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小説

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カクヨムなどの小説投稿サイトに掲載しているものの中から掌編小説、または二次創作をnoteに掲載しています。
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#超短編小説

【小説】土に落ちた汗は光り消えた

【小説】土に落ちた汗は光り消えた

 太陽の明かりが黄色がかり始める午後四時。我が校の体育祭は紅団が勝利を収め、無事に終了した。

 湯木明里が教室に戻ると、既に半数以上のクラスメイトが帰ってきた。ハチマキが机の上に散らかってたり、写真を撮っているものもいたり。そして、汗とグランドの匂い。それらを感じることはこの先もうないのだと思うと、高校生活最後の体育祭が終わったことを痛感した。

「明里、私たちも写真撮ろ」

 そう呟きながら、

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【二次創作小説】眠り姫

【二次創作小説】眠り姫

 大きな翼をもつドラゴンが僕らの行く手を阻む。僕らの二倍以上ある巨体を有するドラゴンだが、なんてことはない。僕らは勇者の剣を見つけたんだ。これがあれば何も怖くない。しかし、僕はその剣を持っていない。持っているのは彼女だ。

「僕がドラゴンの気を引く! 君はその剣でとどめを刺して!」
「わかったわ!」

 僕は隙を作るためにそう言って、駆け出す。ドラゴンがボーっと火を吹いてきたが、ここまでの冒険で鍛

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【二次創作小説】Lemon

【二次創作小説】Lemon

 また、あの時の夢を見ていた。

 私はベッドから起き上がり、西日の差し込む窓のカーテンを開けた。私の顔が朱色に染められ、反射的に目を瞑る。

 お世辞にも広いとは言えないこの部屋は、女子大生の部屋にしてはいささか殺風景で、何か小物を買おうにも何を買えばよいのかわからず、いつも買い物はただの散歩になってしまう。

 その話を彼にしたら、笑って聞いてくれた。彼の笑顔が頭に浮かぶ。
 忘れられないあの

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