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欠陥人間の僕(私)のハナシ②

※私小説です。


なんで皆、僕のことを『普通』というのだろう。

 

人一倍自分を出すのが苦手だった。注目されるのも苦手で、変にまばたきをしてしまい、高速だとバカにされた。

前に出たくないのに〇〇行けよといわれてなぜか前に出されたこともある。

バレンタインに罰ゲーム的ノリでチョコくれよと言われたこともある。当時の僕は不細工だったから完全に悪ふざけだったことはわかるし、告白されたことすらなかった。


今僕が手に入れた『普通』は、皆が当たり前に持っている普通という感覚を必死で覚えて頑張って頑張って得た普通だ。

誰にも理解されないししてもらえないけれど、僕は普通なんかじゃない。


訳のわからないミスをするしどんなに集中してどんなに何度も見直していても、忙しい日は散漫になってミスしてしまいがちだった。


母に「よくぼーっとすることがあるから、仕事中は注意しなよ」と言われた。

僕はぼーっとしてるつもりなんてない。けれどどんなに集中しても眠気に抗えず寝てしまうことも多々あった。


僕に悪げはない。毎日七時間は寝ていた。睡眠障害というほどでもない。


いっそ障害だったら良かったのに。


僕より出来の良い兄弟がいるから、知らずうちに比べて僕には無理だと思いこんでいた。TOEICで高得点を取れても上には上がいるし、英語を喋れるようになるには時間がかるし、英語を仕事にするのは大変だから無理だよと母や兄弟に言われたから無理だと思った。


簿記2級を持っていても一発で受かった兄弟と比べて3回も受けているし、〇〇は不器用だねと言われて育った。

ITの国家資格も、兄弟は仕事しながら難なく受かったのに僕は塾に行っても3回受けてもだめだった。社内には他にも受かってない先輩はいたし、僕だけじゃなかったのに、周りより劣っている気がして嫌だった。


同僚がみんな研修でのテストの点数が良くて、僕は勉強しても大した点数が取れなかった。


仕事を始めてから自尊心は減る一方。


学生時代は勉強一生懸命してそこそこ名の知れた大学に受かって、資格勉強もしていたのに、英語は話せないから駄目だと思っていたし、面接が全然通らないから経理も駄目と思った。


せっかくエンジニアになれたのに運用部署に誘われて行くことになった。僕がエンジニアになるのが怖かったから。それでも初日で後悔した。何で僕はやる前に諦めたのだろう。

あのとき辞めればよかったなって、ずっと思っている。



発達障害のことを知ったのはつい最近のことだ。


僕はそうなのだろうか。誰に言っても君は違うと言われる。僕と同じように引っ込み思案だった兄弟は発達障害と診断されたのに、僕は違うと言われる。


僕より異常に変なこだわりが強いし、家族に対してでさえも頑固でイライラすると口を閉ざすし、何考えてるかもわかりづらい。


だから僕は普通だと言われる。誰とでもそこそこ会話できて無難に接せられるから。


……だから何?


学生時代の友達とは全員疎遠で、誰かが学生時代の思い出話で盛り上がっていると僕だけ違う世界にいる気分になる。

女子トークで恋愛話をする友達はいなかったし、寝たふりをしていたし、盛り上がるほどの会話もあまりできなかった。

僕の友達は大抵大人しいタイプで僕もそうだったから、あんまり遊ぶこともなく目立たないように過ごしていたけれど、大抵馬鹿にされたり陰口を言われるのが日常だった。


イベントは全て苦手だった。僕だけ取り残してみんな楽しそうだったから。部活もただ苦しいだけだったけど、文化祭のときなどに、部活の発表でクラスにいなくて済んだのは良かったかもしれない。


ただ、僕が学校に通い続けられたのは、クラスに一人は僕よりも酷い扱いを受けている子がいたからだ。

僕はいじめっ子の仲間にはならなかったが、救いの手を差し伸べることもなかった。僕が手を差し伸べれば引きずり落とされるのが目に見えていたから。


一緒に帰ろうと言っていたクラスメートを、突き放して嫌がったら「可哀相」と言われたことがある。自分だって一緒に帰ったりしないくせに。


ただそれでも、明らかに異質な子は、障害があるかもしれないし、グレーゾーンな僕とは違うと思うと、今は羨ましく思える。


今の僕は、凡ミスが多くて内向的で集団が苦手な、ただの生きづらい人間。

自閉的かつ多動的な面を持ち合わせながらどちらでもなく、医師からもきっと君は違うと言われるタイプの人間。


それでも、発達障害の診断を受けたい。診断をされて楽になりたい。違っても良い。むしろ違うほうが良いかもしれない。


脳がおかしいわけでないなら、努力でどうにでもなるから。


だからせめて、テストを受けさせてほしい。脳をみてほしい。確かめてほしい。


僕には友達がいないから、家族しか信用できる相手がいない。

それでも、誰もそんな人間とは思わないのだろうか。普通の人間に見えるのだろうか。だとしたら凄いと思う。


だって、何となく変な子は話し方とか素振りでわかるものだから。もしわからないのなら、随分うまく擬態出来ているなと、我ながら感心してしまう。


……あーあ。そんなに上手く擬態できなくて良かったのに。頑張って勉強しても社会でなんの意味もないなら、なんで僕は勉強なんかしたんだろう。



一人でいたい、直接人の役に立ちたい。

人が怖い、人といたい。

ルーティン化された仕事がしたい、自分の裁量で仕事がしたい。

やりがいが欲しい、楽な仕事がやりたい。

残業したくない、残業してもいいから頑張りたい。

お金なんていらない、お金が欲しい。

臨機応変が苦手、イレギュラーにも動じなくなりたい。

働きたくない、働きたい。


一日中PCと向きあう仕事、人と関わらずに済む仕事が良い。

PCと向き合い続けるのは疲れる、直接人の役に立ちたい。


結局、どっちなの?と思う。


どんな仕事をするにしても、人と関わらないといけない。けれど度合いが違う。


たまたまテレビで見た仕事、文字デザイナーの仕事。みんな個々でPCと向き合い、場合によっては10年もかかるフォントのデザインをコツコツと作る。羨ましいと思った。個々でお昼を食べているのを見て、そういう働き方がうらやましくて仕方がない。


それなのに、私は人と関わる仕事をするかどうか迷っている。私には技術がないから。個人で仕事ができる人が羨ましいと思う。この気持ちを置いてけぼりにしてしまう。


自分がどうしたいのかわからない。仕事を選べる人が羨ましい。私が本当にやりたい仕事は何だろう。誰かの相談に乗りたいと思った、誰かを助けたいと思った。それでも、自分が病まない保証はない。


僕が一番わからない。自分がどうしたいのか、何をしたいのか。自分は可笑しいのか、可笑しくないのか。わからない。けれどお金をかけてでも、自分を知りたいのだ。


ありがとう、さようなら。


答えを出すのは、僕自身で、答えを出せるのも僕しかいない。


※こちらの続きとして書きました。久しぶりにこの記事にスキを頂いたので懐かしくなりました。ありがとうございます。


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