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◯拷問投票125【第二章 〜重罪と極刑〜】

 第一の事件が起こるまでの経緯については、弁護側がそれほど多くを示していない。わかっていることとしては、被告人は小さいころから異常に性欲が強く、それを解消する機会に恵まれていたとは言えないことである。事件が起こることになった直接的な原因は明示されていない。
 ただ、検察側の立証活動の中で、事件を起こす直前に会社の上司から被告人がオンライン上で𠮟責を受けていることが確認されている。その上司は、ショートヘアの小顔の女性であり、被告人のタイプと一致している。
 無理に動機を導こうとするなら、そのときの屈辱が女性への支配願望という形で性欲を膨らませた、とも言えるかもしれない。とはいえ、だから事件を起こしたとするには飛躍があるので、なんとも言えない感じである。
 犯行当日、被告人は、いつもどおりに在宅ワークを終えると、その夜には所有するワンボックスカーで住宅街へ出かけた。
 被告人の供述によれば、在宅ワークを終えたあとに急激に性欲が増していって、誰かとエッチしたいと思うようになったが、相手がおらず、また見ず知らずの人をレイプするのは重罪なので、だったら人型ロボットをレイプすればいい、と考えた。街中を歩いている人型ロボットを捕らえ、ワンボックスカーで自宅まで連行して、自宅でレイプしよう、というわけである。
 このときには、対象は定まっていないものの、すでに計画的な犯意が形成されていたことになる。
 計画性というポイントにおいて興味深いコメントをしたのは、ほうれい線の深い年配男性、三番だった。
「どうして、ひとりしかいないのに、ワンボックスカーを購入したのか、購入したときから女性を連行するつもりだったのか、という点ですけど、補充尋問のときに訊きますと、カーセックスに憧れていた、という話でした。自宅の一室が防音になっていたり、その部屋に監視カメラが取り付けられたりしてるのも、それらは事件よりずっと前からのことですが、この点についても、いつか女性を招いて防音の室内で存分にエッチをして、その映像をあとから確認したかった、という話でした」
 そのように被告人が答えていたことは、佐藤も、はっきりと記憶している。
「ですがね、だとすると、矛盾しているような気がするんです。本当に被告人が言っているとおりなら、それだけ万全に準備しているわけだから、アクティブに女性を誘ったりするはずです。しかし、被告人は、自ら進んで誰かと交際しようとか、セックスパートナーをつくろうとか、そういう活動をしていませんでした。引っ込み思案の性格でもないから、難題ではなかったはずです。そう考えますと、なんだか、ずっとずっと昔から、ぼんやりとではあるけど、いつか女性を捕らえて、ワンボックスカーで連行して、自宅に連れ込んでレイプして、っていうのを、イメージしていたのではないか、という感じが……。マンションの駐車場近くの一階の隅の部屋を借りていたのも、そういう漠然とした計画の一環だったのではないか、というような気がすると言いますか……」
 なるほど、というコメントである。