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【第6回】熱狂的ファンをつくるEC店舗の運営方法 | 中小企業のためのEC・ネットショップ立上げ・改善入門講座

|見過ごされている「店舗運営」の重要さ

「ECビジネスの骨組みをつくる3つの施策」の最後は、「熱狂的なファンを生み出す店舗運営」になります。

多くのお店を見るなかで、筆者はECサイトを眺めるだけで、おおよその月商が分かり、さらにアクセス数や転換率、客単価という要素に分解して、短時間でお店の問題点を突き止めることができるようになりました。

その中で、ECサイトにとって、最も重要なのは「ひと気が感じられるかどうか」ではないかと考えるようになりました。

  • 成功しているお店には、間違いなく「ひと気」が感じられます。

  • 成功していないお店には、「ひと気」が感じられません。

これは筆者だけの感覚ではないと感じます。

なぜならば、ネットでモノを買うことが日常的なものになりつつある現代、私たち(すっごく高齢のおじいちゃんとかおばあちゃんは除く)はECサイトを見ただけで、

  • 日々どのくらいお店に手が入れられているか

  • どのくらい多くのお客さんがどのくらいの頻度で利用しているか

  • このサイトや運営会社は信用に足りるか

ということを、さまざまな情報から把握して、判断しているからです。

ここから、私は「ECビジネスにおける大きな成功要因」とは、

  • 楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングのどこに出店するか

  • Shopify・BASE・STORES・MakeShop・ColorMeなどからどのカートを選ぶか

ではなく、いかに店舗を運営をするかが重要であると考えるようになりました。

|EC・ネット通販は「自販機」ではない

実際に、私の身の回りでも、高い出展料や販売手数料がかかるECモールに出店するよりも、低コストに運営できる「本店型」と呼ばれる自社のECサイトで多くの売上を上げているEC店が数多くあります。

そうした店では、店長さんやスタッフさんが、ありったけの愛情を注ぎ込み、ECサイトを運営しているのです。

毎日のSNSでの情報発信、写真撮影、商品ページの作成、ブログの執筆といった手間のかかる作業も、お客さんとつながり、交流することが楽しいから、苦労なく続けられるといった感じなのです。

確かに、楽天やヤフーショッピングなどのECモールやAmazonのプラットフォームは、自社ECサイトよりも大きな売上を立てられる可能性は高いです。

しかし、そうした自社ECサイトを運営している店長さんたちを見ていると、「この情熱があれば、立地や使用しているシステムがどうあれ、成功するだろう」と思うのでした。

とても不思議なことに、私たちはインターネットを通じて、開いたECサイトの向こう側にいる「店長さんやスタッフ」、「そこに集まっているお客さん」の存在、「そこにかかっている手間」を瞬時に感じ取ることができるのです。

私の周りにいる成功しているEC企業の経営者や店長さんたちは「ECとは放っておけば、勝手に売れる自販機ビジネスではなく、むしろその対極にある接客業である」と口を揃えて言います。

もっとも、そうではないEC店舗がないとは言い切れません。たとえば、大手の家電製品やスポーツ用品店など、いかに効率よく多数のサイトにアップして、販売するかという世界もあります。

しかし、中小企業レベルでは、お客さんとのコミュニケーションを積極的に図ったり、ここまでするかという手厚いサービスを提供したりしているお店が成功していると筆者は感じます。

インターネットの向こう側にいるお客さんは、ECサイトを運営している人の人柄や性格、仕事への姿勢などを見抜いていると、コンサルティングを行う会社のレビュー欄を読んでいると感じます。

|ちまたのEC必勝法や鉄測より、正しいもの

最初の記事で、筆者は2020年にさまざまな資料にあたって調べたところ、日本国内のEC店舗数は約343.6万以上あると述べました。

こうした数多くのプレイヤーが存在する中で、私たちはお客さんに自社のEC店舗を選んで頂けなければなりません。

古くからEC業界では「あそこのお店が、どこに出店したから、月商いくら売り上げた」「あの新しいモールやプラットフォームが売れるらしいよ」という話が尽きず、新しい店舗を出店することが必勝法として語られてきました。

さらに、近年ではInstagramやTwitterなどのSNS、YouTubeやTikTokなどの動画サイトなど、最新のツールを活用し、コミュニケーションを行うことがヒットの鉄測であるとして盛んに喧伝されてきました。

もちろん、実際に華々しい成功をおさめているお店があることも事実です。

しかし、343.6万ものEC店が存在する中で、SNSや動画などのコミュニケーションツールを活用するだけで、成功できた企業はごくわずかではないでしょうか。

一瞬のブームで終わるものではなく、持続可能なビジネスとしてECを成功させるためには、これまでの記事でお伝えしてきた「商品のストーリーづくり」や「リピート購入の仕組みづくり」が欠かせないと考えます。

