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【第4回】ECで販売する商品のストーリーのつくり方 | 中小企業のためのEC・ネットショップ立上げ・改善入門講座

前回の記事では、リアルなマーケティング調査を通して、どのようにお客さんが商品に本当に求めているコト、「夢」や「体験」を見つけるか、という方法についてお伝えしてきました。

今回は、こうして見つけた「お客さんの夢や体験」を核として、どのようにECの商品ページをつくり上げていくか、ということをお伝えしたいと思います。

|「お客さんが求めるコト」に寄り添ったストーリーを構想する

「お客さんが求めているコト」を理解できたら、まず、それに寄り添った商品のストーリーを構想していきます。

この段階で注意したいことは、「お客さんは商品というモノではなく、○○ができるというコト(夢や体験)がほしい」という点です。

たとえば、前述した食品メーカーで、私は米麹の甘酒の販売に関わっていました。

一般市場に向けて、米麹の甘酒は、「甘酒は俳句では夏の季語とされ、江戸時代には夏バテを防止するものとして、庶民に親しまれていました」というような売り文句で、「滋養強壮によいもの」としてPRされていました。

しかし、丹念にマーケティングを行った結果、お客さんが商品に求めていたのは、「身体の内側から自分を変えたい」、「麹の力で美しくなる」というコト(夢や体験)でした。

お客さんは、商品に「滋養強壮」ではなく、麹を取ることによって「内側から、美しく、元気な私になる」というストーリー、イメージと言葉を求めていたのです。

このような理由から、私は「お客さんの健康や美容をサポートする、自然な原材料からできたピュアな飲みもの」として、米麹甘酒の原材料であるお米と米麹から甘酒ができる過程をていねいに解説して、まったく新しい商品のストーリーをつくり上げました。

同じ商品でも、「商品というモノを通して、お客さんが望むコトを実現できる」という話をていねいにしてあげるだけで、いっけん何でもない商品がとても輝いて見えるということがよくあります。

マーケティングの世界には、「お客さんが欲しいのはドリルではなく、壁に空いた穴だ」という有名な言葉があります。つまり、商品とはお客さんが実現したいことを手助けするものであるという考え方です。

商品のストーリーをつくる時は、「この商品を通して、お客さんが実現したいことを手助けできる」という確信を持てるまで考えることが必要になります。

このため、EC・ネット通販事業に関わる人は、まず自分で日常的に商品を味わったり、使用したりすることが欠かせません。

また味や成分、こだわり、利用方法、原材料、製造方法、パッケージなど、様々な角度から商品を眺めて、特長を整理し、お客さんから見た時の視点に転換するという作業が必要になります。

筆者は商品のストーリーを考える時には、A4のコピー用紙に100~300本のキャッチフレーズを書き出して、お客さんの心の中にある「夢」や「体験」につながる言葉を発見することで、お客さんの視点で商品コピーをすべて書き直すという作業を行っています。

やり方は人それぞれですが、力を注いだだけ、その商品は一人ひとりのお客さんにとって価値のある、息の長い商品に生まれ変わると筆者は信じています。

|ECサイトの商品ページのつくり方


ここまで筆者は、いかにお客さんが商品に求めているコトを深く理解することが大切かということを述べてきました。

ここからは、ここまで考えてきたことを、いかにECサイトの商品ページに落とし込み、制作するかという方法についてお伝えしていきます。

ECサイトの商品ページは、出店するモールや使用するECカートによって異なりますが、主に3つの要素で構成されています。

《ECサイトの商品ページの構成要素》

  1. 第一画像

  2. 商品のPR(商品スライド画像含む)

  3. 商品と仕様の説明

ECの商品ページの構成には、様々な型がありますが、筆者は「CT-BEAF(シーティ・ビーフ)の構造」という型に沿って、ブロックで考えて、つくっていくことをオススメします。

「CT-BEAFの構造」とは、商品ページの基本型としてもっとも有名な「BEAF(ビーフ)の法則」をさらに分かりやすくアレンジしたもので、次に挙げるブロックの頭文字を取ったものです。

  • Catchphrase & 1st Image(キャッチフレーズと第一画像)

  • Troubles(トラブル:お客さんの悩みや困っていること)

  • Benefit(ベネフィット:商品がお客さんに提供する便益)

  • Evidence(エビデンス:便益を裏づける証拠や他の人からの評価)

  • Advantage(アドバンテージ:競合商品に対して優れている点)

  • Fact(ファクト:商品の仕様、バリエーション、注意点など)

筆者はコンサルタントとして、数多くの商品ページを見てきましたが、売れている商品は、ほぼこの「基本の型」に沿ってつくられていると感じます。

また、昨今ECサイトに訪問するお客さんの70~80%はスマートフォンで閲覧しています。

このため、特に、新規でEC市場に参入される方は、商品のPRは縦長ページだけでなく、横方向への画像フリックに対応した構成でつくることを意識してページを制作することが必要になります。

