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【伸びる事業開発】「プロダクトアウト」と「マーケットイン」の違いと、スタートアップに適した第三の戦略

 こんにちは、金子健人です。
 今回のnoteでは「事業開発における戦略」の考え方について書きたいと思います! 

 (僕が書くまでもないことですが…)事業(プロダクトとも言います)の成長なくして、企業の成長はありえません。
 事業開発の戦略は世の中に無数にありますが、特に代表的でよく耳にする2つが”プロダクトアウト””マーケットイン”かと思います。
 僕のnoteを読んでくださる、ビジネスや事業に興味をお持ちの皆さんも、どちらの戦略でプロダクトを作ろうか迷った経験があるのではないでしょうか?

 僕自身、これまで幾度となく、”プロダクトアウト”であるべきか”マーケットイン”であるべきかを、CXOや事業開発に関わるメンバーと話し合ってきました。
 僕個人としては”マーケットイン”思考が強いのですが、toridoriでは”プロダクトアウト”寄りの『toridori marketing(トリドリマーケティング)』をグロースさせた経験もあり、どちらの考え方にも学ぶべきところはあると感じています。

 そこで、このnoteでは、プロダクトアウトとマーケットインの特徴や違い、両者のメリット/デメリットについてお話すると共に、僕自身の事業開発経験を元にしたスタートアップ企業やスモールビジネス事業者におすすめの第3の戦略についてもご紹介します。



プロダクトアウト:革新的なプロダクトを世に放ち、市場の潜在ニーズを掴み取る

 “プロダクトアウト”とは、企業が自社のテクノロジーや強み、独自性を活かし、まだ世にない革新的な事業を市場に生み出していく戦略のことです。
 このアプローチは、今までに無い価値を世の中に問うため、新しい市場やニーズを生み出す可能性があります。“プロダクトアウト”が成功した場合、独占的な市場×先行者利益を一定期間確保できます。

 僕の働くtoridoriの主力プロダクトに成長したインフルエンサーマーケティングプラットフォーム『toridori marketing(トリドリマーケティング)』も、「個人事業主・中小企業のPRの新たな露出面をつくる」「難易度が高く人的リソースもかかるインフルエンサーマーケティングを誰でもすぐ使える簡単なものに」という今までにない価値提供を世に問うことができたプロダクトだと考えています。

 ただ、”プロダクトアウト”は圧倒的に不確実性の高い事業開発戦略であることも事実です。
 走り出す時点では市場も存在せず、ユーザーのニーズも見えていない以上、人的・開発コストに見合った利益が得られるという確証がないからです。だからこそ、100%の”プロダクトアウト”で進める事例というのは案外ないかもしれません。
 僕らも、必ず事業開発の検討フェーズでPoC(Proof of Concept、概念実証)を行います。作りたい事業の機能や価値を最小限まで削ぎ落した状態の「事業の種」を作り、実現可能性とユーザーニーズを問うやり方です。
 PoCは革新的な事業を開発する為には不可欠のプロセスですが、成功例より失敗例の方が圧倒的に多くなることも事実なので、「失敗を恐れない」というスタンスの企業でないと”プロダクトアウト”に挑むことはできないのではないでしょうか。

 そして、”プロダクトアウト”には、組織構築も重要です。ロールモデルとする事業がない状態で事業推進をしていく必要があるため、優れた企画者と優れた開発者(あるいはその2つを兼ねるような人材)が両輪で支えてくれる組織でないと実現が難しいと思います。
 『toridori marketing(トリドリマーケティング)』の場合、代表の中山や事業開発室の三宮がインフルエンサー市場の潜在ニーズについて常に考え続けている企画者であったこと、Donuts時代の新卒同期であるCTO長坂が率いるすぐれた開発組織の構築が出来たことで、企画・開発の両輪で進められたことが成功に繋がったカギだと考えています。

■”プロダクトアウト”のメリットとデメリット
メリット: 新しい市場を切り開く可能性があり、成功すれば大きな利益に
デメリット: リスクが高く、市場の反応は不確実。

”プロダクトアウト”に向いている企業
・トライ&エラーを歓迎する風土がある
・開発者と企画者が両輪で事業推進できる

マーケットイン:消費者の声を的確に汲み上げ、「これが欲しかった」を世に届ける

 一方で、"マーケットイン”は、消費者の要望や市場・時代の動きに応じて、企業が事業を開発・提供する戦略です。
消費者の顕在化したニーズや明確に存在する市場に対するアプローチなので、"プロダクトアウト”と比較するとスピーディーに開発が進み、「全く売れない」などの失敗リスクを回避でき、短期的な収益確保を目指すことができます。

 海外で既に成功しニーズが顕在化したビジネスを日本の消費者にフィットする形にアレンジし、提供するのも"マーケットイン”の戦略として有効だと思います。
各国の商慣習や文化により消費者の考えに違いがあるのは勿論ですが、現代社会において、消費者のニーズの基盤部分はそこまで大きな違いはない、例えば中国で流行したビジネスは、日本でも一定のニーズはあると僕は考えています。

