クリエイターのためのラーメンズ名言集
こんにちは。デザイナーの坪田です。私はクリエイターこそラーメンズを観るべき!と主張しています。好きが高じて?小林賢太郎作品をデザイナー視点で分析した「ラーメンズデザイン論」というnoteも書いています。今回はラーメンズやK.K.P.の中で”クリエイターに知って欲しい台詞”を集めてみました。
1:ラーメンズの名言
ラーメンズは小林賢太郎・片桐仁のコンビです。第5〜17回公演のコントがVHS/DVD化されており、そのすべてがYouTubeチャンネル「ラーメンズ公式」にアップされています(特別公演『零の箱式』を除く)。そしてYouTubeの広告収入は赤十字に寄付されます。
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『器用で不器用な男と不器用で器用な男の話』
「好きなことで生きる」というのは大変なことです。楽しいことばかりではありません。夢を追いかけているとツラいことや嫌なことがたくさんあります。ツラいことにぶち当たって、そのまま潰れてしまう人も少なくありません。仕事にしてしまったがばかりに好きじゃなくなってしまうこともあります。その反面、ツラいことがあるからこそ振り返った時に「頑張ったな、青春だったな」と思えます。夢を追いかける楽しさ、好きなことを仕事にする大変さを考えさせられるます。でも……好きなことをやってる人って格好良いですよね。なれるか分からないけど、続けているといつか何者かになれているのかもしれません。
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『音遊』
パクリは良くないですよね。でも、クリエイティブというのは0から1を生み出すように見えて、99%が他のものから影響を受けて生み出されるものです。0から1を生み出し続けようようとする完璧主義者は、完成させる前に心が折れてしまうことも。この音遊での音楽は完全にパクリですが。
何が当たり前で、何が当たり前じゃないのか。今「当たり前だ」と思っているものも昔は当たり前じゃなかったり、将来当たり前じゃなくなるかもしれなかったりします。当たり前を疑うこと、皆が当たり前としていることから抜け出す大切さを教えてくれます。
こちらも「音遊」からです。やりたいことをやりたいと言う、自分の好きなものを好きという、遠慮しちゃいますよね。デザインエンジニアである山中俊治さんはこのように話しています。
“ 「こっちの方が面白そう」で決断すると案外まちがわない。それは多分、決断の良し悪しよりも、決断の後にどうふるまうかの方が重要だからだと思う。”
やはり自分に嘘をつかず格好もつけずに行動をしている人は格好良いし後悔も少ないように見えます。これもなかなか難しいですが。
ターゲットは誰なのか。決裁権を持っている人って、40〜50代のおじさんが多いですよね。若い人向けの製品や規格の判断ができる人はそうそう多くありません。「明治 ザ・チョコレート」の商品化段階で、上層部から「このパッケージでは中身がわからない。売れるはずがない」という意見が出たものの、調査で好感触だった企画者は「あなたの年代がターゲットではない」と反論。結果大ヒットしたというエピソードは有名ですね。
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『小説家らしき存在』
誰でも1つは良いものを作ることはできます。ですが「作り続けること」は誰にでもできることではありません。さらにプロになると、作り続けることに加えて「一定のクオリティを保つこと」が求められます。これがとてもツラくて難しい。
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『アトムより』
語尾に「のす」をつける不思議なキャラクターが、小林の作品を分析して話した言葉で、『ラーメンズデザイン論』でも紹介しましたね。コントの中での変なキャラクターの台詞ですが、これは小林賢太郎さんが「強い言葉を使っていたら、いつか限界がくる」と語るように、舞台づくりの根底にある重要な考え方なのです。このおかげで小林賢太郎作品は一貫性がありつつ多様性も持ち合わせていて、長く愛されているのだと思います。
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『ダメ人間』
こちらはホテルマンの台詞ではありますが、クリエイターにとっても無関係ではない言葉です。ソフトウェアや技術の発達によって、表面上はプロフェッショナルとアマチュアの違いが分かりにくくなってきました。でも、プロフェッショナルの人を見ると、自分のポリシーを持っています。そして思考と技術のバランスが良かったり、逆に何かがとてつもなく突き抜けています。分かりにくいものの、見る人が見たらやっぱりプロとアマは違う。
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『study』
