マガジンのカバー画像

短いおはなし

11
原稿用紙10枚ほどのおはなしがメインです。長くなったら連載にします。 【短編小説】10枚〜100枚 【短め短編小説】3枚〜10枚 【脚本】10枚前後
運営しているクリエイター

2023年7月の記事一覧

【短め短編小説】〈存在〉の物語 #シロクマ文芸部 #書く時間 #SF

【短め短編小説】〈存在〉の物語 #シロクマ文芸部 #書く時間 #SF

「書く時間ですよ〜!」
ジュールの声が真っ白な部屋に響き渡る。

 すると、青く光り輝くウニート達は、数え切れないほど並ぶ机に一斉に着く。机の上にはレモン色の優しい光を放つ角の丸い正方形のタイルが置かれている。私達ウニートは、レモン色に光るタイルに向かって思い切り物語を綴る。

 私達が書くのは、この世に存在するすべての〈存在〉の物語だ。有機物も無機物も――つまり、生きているものも、そうでないもの

もっとみる
【短め短編小説】イヌイットの祈り #シロクマ文芸部 #食べる夜

【短め短編小説】イヌイットの祈り #シロクマ文芸部 #食べる夜

「食べる夜」はイヌイットが話す言葉の1つであるイヌクティトゥット語の「ウンヌアッククート ニリニーク」の日本語訳だ。

 イヌクティトゥット語はカナダのイヌイットによって話される言葉だが、「食べる夜」はグリーンランド最北の地、カーナーク近くで執り行われる秘密の儀式を指す。この地域の人々はイヌクトゥン語を話すのに、なぜ儀式の名前がカナダのイヌイットが話すイヌクティトゥット語なのかは誰も知らない。

もっとみる
【短め短編小説】Life Goes On #シロクマ文芸部 #消えた鍵

【短め短編小説】Life Goes On #シロクマ文芸部 #消えた鍵

「消えた」鍵は今もあの場所にあるのだろうか?――日本を発ってから、この疑問は、私の頭を片時も離れることはなかった。

 5年ぶりに訪れたフィレンツェは、街そのものが1つの芸術品であるかのように相変わらず美しい。オレンジ色の屋根が連なる街並み、石畳、大聖堂、教会、宮殿、鐘楼、塔、橋その他の建築物が訪れる者を古の昔へと誘う。もしヨーロッパで何処に住みたいかと尋ねられたら、私は迷いなくフィレンツェと答え

もっとみる