見出し画像

#33『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』(著:若林正恭)を読んだ感想

オードリー若林正恭さんの『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

若林さんが最初に出したエッセイ本で、今やお笑い芸人さんのエッセイ本の中でも代表的な1冊となっています。

実は4~5年前に1度読んだことがありますが、内容がうっすらとしか覚えていないので今回再読しました。


あらすじ

若手芸人の下積み期間と呼ばれる長い長いモラトリアムを過ごしたぼくは、随分世間離れした人間になっていた―。スタバで「グランデ」と頼めない自意識、飲み屋で先輩に「さっきから手酌なんだけど!!」と怒られても納得できない社会との違和。遠回りをしながらも内面を見つめ変化に向き合い自分らしい道を模索する。芸人・オードリー若林の大人気エッセイ、単行本未収録100ページ以上を追加した完全版、ついに刊行!

Amazon商品紹介ページより

感想

  • 自意識過剰、ネガティブな方にとって今を生き抜くヒントを与えてくれる

  • 尖っている分、切実さが文章から伝わり、強い響きとなって僕に返ってきた


本作は、若林さんがブレイクしたばかりの頃(2010年~2014年)に書いたものが載っています。

自意識過剰、ネガティブ、最近楽しくない、考えすぎ…
そんな方にとって今を生き抜くヒントを与えてくれるでしょう。
(僕は上記のタイプに見事に当てはまっています(笑))

僕はこれまで、本作の後に出た『ナナメの夕暮れ』『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』も読んだことがあります。

その2作と比べると、本作は共感できる箇所が多かった印象がありました。
これは、エッセイを書いた時期が今の僕と同年代(30代前後)なのが大きいと思います。
その中で最も共感できたのは、ネガティブの潰し方についてです。


あらすじにもスタバで「グランデ」を頼めないとありますが、僕は頼むことには何の躊躇もありません。
ただ、僕も改めて自意識過剰だなと最近感じたことがあります。

それは、WBCで日本代表が試合で負けている時に、Twitterで何の関係もない日常に関するツイートをしていいのかで悩んでいたことです。
「そんなの気にする人誰もいねーよ!」ですよね(笑)
でも、文章ができたのに押せないのが実際にあったんです。同じような方がいたらきっとその方とは話が合いそうです。


本作は、『ナナメの夕暮れ』と『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』に比べて尖っている印象を強く感じました。
その分、切実さも文章から伝わり、強い響きとなって僕に返ってきました。エネルギーがほとばしっているような感じでしょうか。


最近、僕は悩んでいたりしてマイナス思考になりがちだったのですが、本作を読んで力が抜けて元気が出ました。
まさに特効薬のような感じです。

「社会」というゲームの攻略本を読むような感じで、後日改めて読もうと考えています。

それにしても若林さんのエッセイは付箋泣かせだな😂

若林さんのエッセイは読むと付箋だらけになる?

付箋を貼った話と印象的なフレーズ

僕が付箋を貼った話とその話の中で印象的なフレーズを以下にまとめました。

社会人一年生

社会とは、見過ぎたものでも相応の時間が経てば忘れてくれる場所である。そして、巨大な鳥に勝てないほどの実力や気持ちならまず巨大な鳥のご機嫌を伺ってみろ。そんな場所だ。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

夢日記

夢日記とは自分が睡眠中に見た夢を記す日記ではない。自分の叶えたい夢を記す日記だ。目標日記といった方が適当かもしれない。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

夢日記とは、自分の目標や理想から今日の予定までを逆算して書いていくものです。

"確か"なもの

出来るなら、楽しいとか、面白いとか、愛とか、感動とかの方がいい。"確かじゃない"日常を過ごしながらも"確か"なものに死ぬまでに数多く出会いたいものである。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

大丈夫だよ

自力では抜け出せない程のネガティブな感情に嵌った時、一番初めに起動しなきゃいけないのはやっぱり心だ。
行動を起こしながら感情がついて来ることもあるだろうが、それでも一番初めのアクションは心からだ。
ぼくは、この先ネガティブな感情から抜け出せない仲間がいたら、僕の想像力が及ばなかろうが、経験値が及ばなかろうが、保身せず「大丈夫」だと言い張ろうとその時決心した。
本当に大丈夫かの信憑性はどうでもいい、まず大丈夫と言う。そして、言ったことにより生じる責任を、負おう。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

選択する

ディヴ(分人)は本当の自分に嘘をついてるわけでも、無理をしている訳でもないという部分を読んでから様々なディヴ(分人)を使い分けること、自分の意見をTPOによって変えることに対して罪悪感を持たなくてもいいような気がして気持ちが楽になった。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

ディヴ(分人)とは分人主義のことで、作家の平野啓一郎さんが生み出した造語です。

「分人」は、対人関係ごと、環境ごとに分化した、異なる人格のことです。中心に一つだけ「本当の自分」を認めるのではなく、それら複数の人格すべてを「本当の自分」だと捉えます。この考え方を「分人主義」と呼びます。

「分人主義」公式サイト|複数の自分を生きるより

穴だらけ

何かをして何も起こらなかった時、飛ぶ可能性は上がっている。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

たとえ失敗したり、何も変化がなかったとしても、ダメというわけではない。むしろ前に進んでいると考えるようにしようと思いました。

ネガティブモンスター

これまでぼくは起きもしないことを想像して恐怖し、目の前の楽しさや没頭を疎かにしてきたのではないか?
深夜、部屋の隅で悩んでいる過去の自分に言ってやりたい。そのネガティブな穴の底に答えがあると思ってんだろうけど、二十年調査した結果、それただの穴だよ。地上に出て没頭しなさい。
(中略)
ネガティブを潰すのはポジティブではない。没頭だ。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

考え過ぎてネガティブになってしまう僕にとって、凄く響きました。
読書中は没頭しているなって感じて、その時はネガティブにはならないんですよね。
読書以外でも没頭できることをノートに書いて実践します。

好きって言っていいですか?

