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短いおはなし

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原稿用紙10枚ほどのおはなしがメインです。長くなったら連載にします。 【短編小説】10枚〜100枚 【短め短編小説】3枚〜10枚 【脚本】10枚前後
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【短め短編小説】2057年、「月の耳」の旅 #シロクマ文芸部

【短め短編小説】2057年、「月の耳」の旅 #シロクマ文芸部

「月の耳」を訪れる宇宙の旅は世界中で人気を博している。2057年12月21日金曜日、午後2時48分、あと12分で月面行きの電磁シャトルバスがここ種子島の滑走路を飛び立つ。機長と副操縦士を含む6人のクルー、35人の乗客は、すでに離陸態勢を取り、その瞬間を待ちわびていた。そして機内と滑走路の映像は、見送る家族や友達のデバイスに送られていた。

 電磁シャトルバスに搭載された8機のエンジンが「ウィーン」

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【短め短編小説】『A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 2 泉先生の場合』《A bit Painful but Heart-warmingなお話》(2418字)

【短め短編小説】『A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 2 泉先生の場合』《A bit Painful but Heart-warmingなお話》(2418字)

蓮の不思議な体質 (前のエピソード「私の場合」をお読みくださった方は「泉先生の場合」へどうぞ。

 前回、私こと藤澤蘭子は、竜崎蓮と自分の一風変わった友達関係について話しました。そして蓮の不思議な体質のことも……。
 蓮は他人に触れた途端、その一触れでその人の苦しみを一瞬にして体に取り込み理解します。そして、その苦しみの度合いに合わせてその人に寄り添い、癒やすという運命を背負っています。やがて取り

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【短め短編小説】『A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 1 私の場合』《A bit painful but Heart-warmingなお話》(3455字)

【短め短編小説】『A Brush(ア・ブラッシュ)一触れ☆Episode 1 私の場合』《A bit painful but Heart-warmingなお話》(3455字)

 英語で”a brush”は、「一触れ」……ちょっと触れることという意味がある。
 そして、私の元彼、竜崎蓮は、この一触れに纏わる不思議な体質のおかげで大変な人生を送っている。蓮と私が別れたのも、その体質が原因だ。
 でも私は、蓮と別れることにはなったけれど、その特殊な体質のおかげで救われた。

 蓮と私が出会ったのは、私達が大学4年の夏だった。
 私は涙で顔をぐちゃぐちゃにして、清水公園の噴水の

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