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 たったの七分間 【掌編】


 
 あなたはどこにいるの? 私を一人にするつもり? 一人で死にたい? そんなこと許されると思っているの! あなたと私は、ずっと一緒だといったよね。

 そんなことが書かれた変なメッセージが来た。これはなんなんだ、誰が死ぬのか? 自分がか?
 笑うべきじゃないけど、かすかに頬が揺れる。妻の精神状態を疑ったほうがいいのかもしれない。
 自分は誰から見ても元気じゃないか。
 おっ……違う違う。あれ宛名が自分の名前ではない。他の人へ送ったメッセージなのか? 
 驚いたのと同時に、自分が死をあまりに軽く扱っていることに笑った。一度死ににかけて生き返ると、生へのバイタリティが強くなる人もいるというけれど、まさしくいまの自分だ。
 昔、頻繁に自殺を考えていたとは、自分でも信じられない。自殺が失敗に終わり助かった後、前と状況はなにも変わってないが、何かが変わった。今の自分は全く元気だ。いや元気というよりパワフルだというべきか。
 それにこれを送ってきたのは妻ではない。自分の妻は人を心配するような女ではない。この男は可哀想だけど、こんなに誰かが自分を心配してくれていて、少し羨ましい。それにしても、こんなに心配してる女のメッセージがその男につかないとは……。
 
 すぐまた次のメッセージが届いた。
 あなたがその気なら、私も死ぬわ、とそこには書かれていた。
 いやいや……参ったな。
 自分は返信をすることにした。
「誰だか知りませんがあなた! メッセージを送る相手を間違っています。きちんと番号を見てメッセージを送ったらどうですか? とりあえず、あなた! 死んではダメですよ」と、少し余計なことも付け加えた。
 すぐに返信が戻ってきた。
「どういうこと? あなたよね、この番号は夫のよ」
 ラチがあかないので、電話をすることにした。
「もしもし。あの〜、このメッセージを送ってきているあなた。これは何かの間違いだと思います。事情は知りませんがどうか、死なないで」
 女は、「あなたよね、あなたの声よ!」と激しく言った。
 自分はその声が恐ろしく妻の声に似ているのにすぐさま気付き、とっさに妻の名前を呼んだ。
 しかしながら、その女は、「誰、それ」と言った。「あなた、わたし以外の人がいるのね」とも言う。
 そしてスマホの画面は真っ暗になった。
 なんなんだ、これは? と唖然としたが、女のメッセージのアドレスに、見慣れないマークが入っていることに気づいた。それはこの世界では見たことがない記号。いつもの@ではないほかのものがそこにはあった。
 
 知らない世界の違う自分が、死へ向かっているのか? それを自分の妻と同じ声をした女が怒って止めようとしているのか? 女は一緒に死ぬとまで言っていたが……。
 自分はよくわからない事は嫌いなので、もう一度電話してみることにした。
 長く鳴らしたが、電話に女はでなかった。
 何が起きたのか知りたかったのでまた電話をした。が、している最中に、この番号はもう二度と繋がらないとわかった。少しの間コネクションしていた何かは切れたのだ。
 女はどうしたんだろうか、男は? 嫌な妄想がどんどん広がった。




ということで、ここからは呟きですね。実は今日は私の誕生日なので、祝私、ということで、皆さんにもサービスで短編をアップしてみました。喜んでいただけると嬉しいな。

以下のものも掌編です。まだ読んでない方は、どうぞ〜。


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