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発達さん、本気の睡眠改善に取り組む。

私には睡眠障害がある。
といっても、不眠症などではない。
横になれば、すぐに眠れる。

問題があるのは、睡眠のリズム。
寝る時間と起きる時間。
そう、「早寝早起き」というものが、私は大の苦手なのである。

それに加えて、就寝中の過度な歯ぎしりや夜驚症(睡眠時驚愕症)もある。これのせいで、ちゃんと寝ているつもりでも睡眠の質が悪くなり、日中のパフォーマンスに影響することがあるので、けっこう深刻な問題なのだ。

通っているクリニックの定期診察で、主治医の先生に相談してみた。

「メンタルのほうはもうずっと安定してますし、発達に関してもショートケアでだいたい改善してきているんですが、ちょっと体調が最近あんまりよくないなーっていう感じがします。相変わらず睡眠リズムが乱れたままで、困ってます。たぶん、睡眠が改善すればぜんぶうまくいくんだろうなっていう気がするんですけど、やっぱり睡眠がむちゃくちゃで一向に生活リズムが整わないので、作業したくてもその時間がちゃんと確保できないから、短時間にいっぱい詰め込みすぎちゃって、しんどくなるみたいな」

先生は私の話をひととおり聞いた後、私のほうをしっかり向いてこう言った。
「どうしたいですか? 治したいですか?」

「治したいです。やっぱり、朝型にしたいんですよね」
私は即答した。
すると先生は、こんな提案をしてくれた。

「じゃあ、睡眠専門の先生の診察をご案内できますが、受診されますか? 睡眠について相談に乗ってくれますよ」

「はい、ぜひお願いします! 睡眠の問題が自分にとっていちばんの悩みなので。ありがとうございます!」

そうして私は、睡眠外来を受診することにした。

前々から睡眠外来には興味があったので、機会があれば受診してみたいと思っていた。なので、この診察を受けることを、私は楽しみにしていた。

しかし、受診日が近づいてきたある日、このことを友人についポロッと話してしまった。
案の定、「おまえ、アホちゃうか!」と怒鳴りつけられた。

「そんなん行かんでもええねん。って言うか、行ったらあかんねん。それくらいのことでいちいち病院なんか行くな。行ったら医者から適当に病名をつけられるだけや」

しまった、と思った。
この人にこの手の話をすると、絶対にこういう話の流れになってしまうから何も言わないようにしていたのに。つい口がすべってしまった。うかつだった。

「『時間がない、時間がない』って言いながら、時間も交通費も使ってわざわざ病院まで足を運ぶっておかしないか? 病院なんかに行かんでも、自分で治せばいいやないか。変わってるなぁ、ほんまに変わってる」

たしかに。
たしかに私も、そう思う。

それは正論だよ。
だけど、それができないから、ずっと困ってるんじゃないか。
簡単に言ってくれるなよ……。

何を言われても、誰に反対されても、私は行くんだけどね。


初めての睡眠外来

ゴールデンウィークが明けたころ、睡眠専門の先生に初めて診てもらった。
診察時間が終了する間際の慌ただしい時間帯で、ほんの数分の診察だったけれど。

2週間分の睡眠状況を記入した睡眠日誌と問診票を先生に手渡して、診察開始。

私:早寝早起きができなくて。寝る時間も起きる時間も遅くて、完全に後ろにズレちゃってるんです。いまはだいたい早くて2時とか、最近はさらに遅くなりがちで3時とか4時近くになったりすることもあります。それで、起きるのが10時とか11時くらいという感じで。

先生:それで生活に支障が出ているということですね?

