に行く

  • 庭やプランターで野菜を育てる

  • 無駄なく食べる

地元産の食材を選ぶ
地元産でしか流通していない食べ物がたくさんあります。他国の食材や加工食品も美味しいですが、なるべく地元の生産者を応援、そして継承していくために地元産の食材を買いましょう。

有機野菜を選ぶ
化学肥料による土壌の劣化は近年の大きな課題です。いつまでも同じ土地でおいしい食べ物が作れるように、なるべく有機野菜を選びましょう。

和食を習う
イタリアがイタリアの食文化を守ろうとしたのと同じように、日本にも立派な食文化があります。両親から受け継いだり料理教室で習ったり、方法はさまざま。日々の食事の中に和食を取り入れることも立派なスローフード運動です。

地域のイベントに参加する
各地域には、その土地ならではのイベントや祭りが存在します。代々継承されているものであれば、四季折々の楽しみ方があるでしょう。
子供たちが参加するイベントであれば、伝統を継承する意味や必要性を話すきっかけになります。コニュニティーの輪が広がり、地域の活性化にもつながるはずです。

博物館や美術館に行く
博物館や美術館は、世界中の文化や歴史が詰まった宝庫です。過去だからと目を背けるのではなく、これまでの歩みを学ぶことで、いま私たちが直面している問題を解決するためのヒントを見つけられるかもしれません。

庭やプランターで野菜を育てる
食について学ぶのに、これほど手っ取り早いものはありません。どれだけ野菜を育てるのが大変か、食のありがたみを感じられるはずです。

無駄なく食べる
「固い」「見た目が悪い」といった理由で、本来であれば食べられる部分まで捨てるのはもったいないです。ゴミを増やさないためにも、なるべく野菜の皮まで食べるようにしてみてください。食の栄養や食べ方の勉強にもつながります。

このように、明日からでも始められるスローフードの取り組みはたくさんあります
誰かと一緒に始めればなお楽しいですし、逆に誘いにくい人は、自分で買い物に行ったり料理してみたりして、スローフードを始めるのもいいかもしれませんね。

日本のスローフードの課題!環境や生物多様性の問題

スローフード運動が広まる一方、環境や生物多様性などの問題も加速しつつあります。一度失った動物が蘇らないように、消えてしまった野菜の種や土地、文化は簡単に取り戻せません。

一人一人が国や世界レベルで物事を考えるのは、きっと難しいでしょう。
現状、イタリアと比べてスローフードの考え方が日本に根づいていないのも課題といえるでしょう。

しかし、一人でもできることはたくさんあります。
「明日の晩ご飯に日本の伝統的なおかずを取り入れてみる」こういった小さなことから始められるのも、スローフードのメリットです。

まとめ|スローフード運動は簡単に始めらえる

スローフードとは食とそれを取り巻く全てのシステムをより良いものにしようとする考え方で、イタリアの小さな町ブラで始まりました。今では日本だけではなく世界のあらゆる国や地域でスローフード協会の活動が広まっています。
また日本スローフード協会でも、味の箱船と先住民族テッラマードレといった食だけでなく文化を守っていく活動が行われています。

私たちでもできるスローフード運動はたくさんあり、日々の食事に地元産や有機食品を取り入れるのも立派な取り組みです。ぜひ、明日から始めてみてください。



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