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雨瀬くらげ
2021年8月8日 18:11
三百六十度、荒野だった。草木は枯れ、茶色いゴツゴツとした地面、遠くには岩肌を見せた山々。空は晴天で、俺の目の前にはコンクリートで整備された一直線の道があった。 俺はその道をひたすら走り続けていた。気づけば走っていた。そしてなぜか走りをやめようという思考には至らない。キツいなんてものは微塵も感じなかった。 これは夢なのだろうかと考えたことがある。いささか子供らしい確かめ方だが、頬を抓ってみ
2021年7月25日 15:46
グラウンドからは部活生たちの健康的な奇声が聞こえ、青春アニメの放課後を思わせる。一方、淡い朱色の教室は対照的に静かだった。シャープペンシルの芯が紙の上を走る音だけが僕の耳に届く。なぜなら教室には僕しかいないからだ。放課後、女の子と駄弁るなんて行為は、チャラリラパラリラ運動系男子がやってればいいのだ。チャラリラパラリラって何だよと思いながら独り笑う。 パキッとシャー芯が折れると同時に、教室の扉
2021年5月29日 19:42
太陽の明かりが黄色がかり始める午後四時。我が校の体育祭は紅団が勝利を収め、無事に終了した。 湯木明里が教室に戻ると、既に半数以上のクラスメイトが帰ってきた。ハチマキが机の上に散らかってたり、写真を撮っているものもいたり。そして、汗とグランドの匂い。それらを感じることはこの先もうないのだと思うと、高校生活最後の体育祭が終わったことを痛感した。「明里、私たちも写真撮ろ」 そう呟きながら、