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【第3回】お客さんがECで購入しているのはモノではなく、夢や体験である | 中小企業のためのEC・ネットショップ立上げ・改善入門講座

前回の記事では、「ECビジネスを成長させるために必要な4つのこと」として、次の4つを挙げました。

  1. お客さんが求めているコトを理解する(マーケティング調査の仕方)

  2. 商品のストーリーづくり(ECの商品ページの制作方法)

  3. リピート購入の仕組みづくり(ECのリピート対策の方法)

  4. 熱狂的なファンをつくるEC店舗の運営方法、顧客対応

本日は、この中から一つ目の「お客さんが求めているコトを理解する(マーケティング調査の仕方)」について解説をしていこうと思います。

|企業の創業秘話に含まれる「商品のストーリーづくり」に欠かせない2つの要素とは


当オフィスへよくご相談を頂いている食品や調味料、飲料、化粧品にかぎらず、あらゆる企業の商品にはストーリーがあります。

たとえば、私が約4年のあいだ、EC事業の再建に携わってきた食品メーカーにも、興味深い創業秘話がありました。

その会社は、現在、「粉末漬物の素」のトップシェアメーカーとして知られていますが、元々は片田舎の町にある小さな薬局店でした。

小さな薬局を営む薬剤師であった創業者は、毎日薬をもらいにお店にやってくる高齢者の患者さんが塩辛い漬物を食べていることに心を痛めていました。

昭和30年代の日本では、年中スーパーに新鮮な野菜が売られていることはなく、地方に暮らす多くの人々は、秋に収穫した大量の野菜を塩漬け保存して、冬を越していたのです。

そこで創業者は自身の知識と調合技術を活かして、旨味を感じられるグルタミン酸を配合した「塩分控えめの粉末漬物の素」を開発しました。

店頭でそれを売り出すと「美味しく漬かる」と評判となり、お店には毎年漬物の素を求めて来るお客さんが絶えないようになりました。

そして、創業者はお客さんの要望に応えるために、大きな工場をつくり、やがて全国各地で「漬物教室」を開催する企業となっていったのでした…。

このような創業期の素敵な話が、どんな企業にもかならずあると思います。

もしかしたら、あなたの会社にも「創業者はお客さんと直接ふれ合う中でニーズを感じ取り、強みを活かした商品を開発し、卓越した行動力で事業を成長させていった」という話があるかもしれません。

おそらく、いま会社で働いている人たちにとっては、遠い昔話のように聞こえるでしょう。

しかし、筆者は、このような自社の創業秘話は、ECで販売する商品の「ストーリーづくり」に欠かせない次の2つの要素が含まれた最良の事例になると思います。

①創業者は、お客さんのことをよく知っていた。
②創業者は、お客さんの喜ぶものを提供していた。

もっとも身近なところに、最良のヒントがそっと置かれているということです。

そして、EC事業の立上げや改善には「自社のお客さんのことをよく知る」ということがもっとも欠かせない、と筆者は考えます。

|すべては、お客さんのことを知ることからはじまる


「顧客の理解や、市場の調査が重要なのはよくわかっている。ここから当社では流通データを活用し、緻密に市場の分析を行い、販売や生産の計画に活用している」

と中には仰られたい方もいらっしゃるでしょう。

一定の規模がある大きな企業となれば、膨大なデータを活用し、さまざまな分析を行う必要があります。

しかし、規模が大きくなればなるほど、売り場からの距離は遠くなり、お客さんがリアルに求めていることが肌感覚として分からなくなってしまうのです。

分かりやすく言えば、自社の商品の機能や品質ではなく、「お客さんが自社の商品にほんとうに求めていること」を、市場規模や流通の傾向を示すデータから知ることはできないのです。

ここからEC事業の改善や立上げを行うためには、別の方法で、「自社のお客さん」について、よく知る必要があります

・お客さんとは、どんな人なのか?
・どんな家族構成で、どんな生活を送っているのか?
・どんな趣味を持っているのか?
・何に悩んでいるのか?
・どのようにその悩みを解決しようとしているのか?
・どんな基準で解決の方法を選んでいるのか?
・お客さんは、どんな言葉で、その悩みや解決方法を表現しているのか?
・お客さんは、その悩みを解決するにはどれくらいお金をかけられるのか?