具体的に、下の図で示すように縦方向にも、横方向のスライドにも用いることができる20枚の画像で、商品ページを構成することをオススメします。

「CT-BEAFの構造」で商品ページをつくるためのフォーマット

画像のカタチは、上の図のように縦長であっても、正方形であっても構いません。

ShopifyのようなECカートでは100枚の画像を載せることも可能ですが、初心者の方は、まず「20枚のブロック」でECの商品ページの構成を考えることから始めてみましょう。

|ECの商品ページづくりの構成要素の解説

それでは、一つひとつの要素について、どのようなことに注意して、何を盛り込んでいけばいいのかについて、詳細に説明していきましょう。

1.キャッチフレーズと第一画像

CT-BEAFの「C」、Catch Phrase & 1st Image(キャッチフレーズと第一画像)とは、商品検索一覧画面に表示される画像や説明文または商品ページの一番はじめに掲載される画像のことです。

市場での認知度や人気が非常に高い場合をのぞいて、ECでの販売は、必ず「競合商品との比較」が行われます。この際に、お客さんがクリックして、商品の詳細ページを見たくなる短い言葉と魅力的な画像を用意することが必要になります。

この際に、用意すべき言葉や画像は、前々回の記事でも紹介したAB3C分析を用いて検討したAdvantage(競合優位性)もしくはBenefit(お客さんにとっての便益=お客さんが求める夢や体験)に基づいて選択するとよいでしょう。

ABC分析のイメージ

具体的に、第一画像は、下記のような基準で考えるとよいと考えます。

  • 同じ市場に強い競合が多くいる場合には「Advantage(競合優位性)」、つまり「他の商品との違い・勝っている部分」を分かりやすく伝える

  • 同じ市場に競合が少ない場合には、「Benefit(顧客にとっての便益)」、つまり「お客さんにとっての便益=お客さんが求める夢や体験をかなえられること」を分かりやすく伝える

AmazonやGoogleショッピングに掲載される第一画像は白背景で文字入れができませんが、この「商品名」や「短い説明文」の中で、「たった一言」で他の競合商品との違い、または「お客さんにとっての便益」を表現できる「言葉と絵」を考えることを強くお勧めします。

また、昨今、楽天・Yahoo!などのECモールにおいても、第一画像は商品を中心に作成することが多くなっているため、筆者は「Conclusion(まとめ、結論)」という第二画像にあたるブロックで、

  • 商品のベネフィットのうち、最も魅力的な点を伝える

  • もしくは商品のベネフィットを、端的にまとめた内容を提示する

ことが効果的ではないかと考えます。

2.トラブル:お客さんの悩みや困っていること

CT-BEAFの「T」、Troubles(悩みや困ってること)とは、「この商品は、こんなお客さんに向けた商品です」ということを自ら定義して、「そうそう、探していたのはこの商品だ」とお客さんからの共感または信頼を得るブロックです。

事前に行ったAB3C分析やSTP分析の結果に基づいて、「お客さんのどんな悩みに応えるものなのか」を言葉やイメージにしていきましょう。

具体的に、商品ページ制作ではお客さんの悩みや困っていることを箇条書きで述べる、またはイメージとともに提示することをオススメします。

理由は、ECで販売する商品は、お客さんが検索をする前にその商品に関する前提知識や情報を持っていないことが多いからです。検索をした後の「お客さんの不安」を解消するためにも必要な個所であるとも言えます。

3.ベネフィット:商品がお客さんに提供する便益

CT-BEAFの「B」、Benefit(便益)とは、商品がお客さんに提供できる夢や体験(変化、成長、時間、暮らし、便利さ、美味しさ、喜び、感動など)などを訴求するブロックです。

たとえば、「こんな風に毎日が変わります」、「これがあることで、こんな体験ができます」など、「購入することで夢がかなう」、「望んでいる人生や生活を体験できる」といったものを想像するとよいでしょう

やや高尚な例えを挙げていますが、「届いたら、調理をすることなく、家族と最高のお鍋を楽しむことができます」、「この軽いコードレスの掃除機があれば、部屋を掃除する頻度が増えます!」というものも立派な夢であり、お客さんが求めている体験になるでしょう。

このブロックをつくる時の注意点は、この記事の前半箇所で詳細に説明してきた「お客さんが商品に求めている夢や体験」をお客さんの気持ちに寄り添った言葉とイメージで提示することです。

筆者は、商品ページの中で、この個所が最も重要であると考えています。このため、この個所の箇所をつくるためには、いっさい手を抜かず、時間も労力もかけてつくることをオススメします。

