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バレーボールロボット

人間とバレーボールをするロボット、バレーボールの練習を助ける機械、バレーボールロボット技術の発展によって可能になることについて紹介します。

バレーボールのフライングレシーブを行うヒト型ロボットのアクチュエータを開発したことは、以前紹介しました。

人間とバレーボールをするロボット

東芝は1998年に人間とビーチバレーのラリーをするロボットを開発しています。

家庭や病院で作業をするお手伝いさんロボットや介護ロボットのように,人と共存するロボットに必要な機能(音声による指示で動くためのタスクプラニング,作業対象物がどこにあっても作業ができるためのビジュアルフィードバック,人や物と接触して動作するためのコンプラインアス制御など)を盛り込んで,人とビーチボールをするロボットシステムを構築した。
「赤いボールを取れ」と音声で作業を指示すると,音声認識し,作業をするためのアーム移動命令を作成してボールを拾い,ボールの3次元位置から飛行曲線を推定して,推定打点に移動して,人とビーチボールを打ち合う。この時,ステレオカメラにより1/60秒毎にボールの位置を計測しながら,ビジュアルフィードバックでアームを制御している。
また,アームをコンプランス制御して,人と柔らかく握手する。
(以下リンクより引用)

競技のバレーボールよりはボールも遅く、足もなく、スパイクもブロックもレシーブもサーブもしませんが、20年以上前に開発された人間と打ち合う世界初のバレーボールロボットです。

バレーボールの練習を助ける機械とロボット

バレーボールの練習に使う機械が開発されています。私は練習で使っているチームを直接見たことはありませんが、チームの事情によっては大いに役に立ちそうです。

ピッチングマシンの要領で駆動するもの。SPORTSATTACK 社製。

Skill Attack Volleyball Training Machine。

Attack Volleyball Machine。

SIBOASI 社製。球出し機。

アタック練習用。AcuSpike。

VR技術を用いたレシーブ練習装置も開発されています。

② HEC訓練システム
HECとは「目で見て素早く反応する能力」ですが,特に今回はスパイクレシーブに重要である 「高速で近づいてくる物体に対して素早く身体を動かして反応する能力」をトレーニングすることを目的としました. しかし,実際の技能においてはただ素早く反応するだけではなく,「正しいフォーム」を作って反応することが必要であり, スパイクレシーブにおいては「肘を伸ばして腕の面を作ること」,「腕の面をボールの入射角と反射角から正しい向きに向けること」という二点が 一般的には重要です.そして,それらをトレーニングするためのシステムを開発しました(図2). このシステムはHMD部,マイコン部,レシーブボード部の三つから構成され,慣性センサが内蔵されたレシーブボードを使ってVR内でレシーブを行います. そしてレシーブ動作終了後に表示される自身のレシーブフォームに関する視覚バイオフィードバック(BF)(図3)を得ることができるため, より効率的にフォームの修正を行うことができると考えられます.
(以下リンクより引用)

バレーボールのブロックをするロボット。

本研究ではバレーボールに着目し,運動技能向上のための新しいトレーニングシステムを提案する.バレーボールの試合において,勝利するための最も大きな要因であるアタック効果率向上のためには,被ブロック率を抑制し,攻撃力を上げることが必要不可欠である.そのためブロックの高さを十分に有し,アタックのコースを複数人で限定させる戦略的・組織的でより実践に近いブロック形態を提示し,アタック練習の内容を充実させるトレーニング用具が必要とされている.そこで本研究では上記を満たし,人間のブロッカー,特に世界のトッププレイヤーのブロック動作を模擬するロボットを提案する.
(以下リンクより引用)

トレーナーが入力したブロック動作を、ロボットはタイミングを図って実行するようです。

野球のバッティング練習でピッチングマシンに投げさせるように、機械にサーブやトスやアタックの球出しをさせて、練習の効率を高めることができます。アタック練習に自分で動くブロックマシンがあるのも便利でしょう。VR技術を使って、技術を早く習得することも可能となっています。

今後期待されること

人間が反復練習をするのを助ける機械が開発されたことを紹介しました。バレーボールの練習は、反復練習に加えて、味方や相手の状況を認識して判断する複合練習があります。

スポーツの分野では前者で鍛える技術をクローズドスキル、後者をオープンスキルと呼ぶようです。

田中雅人. (2003). ボールゲームに求められる認知スキル.
Poulton, E. C. (1957). On prediction in skilled movements. Psychological bulletin, 54(6), 467.

ロボットが人間の練習相手のように、相手の動きを認識し、動きを読み、意図を察して運動し、駆け引きできれば、人間の状況判断、オープンスキルを鍛える練習を助ける相手になると考えます。

今のところ、練習の質はコーチやチームメイトに恵まれるかどうかに左右されます。しかし、ロボットは同じものを沢山作れるので、そのようなロボットを実現できれば、世界中あらゆる選手がオープンスキルを鍛えられます。

また、そのようなロボットは、人間を見て意図を察する察しの良い気の利くロボットです。なので、そこで培われたロボット技術は、仕事の相手や生活を共にするパートナーとしての、優れたロボットに応用できるでしょう。

そのような駆け引きできるスポーツロボットの実現に向けて、私は研究を進めています。

(2019/01/29 追記)状況判断の重要性


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