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透明な水底の夢

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詩集 ❘ 十代の透明な悲しみの断片
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#水彩画

専門書に載っていないことーー但し書き 

専門書に載っていないことーー但し書き 

切り傷の意味を、大人は知らない

私たちだけが、知っている

――言葉ではなく、理屈でもなく、感情だけで知覚していた

  理由をみつけることの難しい衝動の数々

  身体が言葉を見つけるのは、いつだって時間がかかる

専門書に載っていないこと

専門書に載っていないこと

心が痛くて耐えられなかったから
心の痛みを別の場所に移植した

切り傷の意味を、大人は知らない
私たちだけが、知っている

十代の真実/ サイドB

十代の真実/ サイドB

私たちの恋は死に
私たちの心は死に
私たちは死んだ

心が痛くて耐えられなかったから
心の痛みをどこかに移植したくて、そして結果的に、私たちは死んだ

心が流した見えない涙は、あふれ、たまり、流れ、
一つの大きな泉をつくった
私たちは、そこに棲む

私たちの悲しみは終わらない

十代の真実/ サイドA

十代の真実/ サイドA

私は死んだ
私たちは死んだ

私たちは恋をしていた
自分の全てを捧げてしまうほどの、大きくて熱い恋

その恋は、叶わなかった
私たちの恋は、叶わなかった

私たちの恋は死に
そして、私たちの一部も死んだ

私たちの心が流した涙は、あふれ、たまり、流れ、
一つの大きな泉をつくった
死んでしまった心のカケラは、そこに棲む

私たちは生きている
生きて人生を進めている

それでも、私たちの悲しみは終わら

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私はいつも私を裏切る 

私はいつも私を裏切る 

本当は知っている
知っていて、目をそらしているだけ

頭の中で考えなければ、言葉にならないから、
そしたら認めなくてもいいから、
だから、見ないふりをしているだけ

簡単なこと

いつだって、こうやって、私は自分をごまかして、
見つめたくないことから注意をそらす

そのせいで、心が思考に裏切られたと思うなんて、ちっとも考えもしないで

感情に関する覚書 

感情に関する覚書 

その正体を知らないふりして
金色の小箱に閉じ込めて鍵をかけて水に沈めた

名前もつけず

本当は空に放ってやるべきだったのだ
鳥のように