これを話しているのは、それはもう滅茶苦茶頭のおかしい男なのですが、この言葉は良いなと思いました。デザインしていてもあれもこれも詰め込んでいると何を伝えたいのかどんどん曖昧になっていきます。木を隠すなら森の中……伝えたいものがあるのなら周りのものを排除した方が伝わります。
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『科学の子』
学校に通っていた頃は、勉強しなさいと言われて嫌々やっていました。大人になってからは、気になったことを調べたり、知らないことを知ることはとても楽しい!と感じるようになりました。クリエイターに限らず「好奇心」はガソリンです。努力を努力と感じない人が一番強いと言われるように、楽しめると一気に伸びます。この気持ちのまま子どもに戻りたい。
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『50 on 5』
クリエイターというよりもリーダーや経営者にこそ知って欲しい言葉です。ビジネスマン必読の書『WHYから始めよ!』の著者のサイモン・シネックがTEDで行った伝説のプレゼン「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」と双璧を成す「なぜ優れたリーダーの元では安心を感じられるのか」という組織に関するプレゼンを思い出しますね。
『不透明な会話』
デザインというのは必ず理由があります。禁止マークの「赤い丸に斜め線」はNOを図式化したものなので左上から右下に向かっているとか。ワイングラスの飲み口が窄まっているのは香りを集めて嗅ぎやすくするためとか。物事は悪意を持って捉えることもできますが、表面だけ見ていても気が付かないことも多いです。意味や理由を知ると今までとは違った視点を持てます。
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2:K.K.P.の名言
K.K.P.(小林賢太郎プロデュース公演)はラーメンズやポツネンとは異なり、1舞台で1つのストーリーが展開していきます。脚本・演出を小林賢太郎が手がけています(小林賢太郎が出演しない作品もあります)。10作品あるKKPの中で『TAKEOFF〜ライト三兄弟』、『ロールシャッハ』、『振り子とチーズケーキ』、『ノケモノノケモノ』の4作品はYoutubeチャンネル「小林賢太郎のしごと」のプレイリスト「小林賢太郎演劇作品」にまとめられています。
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『Sweet7』
あらすじ:ヒロミが経営する洋菓子店「七日堂」は、ライバル店「ル・パティシエ鮫島」の影響で経営の危機に陥っていた。臨時休業1週間で起死回生をはかる。が、従業員はケーキ以外は作れる蛇崩、ケーキを作ったことがない肉体派の荒井、まじめだが地味なケーキしか作れない毛利という3人のパティシエだった。
つぼコメント:ケーキ屋の厨房しか出てこないのにこんなに面白いなんて。1日目から始まり、7日目まであります。疲れた時に見ると元気が出る舞台です。
デザインをやっていると「登場感を出したい」や「目立たせて」、「奇抜なの出せないの?」と言ってくる人が非常に多いと感じます。でも、買う側の立場になると「もっと普通のものが欲しい」となることがほとんど。普通を恐れる人が非常に多い中で、普通のモノを普通に作れるって本当にすごい。
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『PAPER RUNNER』
あらすじ:漫画雑誌コミックハポン編集部に作品の持ち込みにやって来た漫画家志望の青年オマタは、そこで個性あふれる編集者たちと出会う。そしてそんな編集者たちは、締め切り直前に人気作家が海外逃亡したことを知る。残されたのは大混乱に陥った編集部と空白の12ページだった。
つぼコメント:人数が多くワイワイ感が楽しい舞台です。小林賢太郎本人も漫画の連載をしていたのでそこから着想を得ているかも。漫画や出版関係の方は更に面白いかもしれません。
クレーマーや理不尽なこと言ってくる人って一定数います。そういった人の意見をすべて取り入れても良くなるとは限りません。でも、楽しもうとしていたり、丁寧に使おうとしてもうまくかない人の意見というのは聞いた方が良い。この意見の重さの違いはとても大切な気がします。
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『LENS』
あらすじ:大正時代末期、帝都東京の本郷帝都図書館で起こった奇妙な書籍盗難事件。図書館職員と所轄署巡査、本庁から派遣された警部、人力車の車夫、そして推理作家志望の天城茎太郎が謎解きを始めていく。犯人は誰なのか。
つぼコメント:大好きな舞台です。ベースのストーリーはサスペンス。主人公、天城茎太郎の推理力は大正のシャーロック・ホームズと言っても差し支えないほど。『Sweet7』や『PAPER RUNNER』と同様にDVDを買うか借りるかするしか観る方法がないのが残念。
