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拷問投票

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SF長編小説。二十年後の日本、凶悪犯への厳罰化を求める世論に流され、一部の犯罪者を合法的に拷問することができる拷問投票制度が存在していた。残虐なレイプ殺人事件で娘を失った高橋実は…
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2023年12月の記事一覧

◯拷問投票122【第二章 〜重罪と極刑〜】

   ※ 「ようやく審理が終わりました。あとは、裁判官三人と裁判員たち六人で構成された合…

山本清流
7か月前

◯拷問投票123【第二章 〜重罪と極刑〜】

 国民を味方につけようと思うとき、国民に強い影響を与えている学者たちも味方にしなければな…

山本清流
7か月前

◯拷問投票124【第二章 〜重罪と極刑〜】

   ※ 「評議というのは、賛成と反対に分かれた議論というよりは、どちらかといえば合意へ…

山本清流
7か月前

◯拷問投票125【第二章 〜重罪と極刑〜】

 第一の事件が起こるまでの経緯については、弁護側がそれほど多くを示していない。わかってい…

山本清流
7か月前

◯拷問投票126【第二章 〜重罪と極刑〜】

 被告人は、事件当日になって突然、人型ロボットを襲おうという犯意を形成したと述べているが…

山本清流
7か月前

◯拷問投票127【第二章 〜重罪と極刑〜】

「ワンボックスカーで住宅街を進む中、夜遅くに、被告人は被害女性を発見しました。このときは…

山本清流
7か月前

◯拷問投票128【第二章 〜重罪と極刑〜】

 すると、その躊躇を読み取ったかのように、田中裁判長が「それで?」と促してきた。これはありがたい。なんだか恥ずかしいが、せっかく用意してくれた機会を利用しない手はなかった。 「少し話は進んでしまうかもしれませんが、第一の事件では、被害者の後頭部をいきなりハンマーで殴りかかっています。偶然にも、それほど騒がれずに済みましたが、ふつう、急に打撃をされたら騒ぐと思うんです。それは被告人も考えれたはずですから、やっぱり、第二の事件みたいに、ナイフを首に突き付けたほうが合理的なんじゃな

◯拷問投票129【第二章 〜重罪と極刑〜】

「だって、街中で歩いている人型のものの九割以上は、本物の人間です。しかも、人型ロボットの…

山本清流
7か月前
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◯拷問投票130【第二章 〜重罪と極刑〜】

 事実の錯誤というのは、主観の中で誤った事実を認識することである。公園でヒーローごっこを…

山本清流
6か月前
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◯拷問投票131【第二章 〜重罪と極刑〜】

 第二の事件については、被害女性の同意の有無について詳細に検討するために、監視カメラの記…

山本清流
6か月前

◯拷問投票132【第二章 〜重罪と極刑〜】

 ……ややこしい。佐藤は、投げやりにならないように思考を進めた。  殺してほしいとは思っ…

山本清流
6か月前
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◯拷問投票133【第二章 〜重罪と極刑〜】

 その中、具体的な手がかりもないではなかった。首を絞められているときに被害者が激しく暴れ…

山本清流
6か月前
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◯拷問投票134【第二章 〜重罪と極刑〜】

 そのほか、重要なところには余すところなく、議論の手を伸ばした。  弁護側が提出してきた…

山本清流
6か月前

◯拷問投票135【第二章 〜重罪と極刑〜】

 結論としては、同意の存在を錯誤していたのではないかという疑いはほとんどない、ということになった。この話題は、それ以上深く吟味されることもなく、大きな円卓の上から消え去った。 その次に議論の対象となったのは、同情して殺したとする被告人の供述が嘘だとするなら、本当の動機はなにか、だった。  種々の証拠からして、第二の事件においては、被害女性を殺害したことについては計画性がなかったことが確認できる。  では、第二の事件での殺害はなぜ引き起こされたのか。  この動機については、殺害