Souki Shintani(新谷 颯起)

Souki Shintani(新谷 颯起)

最近の記事

サポートロボットくん(ショートショート)

「こんにちは、ジョージ」 「こんにちは、アミさん。お、マルコ元気か?」ジョージはアミさんに連れられたダックスフントのマルコを撫でた。マルコはいつものように元気に吠え返した。 ジョージはマルコを見るたびに、小さい頃に飼っていたダックスフントのサクラを思い出す。 サクラは、甘えん坊でジョージが学校から帰って来るとすぐに玄関までやってきて飛び跳ねた。それがとても愛らしかった。ジョージはサクラのために、栄養のある食事を用意したり、毎朝一緒に散歩したり、可愛い洋服や首輪を買ってあげたり

    • 誰もが幸福な世界(ショートショート)

      【世界】 AIやロボットが発達したことで、人間から労働が取り除かれた。さらに、ロボットの稼いだ給与を国民に分配することで、国民は生きているだけで一定額の収入が得られるようになった。時間とお金が手に入る夢の時代が幕を開けた。このような体制は一朝一夕では成し得ない。総理の努力は国民から讃えられた。 それから半年が経過し、総理は国民のレポートを心待ちにしていた。 「ん、なぜ幸福度が上がっていないのだ」 「はい···」 「このプロジェクトには、私の人生を注ぎ込んだ。多くの人を巻き込ん

      • 検査の時間(ショートショート)

        男はロボットの前に座り、電源を入れた。 先月までは、データ分析など数値を扱う業務を主としていた。派手な仕事ではなかったが、数値という絶対的に信頼できる言語を使う分析を行い、改善されていく様を見るのが、私は好きだった。しかし、今月から「検査」という業務を担当することになった。昨今の人員削減の影響で異動となったのだ。私の立場では上の言うことを聞くしかない。 検査とは、ロボットと人間で対話を行い、欠陥が無いか確認する仕事だ。内向的な私にとって、対話を伴うこの仕事は気が重たかったが、

        • 映画の日

          この世には、明らかに金額以上の価値を持つものがあります。 その一つが、映画館で観る映画です。 映画というのは大の大人が何百人も集まり、何年も時間をかけて、何億円ものお金を使い、ああでもないこうでもないと言い合って、2,3時間の映像作品を作る。それを数千円で観れてしまう。正気の沙汰とは思えません。。。 私は毎週火曜日を『映画の日』と勝手に称してスケジュールを入れています。 わざわざ映画館で観なくても、少し経てばサブスクで観れるじゃないかという意見もあると思いますが、映画館

        サポートロボットくん(ショートショート)

          何をしても上手く行かない日

          この世には『何をしても上手く行かない日』というのが確実に存在します。 いつも通りのことをしてるはずなのに、なぜか全ての行動にアクシデントが付きまとう。 良い1日にしようと、取り返そうとすればするほど、必ず裏目に出ます。 そして、苛立ち、焦り、虚しく、悲しく、私はなんでこんなことも出来ないんだと自己肯定感がぐっと下がります。 寝坊は出来ないからと、昨日は早めに就寝したはずなのに、何故かアラームが鳴らず(聞こえず?)寝坊をしてしまい、急いで必要なものをリュックに詰め込み、大き

          何をしても上手く行かない日

          自分の字を見て自分を知る

          気持ちよく1日をスタートするために、色々なものを試した結果、続いているものの一つがノートを書く習慣です。 朝一番に、ノートと向き合う。 ペンを手に取り、頭に浮かんだことを片っ端から書いていく。 嬉しかったこと、悲しかったこと、心配事、どうでもいいことなど、とにかく頭の中にあることを書き出す。 誰かに読ませることはないので、綺麗な文章や構成を心がける必要はありません。 そんな習慣を続けていると、ノートに書かれた自分の字を見て、自分の調子に気づけるようになります。 疲れてい

          自分の字を見て自分を知る

          第一印象が良くない

          高校二年生の頃、新谷君に話しかけたら「黙れブス」と言われそうで声をかけれなかったと言われたことがあります。当然私はそんな言葉を使ったことはありません。それに近い言葉を使ったこともありません。でもその子は、私の見た目からそんな発言をしてきそうだと判断し、話しかけられずにいたというのです。一体私はどんな顔で授業を受けていたのでしょうか。全く心当たりは無いのですが、そんな風に思わせてしまったことを深く反省しました。 つい最近も、「SNSの発信を見ると、ダンスも仕事もバリバリやって

          寝坊しないために

          朝八時、木漏れ日が差し込む遊歩道を歩くことは、実に心地がよい。肺に新鮮な空気が入り、身体や頭が徐々に目を覚まし、前向きに1日をスタートできます。 ただし、それは寝坊しなかった日に限る贅沢。寝坊してしまい、散歩に行けない日は、それはそれは深く後悔することになります。何も失っていないはずなのに、散歩に行けなかったというだけで、何か損をしたような気になります。この気持ちを繰り返さないために、 『寝坊しないためにはどうすべきか。』という人類の大命題に立ち向かうことになりました。

          彼に言わせれば「掛け算が少ないよ」ということになるのだろうか

          ずっと憧れだったルーブル美術館に行ってきました。そこで一番列を成している人気作品は「モナリザ」。 作者は言わずと知れたレオナルド・ダ・ヴィンチ。そんな彼は美術家でありながら、科学者でもある。さらには、数学・物理学・天文学・医学も学んでいる。それら複合的な視点から、この世に新しいアウトプットを生み出してきたとされています。 私のダンス人生を思い返すと、ストリートカルチャーに触れ、ダンスバトルやコンテストへの挑戦、映像配信でのダンス活動、最近では、コンテンポラリーの世界に足を踏

          彼に言わせれば「掛け算が少ないよ」ということになるのだろうか

          0か100かではない

          この世には『良い人』も『悪い人』も存在しません。ある人からしたら、その人は『良い人』かもしれないですが、別のある人からしたら、その人は『悪い人』のように映るかもしれません。いや、きっとどちらかに決め切ることはできないでしょう。 その人は『良い人』のような行動をとることもあれば、『悪い人』のような行動をとることもあると思うのです。それが全ての人間であり、ほとんどの事象に言えることだろうと思います。 ではなぜ人は『良い人』だと割り切りたくなるのでしょうか。それは、脳が楽をした

          老夫婦が営む青森の喫茶店

          仕事で地方へ行くというのは、一種の格好良さがあり、ロマンがあります。 地方へ来たら、なるべくチェーン店は避けたいところ。宿泊先の近くにあった小さな喫茶店に入ることにしました。 その喫茶店は老夫婦が営んでいて、店内には私一人。カウンターに座りコーヒーを注文して、ノートを広げました。マスターは私の作業の邪魔にならないよう、小声でコーヒーを置いてくれました。寒い道中で冷えきっていた私の身体に温かいコーヒーが染み入りました。ラジオの音が流れる店内。 「向かいの佐藤さんネットで重曹を

          老夫婦が営む青森の喫茶店

          ドバイへ行く理由

          10歳の頃、週末になると少しサイズの大きい自転車に乗って、隣町の大きなショッピングモールを目指すのが楽しみでした。何かを買うために行くのではなく、ただ行きたいから行く。見慣れない街の景色に高揚し、もっともっと新しい風景を見たいと、どんどんペダルを漕ぎました。 いつからか、純粋な欲求のままに行動することは、減ってしまったように思います。大人になると、その行動にはどのような目的があり、何を解決出来るのか、という問いが無意識のうちについて回ります。例えば『知識を得るために本を読む