技術的な面では、前述した「お客さんの悩みや困っていること」に沿って、それを一つずつ解消しているものになっているかという整合性をよく見ることも大切になります。

商品ページのTroubles(悩みや困ってること)とBenefit(便益)が表裏一体の関係になっているかをよく見ながら、伝える内容や順番を修正しながら考えていくことをオススメします。

4.エビデンス:便益を裏づける証拠や他者からの評価

CT-BEAFの「E」、Evidence(証拠)とは、便益を裏づける証拠やお客さんあるいは第三者の評価を述べる箇所です。

お客さんは、あなたの「売り文句」をそのまま信じません。このため、先に挙げた便益を裏づけるイメージやデータ、お客さんや第三者の声や感想、評価を示す必要があります。

多くの方が作成する際に悩まれるこのブロックですが、たとえば次のようなものが考えられます。

  • 競合商品より、量や成分が多い、品質が高いならば、それが分かりやすく伝わるデータやイメージ

  • 商品を試食や試飲したお客さんの感想、アンケートの結果

  • マスコミでの掲載実績、ランキング受賞の実績、第三者機関からの認証や表彰実績など

このブロックづくりには、「手元にないものは用意する」という覚悟で、「証拠」を集めることが大切です。

5.アドバンテージ:競合商品に対して優れている点

CT-BEAFの「A」、Advantage(競合優位性)とは、競合商品より優れている点を伝えるブロックになります。

上述の「Benefit(便益)」がお客さんの立場に立って、得られるものを伝えるものになっているのに対して、このブロックでは「競合する商品より優れている点」、「競合との違い」、「差別化できる点」について、ていねいに伝えていきましょう。

難しい箇所ですが、「便益」とはお客さんにとっての価値を伝える箇所であり、「競合優位性」とは市場における「自社の商品の強みや特長」を伝える箇所である、と考えていただいても構いません。

たとえば、食品や飲料という商品の場合、味わい、使い方、成分、容量、原材料、製法、パッケージ、伝統や歴史、つくっている人や施設などという切り口が考えられます。

また、前回の記事で紹介したAB3C分析を活用すると、分かりやすく競合、顧客と市場の関係を整理できて、「競合優位性」が見つかると考えるので、ぜひやってみてください。

6.ファクト:商品の概要、仕様など

CT-BEAFの「F」、Fact(ファクト)とは、商品の概要や、仕様など、「事実」を掲載するブロックです。

たとえば、商品の大きさ、重さ、色や形のバリエーションが考えられます。食品や飲料であれば、原材料や成分、賞味期限、内容量も大事になります。

このブロックにぜひ掲載して頂きたいことが、2つあります。

  1. 写真で、商品の外観や中身を必ず見せること
    1つ目は、商品のサイズ感や重さが分からないため、必ず商品のパッケージや配達時のイメージと仕様をテキストで用意して、掲載しましょう。特に、ギフト用の商品ではパッケージやのしやメッセージなどの要素が重要になるため、必ず載せるようにします。

  2. よくある質問(FAQ)と回答を記載すること
    2つ目は、お客さんからのよくある質問とその回答を掲載することです。自店からお客さんの住む地域までのお届け日数の目安、送料無料の条件、離島への配達に関する注意事項、他の商品との同梱が可能などか、お客さんが疑問に思う点を分かりやすく掲載しておきましょう。

以上が、筆者が考えるECで販売したい商品ページの制作の方法となります。

商品ページは、ユーザーとの接点となる検索エンジンでの表示結果(SEO対策)においても、非常に重要な要素となります。ぜひ上記の説明を参考にしながら、商品ページをつくっていただけたらと思います。

また、もし一人だけで自社だけで「商品のストーリー」を考えることや「商品ページづくり」が難しいと感じられた方は、ぜひ当オフィスにご相談ください。専門講座として「商品ページのつくり方」の個別セミナーもご用意しています。

次の記事では、「リピート購入の仕組みづくり」について、ご紹介させて頂きます。

本記事で述べてきた「商品のストーリーづくり」と同じくらいECビジネスにとって大切な要素となりますので、ご一読頂けましたら、幸いです。

本日も、長文の記事をお読みいただいたことに、心より感謝申し上げます。
あなたのECビジネスが成功することを、心より祈っております。

▼次の記事は、下記となります。

【第5回】持続的にECサイトを成長させるリピート購入の仕組みづくり

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▼連載記事の続きを読みたい方は、下記をご参照ください。


『中小企業のためのEC・ネットショップ立上げ・改善入門講座』【全7回】


【第5回】持続的にECサイトを成長させるリピート購入の仕組みづくり

【第6回】熱狂的ファンをつくるEC店舗の運営方法

【第7回】企業がEC事業に本気で取り組んだ時に与えられる2つのもの


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