優れている部分というのはその人や会社にとって当たり前になってしまっているので、気づきにくいものです。でも周りの人から見ると凄い!と感じることが多い。自己分析もブランディングも客観的な人の意見を参考にした方が良いですね。
最近の広告やデザインは説明しすぎだと感じます。説明が不要というわけではありませんが、「良さを説明する」よりも「良さを感じさせる」方が、魅力は圧倒的に伝わるのです。
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『TAKEOFF〜ライト三兄弟〜』
あらすじ:自転車旅をしている青年アビルはビルの屋上で、飛行機マニアのシノダ、大工オリベに出会う。その後、オリベの世話になったアビルは、大学の解体現場の仕事を手伝うことに。そこで「とんでもないもの」を発見する。
つぼコメント:この作品は何度観たか分からないほど観ました。ストーリーが面白いだけではなく、ものづくりをしている人なら熱くなれる素敵な舞台です。YouTubeで公開されているので、ぜひ見て欲しい1本です。
良いプロダクトに良くないグラフィックを施してしまったり使い方を間違えてしまうと、良いプロダクトを活かせないどころか、美しく見えなくなってしまいます。そういう意味ではデザインの世界では「2 + 2 = 10」になることもあれば「10 + 1 = −10」になってしまうこともあるのです。写真の上に文字を載せるときも同じです。だから、仕上げにもとても気を使います。
暗記は難しいですが、暗記よりも自分の意見を持つことの方が難しい。自分で動くことは更に難しいです。小林賢太郎さん自身が「見つけて来たものを並べることは僕はアートじゃないと思うし。表現を仕事にする以上は自分の中を通して出されたものが、みんなにお金を払って買ってもらうものっていうレベルまでは磨き上げないと、成立してないと思うから。」と話すように、やはり丸暗記のような自分の中をしっかり通さないものでは買ってもらえるレベルまで行かないんでしょうね。友人の売れっ子のアーティストも、さまざまな本を読んで、それを自分のコンセプトというフィルターに通してアートに落とし込んでいます。考え続けて手を動かし続けなければ、と実感します。
胸熱の台詞。大失敗するかもしれない。でも、失敗してない人はチャレンジすらしていない人かもしれません。一緒に熱くなれる人がいたなら、始める理由はなんでも良いのかもしれません。
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『ロールシャッハ』
あらすじ:その国は、国土を広げるために島から島へと開拓を続け、ついには「世界の果て」と呼ばれる大きな壁にぶつかった。壁の向こうを目指すため、見た目も性格も全く異なる4人の男が招集される。訓練をかさねるうちに彼らは、この作戦に裏があることに気がつく……。
つぼコメント:『TAKEOFF〜ライト三兄弟〜』に出演した3人に、竹井亮介さんが加わった4人の舞台。コンプレックスを持った4人が自分と向き合うお話です。最後は胸熱!
「なければ作る」というのは私が大切にしていることです。現状に満足しているとなかなかクリエイティブなものを生み出す思考にはなりにくいものです。限られた条件で「どう工夫するか」や「どう楽をするか」という思考がクリエイティブの根源のような気がします。
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『振り子とチーズケーキ』
あらすじ:とある図書館で働く男の夢は、ジュール・ヴェルヌの小説のような冒険に出ること。しかし、そんな絵空事が起こるわけないと思いつつ、自宅と図書館を往復する日々を送っていた。ある日、男が図書館のベンチで休憩していると、花柄のノートが置かれているのに気が付く。
つぼコメント:壮大なお話というよりも日常のお話です。2人舞台。視点の違いについて考えさせられます。
誰も間違えていないのに、視点の違いによって意見が食い違ったり言い争いになることありますよね。ロールシャッハにも「これで分かったろ。正義の逆は悪じゃない。正義の逆は、もう一方の正義だ」という台詞があります。他人である相手がどのような視点なのかを知るのは難しいですが、それを理解できたら意見の食い違いや争いも減るかもしれませんね。
クリエイティブな仕事にも視点を変えることは大切です。みんなと同じようにしか見られていないと、人を驚かせるような仕事はできません。
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いかがでしたでしょうか。『ラーメンズ』、『K.K.P.』以外にも『ポツネン』、『カジャラ』など幅広いコントがありますし、紹介した台詞以外にも名言がたくさんあるので、ぜひ他の作品も観てみてください。note「ラーメンズデザイン論」も読んでみてくださいね。ではー。
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SPOT DESIGN 坪田将知
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