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鍛えないという鍛え方


お母さんが車を持ち上げた。

赤子を乗せたベビーカーが車の下敷きになってしまった時、お母さんは我を忘れてなんと車を持ち上げてしまったそうです。いわゆる火事場の馬鹿力。


人間の身体は、能力の限界値一杯までは使えないようにリミッターがかかっているそうです。本当はもっと力を出せるんだけど、出してしまうと身体が壊れてしまうかもしれない。だから身体を守るために、普段は限界まで力が出ないようになっている。

身体にはそういう余白があります。


身体を鍛えていくと、この余白が減っていく。限界点まで達しないように、と作られた余白を埋めてしまいます。そうすることによって、出せる力は上がっていく。でも、鍛えても鍛えても限界点は変わりません。

限界点が上がらないまま、余白だけが埋められていく。そして出せる力が限界点に近づき、いよいよ余白がなくなるという時、身体は悲鳴をあげます。

もう無理です。


鍛えるというのは、私たちが持っている余白を埋めるということです。

ちなみに冒頭のお母さん。車を持ち上げた後に、複雑骨折していたことがわかって入院されたそうです。


では、限界点を上げるのにはどうしたらいいのでしょうか。

それは、力を入れないこと。


限界点は、身体の構造を変えることで上がっていきます。ファミリーカーでは、どんなにアクセルを踏んでもサーキットでは置いてきぼり。だからスポーツカーに乗り換える。身体の構造を変えるというのは、そんな感じです。

例えば重い荷物を持つ時、私たちは腕に力を入れてグイッと持ち上げます。でもそれを、腕に力を入れずに身体全体でスッと持ち上げることもできる。筋肉ではなく、身体全体で重さを受け止める。力を入れないと、身体は構造を変えて対応してくれます。


おっ、筋肉に力を入れないつもりだぞ。これはこっちでなんとかしなくちゃいけない。そうやって身体は構造を変化させてくれます。余白を残したまま限界点を上げてくれる。



ようやく暑さも和らぎ秋本番。スポーツの秋。

身体、うずいてきませんか?



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