私:そうですね。

先生:本人様にまずやっていただくことはやっぱり、起きる時間をもうちょっと早く設定することですね。寝る時間がどんなに遅くなっても、起きる時間を固定するようにしてください。
起きる時間を早くすると、寝不足になって眠たいかもしれないけど、そうすることで早めに眠気が訪れるようになります。

私:在職中は9時から始業だったので、休職する前までは会社に行くために7時半から8時くらいには起きてたんですけど、寝る時間はだいたい2時を過ぎてました。それで毎日5時間くらいしか寝れていなくて。それが習慣になっていたというか定着してしまっていて、そのリズムでずっと続けてきたので、慢性的な睡眠不足だったんです。休職してからはちゃんと寝るようになって毎日7時間くらい寝るようになりました。なので、早く起きるようにしたら、また前と同じ状態に戻っちゃうんじゃないかなっていう怖さがあって。

私:私は不眠症ではないので、横になったらすぐ寝れるんです。だけど「眠いから寝よう」っていう感じにはならないんですよ。「疲れたから寝よう」とかじゃなくて、「やることいっぱいあるから、これやらないと寝れない」みたいな感じで、いつも寝るのが遅くなって後ろにズレちゃうっていう。
だけど、やっぱり朝型にしたいなって思います。

先生:やっぱり、起きる時間を一定にすることですね。今日決めてもらうといいと思います。何時に起きるか、9時なら9時っていうふうに決めるんです。

先生:食事の時間はどうですか?

私:ごはんを食べる時間も大きくズレちゃってますね。朝は食べないんですが、お昼ごはんが14時とか15時くらいで、晩ごはんが22時とか23時とか、遅いときには24時を過ぎることもあって。

先生:夕食が22時くらいですか。全体的に遅いですよね。それで後ろにズレちゃってるんですよ。
これ、非常に大事なことなんですが、早寝早起きをしたいのであれば、睡眠時間を調整するだけじゃなくて、食事の時間を早くする必要があります。そこをそのままで早く起きるっていうのは、すごく難しいんですよ。そこを理解されていない方が多いんですけども。

先生:夕食をもうちょっと早い時間にすることを心がけてもらえたらいいかなと思うんですけど、それはできそうですか?

私:すぐには難しいです。そうしたいなとは思ってるんですけど、やっぱりどうしても仕事優先になっちゃうんで「これが終わってから」って思っちゃって。それでついついずるずると後ろにズレてしまって……。

先生:本人様が何も変えずに早く起きれるようにはならないんですよね。
まずは、どっちかでいいので、やってみてほしいです。どっちにしますか? 夕食を早くするか。起きる時間を早くするか。たとえば、9時くらいだったら起きられそうですか?

私:いっぺんにどっちもっていうのはしんどいので、まずはどっちかひとつでもいいですか?

先生:はい、もちろんです。

私:……じゃあ、9時に起きることを目標に、やってみます。

先生:早く起きるようになったら、寝足りなくて日中眠くなると思います。16時までだったら昼寝してもいいです。ただし20分程度にしてください。長くても30分以内にとどめてくださいね。


長年の悪しき習慣を改善するために

そうして私は、「毎日9時に起きる」と決めた。
「夕食の時間を早くすることがマスト」だと言われたが、それはいったんおいといて、まずは起きる時間を固定することを目標にした。

己のカラダに染みついた長年の悪しき習慣を改善するのは、容易いことではないと思う。

だけど、やるしかない。
自分がそうしたいと願うのなら、自分で自分を変えていかねばどうにもできない。

先生方は、あくまで私の手伝いをしてくれるだけ。
自分を変えられるのは、自分しかいない。

よし、やるぞ。
何度目の正直かわからないけど、今度こそ、改善するんだ。

それにしても、このやる気にさせるテクニックは、さすがだなと思った。

AかBかどっちにするのかを本人に選ばせて、具体的に何をするのか本人に決めさせる。
「先生に言われたから」やるのではなくて、「自分で決めたことだから」やらざるを得なくなるのだ。


その翌日から早速、先生に言われたことを実行する。

早く起きろと言われれば、なんとか起きられる。
だけど、早く寝ろと言われても、どうしても早く寝ることができない。

体内時計が狂っていることによる影響なのか。
長年の習慣によるものなのか。
いや、そのどちらもきっと正解なのだろう。

よくよく思い返してみたら、高校時代以降、日付が変わるまでに寝たことが、ほぼほぼない。数えるほどしか……。

高校時代には、毎日のようにボリュームたっぷりの宿題が出されていて、深夜までかかってそれをこなしていた。
学校にいる間、休憩時間を利用してやっても追いつかないくらいの量だった。
そんなことを続けているうちに、だんだんと睡眠不足が深刻化していき、私は学校に行けなくなった。

