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◯拷問投票126【第二章 〜重罪と極刑〜】

 被告人は、事件当日になって突然、人型ロボットを襲おうという犯意を形成したと述べているが、それにしては準備が整いすぎている。
 女性を連行するには都合のいい大きさの車、レイプの音をかき消す防音の設備、鮮明な記録ができる監視カメラ、抵抗するかもしれない女性を連れ込むのには場所的にメリットがある一階の隅の部屋。
 犯行に用いられた小型ハンマーをホームセンターで購入したのも、事件発生の三か月以上前である。DIYをしたくなって衝動買いした、と述べているが、それが嘘である可能性も否定できない。
 ぼんやりとした計画が頭の中にあり、犯行よりずっと前から着々と準備を進めていた。意識的であれ、無意識的であれ、その可能性は十分にありそうである。
 問題となるのは、そのような準備があったことを前提としても、人型ロボットを襲うための準備だったとして説明することもできなくはないことだ。
 佐藤は、ほかに口を開こうとする人がいないことを確認してから、「あのー」と慎重に口を開いた。
「いまの三番さんの考えでいきますと、被告人には人型ロボットを襲いたいという気持ちが心のどこかにあり、犯行よりずっと前から、人型ロボットを襲うための準備をしていたということでしょうか」
「対象は人間でもありえたと思います」
 三番は、丁寧に説明を始めた。
「もともと人間を襲うつもりでいたが、いざ犯行に及ぼうとしたときに、さすがに人間を相手にするのはまずいと思いなおして、人型ロボットを襲うことにした、というストーリーを考えることもできますので」
 まさに、そのとおりである。ずいぶんと前から計画があったとして、しかも、その計画が人間をターゲットにしたものであったとしても、犯行当時の被告人の被害者に対する認識が確定するわけではない。
 つまり、争点からして重要な問題ではなかった。
 検察側からも、犯行計画の始まった具体的な時期を特定するような立証活動は行われていない。
 事件当日に犯行計画を思い立ったときに、たまたま被告人の周りに犯行に役立つアイテムが揃っていただけだと言っても不自然ではなかった。
 とりあえず、犯行当日に被告人がワンボックスカーで住宅街に出たときには、被告人の頭の中に、人型ロボットか、あるいは、生身の女性か、どちらかをレイプする計画があったことは確定できる。