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拷問投票

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SF長編小説。二十年後の日本、凶悪犯への厳罰化を求める世論に流され、一部の犯罪者を合法的に拷問することができる拷問投票制度が存在していた。残虐なレイプ殺人事件で娘を失った高橋実は…
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2024年5月の記事一覧

◯拷問投票274【第四章 〜反対と賛成〜】

 まだ序の口かもしれない。佐藤には、もっと恐れていることがあった。少し躊躇いながらも読み…

山本清流
2か月前
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◯拷問投票275【第四章 〜反対と賛成〜】

 映画のセットのような繁華街を通ったときには、いくつもの人型ロボットの残骸が道端に放置さ…

山本清流
2か月前
1

◯拷問投票276【第四章 〜反対と賛成〜】

 また玄関まで戻ってきて、佐藤は、ふたたび固まった。なにがあったのか、おぼろげながら、わ…

山本清流
2か月前
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◯拷問投票277【第四章 〜反対と賛成〜】

      ※  あの日、人気のない工場地帯で、ふたりは出会った。悲惨な出会い方だった。…

山本清流
2か月前

◯拷問投票278【第四章 〜反対と賛成〜】

 毎日、いろんな人が首を吊って死んでいった。ネット上では一瞬のうちに拷問への賛成票が集ま…

山本清流
2か月前

◯拷問投票279【第四章 〜反対と賛成〜】

 ぱらぱらと人がいるだけの、小さな駅だった。プラットホームへと向かうエスカレーターは故障…

山本清流
2か月前
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◯拷問投票280【第四章 〜反対と賛成〜】

 そうと確信したとき、佐藤は、咄嗟に目を逸らした。気遣いとか配慮とかではなく、後ろめたさだった。冴えない人生の気晴らしのために彼女を何度、利用したことか。それだけならまだしも、勝手に心の中の女神にまで仕立て上げてしまっている。合わせる顔など、どこにもない。  あっちだって、嫌なことを思い出すことになる。  佐藤は、止めていた足を進め、彼女の前を通り過ぎようとした。もう座りたい欲求はどこかに消えていた。溜まっていた疲労もなくなった。好きな人の前で黙り込むことしかできないような惨

◯拷問投票281【第四章 〜反対と賛成〜】

「なにか?」  無言に耐えられなくなって、佐藤は、白々しく言った。すると、彼女は、目を丸…

山本清流
2か月前

◯拷問投票282【第四章 〜反対と賛成〜】

 それからデートを重ねた。  理子は明るい性格で、しかも頭がいい。読書が趣味で、いろんな…

山本清流
2か月前
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◯拷問投票283【第四章 〜反対と賛成〜】

 佐藤がバイトから帰ってきた夕方、自宅アパート前の狭いコンクリートの車道に、うつ伏せで倒…

山本清流
2か月前

◯拷問投票284【第四章 〜反対と賛成〜】

 もっと調べてみると、人型ロボットへの脳移植を不法に行っている団体があることがわかった。…

山本清流
2か月前

◯拷問投票285【第四章 〜反対と賛成〜】

      ※  また理子が死んだ。  佐藤は、もはや自分がなにを感じているのかもわから…

山本清流
2か月前
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◯拷問投票286【第四章 〜反対と賛成〜】

       ※  拷問の発動条件が揃わなかったことがわかった昨晩から、長瀬は、高橋実と…

山本清流
2か月前

◯拷問投票287【第四章 〜反対と賛成〜】

 薄い緑色のカーテンを背に映っている男の顔を見て、長瀬は驚いた。昨日の朝、タクシーで送り届けてやった裁判員――佐藤龍である。タクシーの中では優柔不断な印象を受けたが、人が変わったように決意に満ちた顔をしている。  ディスプレイの中の佐藤龍は、ゆっくりと重々しく言葉を並べていった。 『俺は反対票を投じました。正直なところ、そうすれば後悔しないで済むだろうという臆病な気持ちもありました。しかし、投票の夜が明け、いま、俺は反対するということの重さを感じています。拷問に反対するという