さらに前述した「新規店舗を出店すること」、「最新のツールに対応して、コミュニケーションを取ること」は、ビジネスを行うための戦略やプロモーションの方法の一つであり、すべてではありません。

たとえば、自社の商品のメイン顧客層が、50歳以上でなじみある楽天市場やAmazonでの買い物を好み、SNSサイトは苦手でメールでのコミュニケーションを好んでいるような場合には、巷で語られる必勝法やヒットの鉄測はほとんど役に立たないのではないでしょうか。

|リアル店舗に勝る接客でお客さんに接する

新しいモールへの新規出店やSNSや動画といった最新のツール活用は、必ずしもEC事業の成功要因ではありません。

「それでは、いったい私は何をすればいいのか?」

そう思った方もいらっしゃるかもしれません。ここで必要となるのが、冒頭で説明した「ひと気が感じられる店舗の運営」です。

さらに言えば、「リアル店舗に勝る接客」でお客さんに接することです。

たとえば、食品や調味料、ドリンク、酒類の場合、スーパーやドラッグストアなどの売り場では「接客」という要素はほぼ存在せず、値段や在庫ありきの世界となっています。

しかし、陳列棚などのスペース制限がないECサイトでは、どんな風に商品を説明することも、どんな風にお店の中を案内し、接客することも可能です。

優れたEC店が、ただ商品と価格、仕様を登録するだけでなく、目を引く画像や詳しい商品ページを用意したり、関連商品や商品カテゴリーをていねいに整理しているのは、このためです。

スーパーやドラッグストアでは、お客さんの名前や購入履歴を把握して、商品を提案することも不可能ですが、ECサイトでは顧客データベースを用いて、一人ひとりのお客さんに応じた接客や提案を行うことが可能です。

たとえば、筆者がもっとも尊敬しているEC店の店長さんは、受注したお客さんに送るサンクスメールの文面を、お客さんの購入履歴を見て、一通ずつ文面を変えて送るというような工夫をされていました。

一見、誰もがルーチンワークとして機械的に処理してしまいがちな作業でも、ひと手間かけるだけでも、忘れがたいサービスを提供することができるのです。

同じことは、購入後のフォローメールの送信、ステップメールの設計、ロイヤルティプログラムにも応用することができます。

筆者は上述した店長さんのように、一通ずつ文面を変えて、お客さんにサンクスメールを送ることはできませんでしたが、複数の商品で、季節ごと、購入後からの日数に応じたステップメールを設計して、手動または自動で配信していました。

具体的に、この記事で、どんな商品で、どんなことを書いたかを紹介することはできませんが、筆者は、

  • 先日、亡くなった天国のお母さんから言葉を頂いたような気がして、涙が止まりませんでした。

  • 妻が亡くなって、生き甲斐を失っていた中、いただいたメールのおかげで、御社の商品とともに生きていく勇気を頂きました。

  • 頂いたメールのおかげで、祖母の代で止まっていたわが家に伝わる伝統商品を、兄と協力して、復活させることができました。

といったお客さんからの多くの声を頂いていました。

また、筆者が運営していたEC店舗は、少なくないお客さんが筆者の書くメールや手紙を読み、レビュー欄に感想を書き込む、という心温かい雰囲気に満ちた場になっていました。

どこにでもある商品であっても、ネットの向こう側にいる「たった一人のお客さん」の喜びや幸せを願って、書いた言葉は必ず伝わり、かけがいのないサービスになる、と筆者は信じています。

|最低限求められるECサイトでの接客対応

「ECでリアル店舗の勝る接客を行う」という高度なことを書きましたが、それ以前のEC店舗の運営を強化するだけでも、お客さんからの信頼は増し、店舗に「ひと気」を出すことができます。

たとえば、次のような店舗の運営の施策が考えられます。

  • お客さんから問い合わせを頂いたら、すぐに返信する。顧客への対応は嫌がらず、その場で、親切にていねいにやる。

  • お客さんから頂いたレビューにはすべて目を通し、メールなどで感謝を伝え、時には手紙や電話で御礼を述べる。

  • クレームが起きた時には、すぐにメールと電話でお詫びの気持ちを伝え、いち早く対応する。

  • 返品の交換対応する時には、必ず手書きの手紙を添えて、到着した後もメールや電話で確認する。

  • 一日でも早く、お客さんに商品が届くように、荷造り・発送の方法を考え、改善する。

  • 毎日、商品の在庫をチェックし、欠品が起きないようにする。欠品が起きたら、ていねいかつ確実にアナウンスする。

  • ECモール店の場合、セールやポイントアップ日に、お客さんを思ったメルマガを欠かさず送信する。

  • 自社のECサイト店の場合、ただサイトを開いているだけではなく、お客さんが喜ぶイベントを定期的に企画し、SNSで告知する。

どれもがリアル店舗ではごく当たり前の取組みで、日毎日のように改善が行われていることです。

しかし、リアル店舗ではごく当たり前の「店舗運営」という考え方が、会社でECビジネスを行う際には抜け落ちてしまうことが多いのです。

もし優れたEC店の店長さんに「一つだけ成功する方法を教えてください」と質問したら、多くの方は「お客さんにしっかり向かい合って、コミュニケーションを取ること」と答えると筆者は考えます。