たぶんそこからずっと、夜型に固定されてしまったのだと思う。

それと、考えられる理由がもうひとつ。

私は大家族で育ったので、家族が活動している時間帯はうるさすぎて、自分のやりたいことがなかなかできずにいた。
なので、家族が寝静まった深夜が「自分の時間」。この時間に文章を書いたりするのが好きだった。夜のほうが静かだから集中できて落ち着いて書けるし、アイデアも湧いてくる。このころの私は、愚かにもそう思っていた。

夜が明けるまで、文章を書いたり、本を読んだり、音楽を聴いたり。
私が夜型になってしまったのは、少なからずそのような環境のせいでもあると思う。


主治医からの意外な反応

睡眠外来を受診して10日ほど経ち、主治医の定期診察を受けた。

「こんにちはー。調子はいかがですか?」
いつものように聞いてくださる先生。

「あんまりよくないです。この前、睡眠専門の先生の診察を受けて、いま睡眠改善に取り組んでいるところなんですけど、前よりずっとしんどいです」

私は、先生に状況を説明する。

「毎日9時に起きると決めて、それをいまやっているところなんですけど。毎日きっちり9時に起きられているわけではないんですけど、9時台には起きられるようにはなりました。今日は9時前に起きられたし。起きる時間は少しずつ早くなってはきたんですけど、やっぱり寝る時間が早くならないです。
起きる時間を固定して、食事の時間をもっと早くしないとダメだよって睡眠の先生に言われたんですが、いっぺんにふたつともはしんどいから、まずは9時起きを固定させることから取り組んでいるんですけど、ごはんの時間を早くしないとやっぱりダメなのかな……って思ってます。

それまではだいたい毎日7時間くらいは寝ていて、それで固定されていたので、けっこう体調はよかったんですよ。いまは起きるのが少し早くなって睡眠不足になってるので、日中すごくだるくて、眠気もすごくて。お昼ごはんの後と晩ごはんの後に、猛烈な眠気が襲ってくるんです。昼寝は16時までにって言われたんですけど、ちょうど16時くらいにものすごく眠くなるんですよ。うとうとしちゃうんですけど、この時間に寝たらダメやと思ってめっちゃ我慢してます」

「昼寝はしていないんですね。それはいいですね。夜、眠気が襲ってきたら、そのまま寝てしまえばいいんですよ。そうすればリセットされて、完全にリズムが戻りますよ。眠くなったら用事はすべて明日にまわして、さっと寝る。そこでぜんぶ巻き戻りますから。そのためには、たしかに夕食を少し早くする必要がありますね」

先生は話を続ける。

「でも、睡眠外来を受診してから、まだ1週間くらいしか経ってないですよね。この短期間で概ねできているんだったら、いい傾向だと思いますよ」

と、やさしく言ってくださった先生。しかも、

「その調子!」
と言って、なんと、拍手までしてくださった。

うれしいという気持ちより先に、ちょっと拍子抜けしてしまった。
だけど、私はそのとき思ったのだ。
「先生がそう言ってくれるなら、私でもできるかも」と。

「身体が慣れるまでは、ちょっと時間がかかります。いまはしんどいかもしれないけど、そのうち慣れて、だんだん収まってくると思います。そこまではしんどいと思うけど、がんばって」

先生は、最後に励ましの言葉までくださった。

「用事はすべて明日にまわす」というのは、私にはちょっとハードル高いけど。
できるだけのことはやってみよう、と思った。

「できてますよ」って先生に言ってもらえて、ちょっと自信がついた。
もうちょっと、いや、もっと、がんばってみようかな。
次回の診察で、先生にいい報告ができるように。

先生方が、こうして私をやる気にさせてくれる。
がんばったら、褒めてもらえる。
それだけでも、相談する意味はちゃんとあったのだ。

この記事が、私みたいに悩んでいる人の参考になればうれしいな。
あなたにも何か困っていることや悩んでいることがあれば、ぜひとも気軽に専門医に相談してみてほしい。



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