 とはいえ、”マーケットイン”には、消費者の現在の顕在化されたニーズに対応していくことに主軸があるからこそ、将来的なビジョンを描けるような事業への成長が難しいという難点もあります。また、顕在化したニーズである故に他社も目をつけている可能性が高く、結果的にレッドオーシャン(競合が多く、激しい競争が起きやすい市場)となることも多いです。
しかしながら、短い期間で一定の安定した収益を保ちたいという観点で言えば、”マーケットイン”は適した事業開発戦略であると言えるでしょう。

■”マーケットイン”のメリットとデメリット
メリット: 市場リスクが比較的低く、一定の収益確保が望める
デメリット: 将来的な成長性に限界がある、競合他社が多いレッドオーシャンの可能性がある

■”マーケットイン”に向いている企業
・ユーザーヒアリング、市場調査を重視する姿勢がある
・早期での収益確保が必要

スモールビジネス・スタートアップに適した第三の選択肢

 とは言え、スタートアップ企業やスモールビジネス事業者において、事業開発に対する潤沢な予算やリソースがあることはほぼ無いのではないでしょうか。
トライ&エラーを前提とした"プロダクトアウト”も、市場の綿密な調査分析が必要な”マーケットイン”も、一定の予算や人的リソースがあることが前提の考え方で、これらだけに頼ることは正直現実的ではありません。
企業成長のために事業開発は不可欠だけど、先立つ資源がないという状況には、何度も僕らも悩まされてきました。

 このような実体験から、僕は、第三の選択肢として「顧客ターゲットを絞った事業開発」をおすすめします。

 これは、特定のターゲット層やニッチな市場に焦点を当て、その市場にのみ最適化されたプロダクトを提供するアプローチです。この戦略であれば、競合が少ない市場で高い利益率を確保できる可能性が高まります。
また、絞られたターゲット層・市場のニーズのみにフォーカスすることで、開発コストも抑えることが出来ます。

 ターゲットを絞り込むことでのメリットは「その市場の解像度を独占的に高められ、自社への依存度の高い市場を作れる」ことにもあります。ターゲットの解像度を上げれば、ニーズをより深く理解した質の高いプロダクト開発に繋がり、結果的に顧客満足度の高いプロダクトを実現できます。顧客満足度の高いプロダクトを提供する→更に顧客のFBを集められる→またその市場に最適化された新プロダクトを出せる、この好循環の繰り返しで、市場そのものが自社とフィットした状態を作ることも目指せます。

 僕らの事例で言うと、インフルエンサーとのD2C事業がこれにあたります。
D2C事業では、当初インフルエンサーのアパレルブランドを展開していたのですが、毎シーズン複数の型数のアパレルアイテムを世に出し、販売を続けるため、ブランドを存続するためにはインフルエンサーのファン以外の一般消費者をもターゲットとする必要がありました。
しかし、一般消費者のニーズ(トレンドの服が欲しい)とインフルエンサーのやりたいこと(世界観を表現したい)に乖離が生まれることも多い上、常に開発のリソースを抱え続けなくてはいけないという課題もありました。
 そこで、ターゲットをインフルエンサーのファンのみに絞り、ブランドという形ではなく、インフルエンサーのこだわり抜いた渾身のワンアイテムを限定生産で販売するスキームにピボットを行いました。
すると、インフルエンサーのアイディアを詰め込んだ革新的なワンアイテムがファンの心をつかみ、社会的トレンドを生むような大ヒットアイテムやそこから派生したシリーズアイテムも数多く生まれるようになりました。

最後に ~事業開発戦略の組み合わせで、自社の最適解を探す~

 結局のところ、成功する事業開発戦略を策定するには、自社の課題やリソースに合わせ、”プロダクトアウト””マーケットイン”ターゲットを絞る”それぞれの使える部分を組み合わせる柔軟性が求められると思います。

 どの事業開発戦略が最適か、ではなく、どの戦略のどの部分を使って組み合わせていくかをカスタマイズ感覚で考え、自社にフィットさせることが、成長するプロダクトへの近道だと僕は考えています。

 また、成功している時にこそ忘れてしまいがちなのですが「今うまく行っている戦略が明日、来年、将来、最適とは限らない」と意識することはとても大事です。
市場も顧客も移り変わり、自社のリソースも日々変わっていきます。状況の変化の中、持続的な事業を成長させ収益を確保していくためには、常に市場の変化に目を向け、柔軟に「今、最適な戦略は何か」を見極め修正していく姿勢が不可欠です。
一つの成功体験にしがみつかず、客観的な目線で、事業にとって今必要な開発な戦略を選び取れることが、成長を続ける企業の特徴なのではないかと僕は思っています。


 以上が、事業開発戦略についての個人的な考えです。このような僕の意見が少しでも皆さんのお役に立てれば光栄です。また、SNSシェアやスキ!ボタンでの拡散などをいただければ大変嬉しいです!

そして、個人的にも新規事業開発領域の課題解決や支援を行っていますので、お気軽にメールやDMよりご相談ください!
Mail:k_kaneko@toridori.co.jp
Twitter(X):https://twitter.com/kaneko_knt


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