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20231031「キッチン」

キッチンには
水と火と
食べられる前の
動植物たち
火花を散らし
燃焼する
汚れた何かを洗い落とし
切り刻んで
或いは丸ごと
味と風味を加味して
冷たい保管に手を伸ばし
薄っぺらい竃の神様を貼る
手を合わせるのは
何に対して
誰に対して
そうするのだろうか
それなしでは生きられないから
今日もそこにいる

爆ぜる炎を見つめて
その熱を持って
わたしの身体もまた
温度を保つ
ぐつぐつと沸騰し
さらさらと流れ
怒ったり笑ったりしながら
味見をしたり
つまみ食いしたり
突っついたり
焼いたパンと
焼いたお皿
削った椀と箸
鉄のフライパンを叩いて
できたよって
教えてくれる
腹ぺこの子供たちが
集まって来る

美味しそうな匂いに誘われ
わたしたちは
それをいただきつつ
それ以外もまた手放している
獲得しつつ
さよならだ
新しいわたしと
新しいあなたは
どんな違いがあるのか
誰もわかってないくらいに
傲慢でか弱い
生き物たちの群れ
同じ目線で見ることもなく
同じ地平で生息つつ
山から降りて海へと続く
からくりの運行を軌道に乗せて
合切を運びながら
それぞれの今日の食卓を囲もう

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