マガジンのカバー画像

読書感想文

25
読書感想文です
運営しているクリエイター

記事一覧

<責任>の生成─中動態と当事者研究

<責任>の生成─中動態と当事者研究 國分功一郎・熊谷晋一郎 を読んだ。

読み終わったのが結構昔なので、メモを眺めながら思い出してます。以下、本の内容をなんとなく自分なりにまとめていたものなので、これがそのまんま書かれていたとは限らないです。頼むよ〜

本の内容まとめメモ

・責任(レスポンシビリティ)は応答(レスポンス)と結びついている。自分なりの仕方で応答する。
・障害というものはわたしの皮膚

もっとみる

死者の奢り・飼育

大江健三郎の『死者の奢り・飼育』を読んだ。作品集で、タイトルの作品の他に『他人の足』、『人間の羊』、『不意の啞』、『戦いの今日』がある。私は特に『他人の足』、『飼育』、『不意の啞』がお気に入り。なかなか良い読書体験ができた。

まず、私は大江健三郎に対してどう思っているかというと、初めて読んだのは『人生の習慣』で作風については全く知らず。人類讃歌で光属性の作家なんじゃないかという印象。平和主義。反

もっとみる

美術手帖 BLACK ART

美術手帖 4月号 vol.75、「ブラック・アート」とは何か? を読んだよ。

何かを考えて、ひとまずこれで、という回答を出すことすらまだ難しく、でも言語化して感想文は書いたほうがいいと思ったので読書感想文として書くよ

普通に良いなと思える絵を描く画家と出会えて、また今まで気にも留めていなかった“キュレーター”“美術史”なんかにも真面目に考える必要があるなと思った。私って何も知らないらしいわ。つ

もっとみる

土葬の村

高橋繁行『土葬の村』を読んだ。
タイトルは土葬だが、広く葬式について触れている。火葬はもちろん野焼きや風葬、遺棄葬これからの葬式について、これまでの葬い方を振り返ることで思うところが出てくる。

私の身近な土葬は、母の実家である。
半世紀前には母の曽祖父が土葬になったらしい。それより以前もずっと土葬を行っていた。
高速道路を通すために墓が移動になった際、掘り起こして骨かもしれないもの(かもしれない

もっとみる

[新訳] 不安という概念

セーレン・キルケゴール『[新訳] 不安の概念』村上恭一訳 を読んだ。

少しでも不安について理解できたらと思って読んだ。
引用したのは比較的有名な部分である。こればっかりは原文が気になるところである。
思った以上にキリスト教の話だった。解説部分でも不安についてというよりもキルケゴールの家族の境遇やキリスト者であったことについての話が多いので、まあそういうことなのだろうと思う。
そして言い方が回りく

もっとみる

海をあげる

上間陽子『海をあげる』を読んだ。

なんとなくタイトルで気になっていて、本屋で立ち読みして買った。

宮地尚子『傷を愛せるか』を読んだときは、穏やかな漣のうねりがわかる沖合、日差しが強いというわけでもない青空、といった情景が浮かんだ。
今回は、沖縄と聞いて思い浮かぶあの青々とした綺麗な海、
に土砂が投入されて濁る情景が、その波飛沫が足元にやってくるような思いである。

沖縄について、正直何も知らな

もっとみる

母という呪縛 娘という牢獄

斉藤彩『母という呪縛 娘という牢獄』を読んだ。
以前ニュースにもなった、あの事件の本である。

教育ママと聞くと、作品の題材になったり恨みつらみだったり無理解な母親を想像する。
子供の責任は母親の教育の責任とされること、まだまだ子育ては母親がするものと思われている風潮と表裏一体ではある。

私の母親は過干渉ではあるが、勉強については何も言われなかった。学歴信仰みたいなものも特になかったように思う。

もっとみる

李陵・山月記 弟子・名人伝

中島敦の『李陵・山月記 弟子・名人伝』を読んだ。李陵、弟子、名人伝、山月記、悟浄出世と悟浄歎異がまとめられている。

読もうと思ったのは中島敦が名文を書くと有名なこと、好きな物書きのお姉さんが中島敦を好きだと言って読んでいたから。山月記を高校の頃に読んだな程度の気持ちで読み始め、最初は漢文が強くて読めるかな~と思っていたが話は面白いし読みやすくてスイスイ進んだ。

私はそもそも『山月記』を読んだ高

もっとみる

女二人のニューギニア

有吉佐和子の『女二人のニューギニア』を読んだ。

小説でもなく、エッセイというわけでもない、旅行記というか、とにかく『女二人のニューギニア』。

いや~めちゃくちゃ面白かった。面白くて、買って帰って、風呂の中でも読んで、一瞬で読み終わった。

買った帰り道で雪に降られて、嬉しかったけど布のバッグに入れてたからまあまあヨレヨレになった。のに、風呂の中でも読んだからもうゆわんゆわんに波打っている。こう

もっとみる

とるにたらないものもの

江國香織の『とるにたらないものもの』を読んだ。エッセイ集。

タイトル通り、何かしらの”もの”について江國香織が短文を書いて、それをまとめられている。ルラメイとかいう蝶の標本から砂糖、日がながくなるということ、まで”ものもの”に含まれているので、物質というよりはとにかく名詞、体現ということらしいな という気持ち

ふむふむと読みたい部分もあれば、「だ〜!?!?」という気持ちになってパパパ〜と読み進

もっとみる

二十歳の原点

高野悦子の『二十歳の原点』を読みました。
日記ですが、リアルな学生運動の熱と、一人考える人間の肉体が浮かび上がって、生々しいです。

最近、学生運動なんてなかなか聞きません。両親が大学生の頃にはもうとっくに下火なのだから当然ではあるのですが。
フォロワーが全学連の一員なのでその話をたまに聞くくらいです。
フォロワーこと彼、彼はたいへん良いです。迷惑だのなんだと言われようが彼の中には身体に運動に参加

もっとみる

ゴシックハート

ゴシックハートを読んだ。元々ちょっと気になってて、弾丸奈良旅行で解散してから本屋徘徊してたら見つけた。いい感じの本屋だったので絶対何か買いたくて、一度退店したのにもう一度入店して買った。目次とか、章の初めが黒いページに白文字なのもなんかええやんと思った。正直、そのくらいの気持ちで買ったんだけど、

ここで買ってよかった〜!と思った。何を隠そう、私はパンクが好きなので……
文通相手とちょうど話してい

もっとみる

傷を愛せるか 増補強版

読んだ。
以前よりなんとなーくタイトルを聞いていて、なんとなく作者の方を調べたらトラウマだったり色々が出てきて、なんだか精神的なえぐめの本なのだろうかと思っていたが、別にそうでもなく。良くも悪くもめちゃくちゃ普通。普通の人間の、これっていいよね。これ見てこう思ったんだよね。が、淡々と続く。

その淡々と続く風景の中に、傷があるのを感じる。筆者の職業柄、日常的に無意識に傷を意識しているのかもしれない

もっとみる

7/3 表現する とは

谷川俊太郎の『ひとり暮らし』を読み終えた。
これまで実家ぬるま湯暮らしだった私が、就職と大学卒業を機に来年4月からのひとり暮らしが決まっている。だからかどうして、こういうタイトルの本に惹かれてしまう。寺山修司の『家出のすすめ』を買った時と同じ動機。浅はかだけど純粋で可愛らしいところもあるやん自分。

まず文章が綺麗だし、綺麗な中で素朴さがあって、生活の実感を伴っている表現がばりうまいなあというのが

もっとみる