◯拷問投票287【第四章 〜反対と賛成〜】
薄い緑色のカーテンを背に映っている男の顔を見て、長瀬は驚いた。昨日の朝、タクシーで送り届けてやった裁判員――佐藤龍である。タクシーの中では優柔不断な印象を受けたが、人が変わったように決意に満ちた顔をしている。
ディスプレイの中の佐藤龍は、ゆっくりと重々しく言葉を並べていった。
『俺は反対票を投じました。正直なところ、そうすれば後悔しないで済むだろうという臆病な気持ちもありました。しかし、投票の夜が明け、いま、俺は反対するということの重さを感じています。拷問に反対するという