姿が見えないからこそ、ECでの「店舗の運営」や「接客対応」は大事になります。姿が見えないからこそ、「真摯にお客さんと向き合う」という姿勢で、大きな差がついてしまうのです。

そして、これらを継続していくと、不思議なことに、ネットの向こう側に自社のファンが増え、売上が上昇していくという体験をすることができると筆者は考えます。

なぜなら、前述したように、ECビジネスでは姿が見えないからこそ、小さなことを通して、お客さんに向き合う考え方や行っていることが伝わってしまうから、です。

このように、いま企業で行うEC事業において、最も欠けていることは「店舗の運営を通して、積極的にお客さんとコミュニケーションを取っていくこと」であり、ここを改善することが持続的なEC事業の成長、売上アップには欠かせない、と筆者は考えます。

そして、この「お客さんを想い、コミュニケーションを取っていくこと」と「日々の店舗運営を行っていくこと」の中で、第一回目の記事で書いた「中小・中堅企業に最も足りていないECという新しいビジネスを成長させていける人材が育っていく」と筆者は考えます。

数多くの修羅場をくぐってきた経営者の方、事業責任者の方ならば、分かっていただけると考えますが、この記事を書きながら、筆者は「私たちがいま仕事を行える能力や姿勢、機会も、場も、実はお客さんや周囲の方々に育てて頂いたものではないか」という想いがしてなりません。

仕事をする私たちは、「お客さんによって、育てられるもの」ではないでしょうか。

筆者がECビジネスの中で、いちばん思い入れがあり好きなのが「店舗運営」や「接客」に関する工夫や考え方です。

リアル店舗も、EC店舗も、「接客業」であるという基本が大事になります。

お客さんから感謝の言葉を頂いたり、感動した、最高だったというレビューを頂くと、また頑張ろうというやる気が湧いてくると思います。

その上で、前述したECだから必要になる商品ページのつくり方やSEO対策、プレスリリースの実施の仕方などの方法を知りたいと思った方は、当オフィスでECビジネスの入門セミナーをご用意していますので、ぜひお声がけください。

上記の「店舗運営」や「接客」という考え方を含めた意識づけや店舗の改善のお手伝いもさせて頂いていますので、どうぞご相談いただければ、幸いです。

最後に、ここまでの記事「ECビジネスを成長させるために必要な4つのこと」の内容をもう一度まとめてお伝えしたいと思います。

  1. お客さんが求めているコトを理解する(マーケティング調査の仕方)

  2. 商品のストーリーづくり(ECの商品ページの制作方法)

  3. リピート購入の仕組みづくり(ECのリピート対策の方法)

  4. 熱狂的なファンをつくる店舗運営・顧客対応

気になった点がありましたら、上記のリンクから、読み直してください。

いちばん最初の記事から、長い旅を経て、私とあなたは、

「自社のECビジネスも、そこに関わる人も、お客さんのことをよく知り、お客さんの立場に立って考え、最善を尽くす中で、育てられるものである」

という地点に辿りつけた気がします。

次回は、企業がこれらの取組みを本気で行うことで、「企業に与えられる2つのもの」というこの連載記事でもっとも伝えたいことを書きたいと思います。

いつも長文の記事を読んで頂き、本当に有難うございます。
それでは、また次回の記事でお会いいたしましょう。

(連載記事の最終回はこちらから)


▼次の記事は、下記となります。

【第7回】企業がEC事業に本気で取り組んだ時に与えられる2つのもの

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▼過去の連載記事を読みたい方は、下記をご参照ください。


『中小企業のためのEC・ネットショップ立上げ・改善入門講座』【全7回】


【第1回】ECとは、サイトではなく、ビジネスをつくるものである

【第2回】EC事業に想いを乗せる方法

【第3回】お客さんがECで購入しているのはモノではなく、夢や体験である

【第4回】ECで販売する商品のストーリーのつくり方

【第5回】持続的にECサイトを成長させるリピート購入の仕組みづくり

【第6回】熱狂的ファンをつくるEC店舗の運営方法

【第7回】企業がEC事業に本気で取り組んだ時に与えられる2つのもの


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