時と場合で、自分の趣味や感覚を押し引きする。
好きなものは好きでいいじゃない!そうはいかない。
好きなものを好きでいるために、自分の感覚に正直でいるために場を選ぶのである。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

男の恋愛に必要なものは?

根拠のない自信。最強だ。
状況がダメなのではなくて、状況をダメと捉えてしまうことがダメなのだ。
その感情の防波堤になるのは自信だ。
(中略)
その自信はなんでもいい。仕事でも顔でも体力でも学歴でもなんでも。根拠のない自信でもいい。
男は自信がないと恋愛が出来ないのだ。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

恋愛をはじめ、仕事や日常生活においても自信を持つことって大事だなと思います。

春日

春日という男は自分に自信があり余裕がある。子どもたちはそれを感じ取って春日に集まっているのではないかと感じた。また、逆にぼくの息苦しさも同時に子どもたちは感じ取っているような気がした。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

幸せについてや、限られた条件の中でいかに楽しむかについて考えさせられました。

人間関係不得意、人間関係不得意 その後、人間関係不得意 完結編

ぼくは、彼がSNSで人と繋がろうとせずにメールを送り続けてくることに、自分の内側に物差しと楽しさを保持しているような気がした。
ぼくは社交や礼儀作法よりも熱と量と持続を信用している。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

オードリーのオールナイトニッポンのハガキ職人から単独ライブのネタ作りを担当するまでに至ったTくんの話。
T君の熱量もですが、それを見出した若林さんも素敵だなと思いました。
そして結末に感動しました😢

暗闇に全力で投げつけたもの

あと、本好きからもう一言。これをダ・ヴィンチに書くのは勇気がいるけど本一冊で人格が変わるほど甘くはないよ。
(中略)
本当に変われるのなら、一冊出版されたらその一冊以降売れない筈。やっぱり本人の意思と行動ありき。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

そして、性格って変えなくていいと思うんですよ。
(中略)
ぼくらのような人間はネガティブで考え過ぎな性格のまま楽しく生きられるようにならなきゃいけないんですよ。前にも書いたけど性格は形状記憶合金のようなもの。なかなか変えられない。だから、変えるんじゃなくてコントロールできるようになればいい。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

青銅さん

それからはひどい目にあったり、ひどいことを言われても「よし、『フリートーカー・ジャック』で話せるぞ」と傷ついているのか嬉しいのかよくわからない精神状態になっていた。これは今でも続いていて洒落になんないことが起きても「まぁ三ヶ月後には笑い話だな」と思う。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

僕は嫌なことがあったらすぐにへこむので、後で笑い話にすればいいという気持ちを大切にしたいです。

牡蠣の一生

「いいかい。この世に存在する理由には二つあって。一つは何かをしているから存在していいということ。例えば、会社にいてちゃんと働いているからその会社に居ていいって思えるみたいなこと。二つ目は生まれてきたら、なんの理由も無くこの世界に存在していいということ」

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

何かをしているのに意味が無いのではなくて、意味が無いからこそ"せっかく"だから楽しいことをするのだ。ぼくはいままで、一つ目の理由を増強しようとして、それに追いつかない。ぼくに必要だったのは、二つ目の理由をもっと感じることだったのだ。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

十年ぶりの失恋

自分に自信がつくと一人で生活ができる。一人で生活ができるようになってやっと人と付き合えるんだなってことに初めて気付いた。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

最近「自立」について考えている僕にとって響きました。
確か壇蜜さんも似たようなことをおっしゃっていた気がします。

グランドキャニオン

よく自意識過剰に関して「お前のことなど誰も見ていない」というアプローチをする人がいるが、違うな。狭い所にぎゅうぎゅうに集まってどっちがイケてるか、マシか気にし合っているな。お互いに揚げ足を取られないように気をつけ合っているな。でもそれは一画の中だけのことで宇宙全体のことじゃないんだ。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

ネタ帳

鼻の先ににんじんのようにぶら下げられた「理想の自分」とやらに、走っても走っても食いつけず、しかも、口だけは動かして食いつけてるフリもして、そして、食べられる足下のにんじんを見逃している。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』

社会人大学卒業論文

「結果が全てだ」という考え方が世の中には蔓延している。
(中略)
しかし、ぼくの胸には「結果」自体は強くは残らなかった。それは実感だった。自分の胸を探ると、掴めるのはいつも過程だった。あれをあれだけやって、めんどくさかったし、大変だったけど、楽しかったな。完璧にはできなかったけど、自分なりにやったな。そんな単純な想いだけはいつも値が下がることなく胸に残っているのだ。「結果」はいつもそういうのの後にあとだしのじゃんけんのようにやってきた。

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,330件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?