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#56【ネタバレなし】『ソロモンの犬』(著:道尾秀介)を読んだ感想【読書日記】

道尾秀介さんの『ソロモンの犬』

読んだきっかけ

何か強いきっかけがあったわけではなく、道尾秀介さんの作品を読みたいと思っていた中でたまたま目に入った作品が本作でした。しかし、展開が面白く、かつ考えさせられる作品でした。

このような方にオススメの本です

  • 青春ミステリーを読みたい

  • 犬とミステリーの絡みが気になる

  • 「人の弱さ」について考えさせられる作品を読みたい

  • 犬や人の習性について知りたい

あらすじ

秋内、京也、ひろ子、智佳たち大学生4人の平凡な夏は、まだ幼い友・陽介の死で破られた。飼い犬に引きずられての事故。だが、現場での友人の不可解な言動に疑問を感じた秋内は動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く。そして予想不可能の結末が…。青春の滑稽さ、悲しみを鮮やかに切り取った、俊英の傑作ミステリー。

「BOOK」データベースより

感想

  • 哀しみに包まれてからのラストの展開に興奮

  • 人よりも、実は犬の方が利口なのかもしれない

  • でも、時に見せるイタさや滑稽さもあるから愛おしく見える


平穏な日々を送っていた大学生の秋内、京也、ひろ子、智佳の4人。ところが、ある夏の日に椎崎鏡子教授の息子である陽介が飼い犬のオービーに引きづられたことにより、トラックに轢かれて亡くなってしまう。そこから4人の関係は不穏なものに変わっていく。偶然起こった事故だったのか、それとも……。秋内はその真相を探るべく、動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く。


陽介の死は、様々なことが複雑に絡み合ったもの。謎に包まれたままモヤモヤしていると、途中であることを察して哀しみに包まれました。予想していた中で「あって欲しくない」展開だったから。…と思いきや、そこからのラストの展開に興奮しました。不穏な空気からの光が差したような。ただ、伏線はありましたが、犯人を当てるのは難しいかもしれません。本作を読んで犬の習性に詳しくなりましたね。あとは人に関しても少しだけ。


道尾さんが描く「人の弱さ」にはいつも考えさせれるし、何か救われたような気持ちになります。人は喋れたり、文字を書けたりして他の動物と比べても優れているように見えますが、実は犬の方が利口な部分があるのかもしれません。終盤の「人の弱さ」に触れた間宮助教授の言葉は響きました。でも、決して道尾さんは「人の弱さ」を否定しているわけではない。時に見せるイタさや滑稽さもあるから愛おしく見える。そのようなことも伝えていると感じました。


秋内の密かな恋心による青春要素としても楽しめました。一つ一つの些細なことに疑心暗鬼になるのは何か分かるような気がします(笑)
終わり方も好きですね。

それにしても瀧井朝世さんの解説は分かりやすく的確にまとめられているといつも感じます。解説が瀧井さんだと思わずテンションが上がりますね。

印象的なフレーズ

「人間よりも、犬やオオカミやシオマネキのほうがよっぽど利口だよ。互いに傷つかない争いの解決方法を知っているんだから」

『ソロモンの犬』

「神は、言葉が通じ合うことで生み出される力を知っていたんだね。もちろんこれは人間同士での話だけど、僕は人間と動物でも同じことだと思う。言葉さえ通じ合えば、何だってできるんだ。天まで届く塔だって建てられる」

『ソロモンの犬』

「自殺をするのは人間だけです」

『ソロモンの犬』

「悪意は、伝染病のようなものです。ウィルスは体力が弱ったときに肉体を支配する。悪意は精神が弱ったときに、心を支配します」

『ソロモンの犬』

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