ECで販売したい商品のストーリーをつくるために、インタビューで聞きたいこと

上記のようなことについて、リアルなお客さんに話を聴いて、お客さんのことをもっと知る必要があるのです。

なぜならば、前述したように企業の規模が大きくなればなるほど、私たちは「お客さんの視点」ではなく、「企業の視点」で都合よく物事を考えてしまうようになっているからです。

「企業の視点」で考えるとは、たとえば、

  • 当社の商品は、他社にはない○○という特長があるため、売れている

  • 当社の商品の品質は高いため、一度購入して貰えば、リピーターが増える

  • 大きな広告を打って、認知さえ高めれば、大幅な売上アップが見込める

  • 時代はSNS、インスタグラムを頑張れば、商品が売れるようになるだろう

  • ○○というECモールが伸びているから、新規出店すれば売れるだろう

というようなことが挙げられます。

一見、間違ったことは言っていないように見えますが、上にあげた考えの中では、お客さんの心理や消費行動がまったく考慮されていないのです。

それよりも重要なのは、「お客さんのニーズをよく理解して、お客さんが望むものを、お客さんが望む方法で提供すること」ではないでしょうか。

|お客さんはモノではなく、モノの向こう側にある「夢」や「体験」を買っている。

先ほどのメーカーでEC事業を再建する中で、筆者が真っ先に行ったのは、「お客さんについてよく知ること」でした。

筆者は、いまも商品を企画、販売をする前には、必ず身近にいる人にアンケートを取ったり、綿密なインタビューを行うことにしています。

さらに商品を売り出す前に調査を目的にマルシェやフリーマーケットなどに出店して、お客さんと商品に関するデータを収集することもあります。

このように集めたリアルなお客さんの声や市場のデータは、ECで商品を販売するときに、訴求力の高いPRとして活用することもできます

しかし、それ以上に、筆者がリアルなお客さんの声や市場のデータを大切にしている理由は、商品を販売する前に、モノの向こう側にある「お客さんが求めているコト」をお腹の底から理解したいからです。

たとえば、前述した食品メーカーでEC事業の再建を行っていた筆者が見つけた「お客さんが求めていたコト」とは、味や原材料、製法などへのこだわりではなく、「身体の内側から美しく、元気な自分になる」という夢や「ていねいに時間をかけて、毎日を暮らしたい」という暮らし方、でした。

EC市場において、お客さんが求めていることは、既存の流通市場で求められる機能や品質といったスペックやラベルではなく、商品が提供する夢や体験、暮らし方、生き方である、ということがよくあります。

自分自身の生活を振り返っても、「人はモノを買う時にはお金を惜しむが、夢や時間、体験を買う時には驚くほど大胆になれる」ということを感じないでしょうか。

このように、「ECで販売する商品のストーリーづくり」のためのマーケティング調査は、調査会社が発表している市場の規模や傾向というデータよりも、人の心や行動に注目することが大切です。

特に、力を入れて売り出したい商品があれば、ぜひ周りにいるターゲットに近い好みや特長を持つ方にアンケートを取ったり、インタビューをしたりして、「お客さんの心の中」を探ってみましょう。

こうしたやり方であれば、「お客さんの悩み」から「どのようにネットで、モノを購入しているのか」、「お客さんが望んでいる夢や体験」という重要な情報を無料で入手することができます。



いかがでしたでしょうか?

次の記事では、こうしたマーケティング調査で、見つけたお客さんのモノの向こうに夢を見て、求めている体験や人生を核として、実際のECの商品ページをどのようにつくるのかについて、お伝えしたいと思います。

ECビジネスを構築する中で、「商品ページづくり」はもっとも重要な要素のひとつになります。ぜひとも、ご覧いただけましたら、幸いです。

本日も、長文の記事をお読みいただいたことに、心より感謝申し上げます。

追伸:上述した上述したお客さんの心や行動を把握することを、「ペルソナ分析」や「カスタマーズジャーニーマップ分析」といいます。

もし一人だけで、自社だけで、マーケティング調査を行うことが難しいと感じた方は方は、当オフィスまでご相談いただければ、幸いです。

課題に応じたワークショップ形式のセミナーも多数用意しており、御社の事業の状況把握から、お金をかけないマーケティング調査の方法、商品のストーリーづくりまでを、ていねいにサポートさせて頂きます。

▼次の記事は、下記となります。

【第4回】ECで販売する商品のストーリーのつくり方


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▼連載記事の続きを読みたい方は、下記をご参照ください。


『中小企業のためのEC・ネットショップ立上げ・改善入門講座』【全7回】


【第4回】ECで販売する商品のストーリーのつくり方

【第5回】持続的にECサイトを成長させるリピート購入の仕組みづくり

【第6回】熱狂的ファンをつくるEC店舗の運営方法

【第7回】企業がEC事業に本気で取り組んだ時に与えられる2つのもの


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