NPO法人スマイルリング ののむらちあき

児童養護施設と少年院出身の青年サポート団体『NPO法人スマイルリング』理事です。物語に…

NPO法人スマイルリング ののむらちあき

児童養護施設と少年院出身の青年サポート団体『NPO法人スマイルリング』理事です。物語に溢れた青年達との心の日々を綴っていきます😊✨

最近の記事

君からの手紙。

この一年あまり、 ずっと胸の中に居た青年がいる。 まだ直接会った事は無く、拘置所の中の彼とは 手紙のやり取りをしてきた。 少年院を出院後、せっかく決まった就職先を 半年もせずに飛び出してしまい、 自分は真面目に生きていくのは向いてない。 だから、俺に付いてこいと言ってくれた 『アニキ』のいる世界で生きていく、と決めた。 母が泣いて止めるも聞かず、 沢山の心配と、沢山の迷惑を掛けて、 愚かにも、 そのアニキやら親分とやらに言われるまま、 また罪を犯してしまった。 ア

    • 守るって、どういう事?

      お久しぶりです! お誕生日、おめでとうございます。 そして、相談が、ありますっ。 おお〜久しぶり。 ありがとうねぇ! そして、相談かぁ…どうしたの? 相変わらずの、彼独特のペースに 思わず吹き出してしまう。 地元に帰って 自立への道を歩み出した彼は、 かれこれ一年 頑張って就労継続している。 『毎日職場であれこれと 注意されちゃうんです。』と言う彼に、 もう辞めたいとは思わないの? と聞いたら こんな事で怒られなくたって、って 思う事もあるんですけど、 僕は絶対

      • 苦しみを一緒に力に変える。

        お母さん、 お母さん、 お母さんの、声が聞きたい… 何十回も鳴る携帯の着信音と 壊れたようなLINE通知に、 “今向かってるよ”と返信しても、 繰り返される通知音。 不安と怖さが 電波のように伝わって来る中、 妙に冷静な私が、 私の心を見つめている。 今は行くべきだ。 今、私はあの子に会わなくちゃ。 自分の心が強く そう言っているのを信じて走る。 何回も届く、めちゃくちゃな LINEスタンプにも ぐっと胸が痛む。 私は、私を信じて走るしか無い。 青年達の

        • 困ったなぁ。どうしようかなぁ。

          かつて無いほど、 青年達からの相談が押し寄せる ゴールデンウィークのスタートを迎えた。 スマイルリングホームへ、 更生を誓う少年院出身の青年を新しく 迎え入れたタイミングで、 次から次へと切羽詰まりの 青年達からの連絡が入る。 今日から住むところが無い。 幼児、赤ちゃんが居るのに電気が止まった。 子供が児童相談所に取られてしまうから デリヘルで身体を売ってお金を稼ぐしか無い。 食べる物、生活費が無い。 大怪我をして毎日の通院が必要。 小学生の妹が虐待にあってい

          心が震える。

          初めまして。 私は○○刑務所に服役する 無期受刑者です…。 昨日届いた手紙の封を開け、 電話で理事長の堀ちゃんへ読み上げながら、 胸がいっぱいになっていった。 私達のところへは、 想いの詰まったお手紙が月に何通か届く。 拘置所の中から、 少年院の中から、 グループホームの中から、 統合失調症で苦しむ人から、 前科持ちの人から、 子育て、人間関係などで悩む人、 あまりに苦しく、 なかなか上手くいかない自分の人生を 見つめ、格闘しながらも、 今度こそ、 やり直したいと

          登ったり降りたりを一緒に。

          そもそも“普通”が何なのかは よく分からないのだけれど、 やっぱりウルトラ問題児との縁は 濃い私である。 昔の私がそうであったように、 私の周りの多くの大人たちが  そうであったように、 必ずと言っていいほど、 ここに来る子たちはどの子も、 何かしらの問題を起こす。 『そりゃそうだよね』 そう思っているので 何か起こったときには おお、そう来たねぇ、と思う。 それがスマイルリングの日常だ。 文字通りの行ったり来たり、 急勾配を上がったり下がったり、 急カーブで

          出会いが人生を変える。

          スマイルリングの理事長 堀ちゃんは、 今年も有り難い事に、様々な講演、研修等で お話しさせて頂く機会があった。 彼の過去、その経歴は、 やはり人の興味を引く事と思う。 堀ちゃんの人生は波瀾万丈過ぎて、 たった1時間や2時間の話では収まらず、 いつもかなり端折って話さなければならず、 はい、今日はここまで。 続きは次回! と言いたくなるぐらい、 本当に見事な物語になっていて、 きっと細かく聞けば聞くほど、 その不思議なまでの縁や出来事に 誰もが引き込まれてしまうと思う

          生きていれば。

          『とにかく死なないこと!  生きてればいいんだ!』 今まで何度、 この言葉を言ったか分からない。 想像の斜め上いく、 青年達が起こす数々のトラブルには いいのか悪いのか分からないけれども、 これぐらいの気持ちで無ければ とても付き合ってなんか いられないものがある。 顔がボコボコに腫れ上がったLINE。 『お母さん、喧嘩を吹っかけて  ボコられました』 『バイクで事故りました』 『もう死にたい』 唸りながら電話がかかって来れば、 前歯は折れて無いかい? 全く、

          君の手は尊い。

          君と初めて出会ったのは二十歳の誕生日。 はにかんだ顔がとても可愛いらしく、 私は一瞬で大好きになった。 それからずっと遠く 離れた場所に居たけれど、 毎日電話が掛かってくるようになって 少年院のこと、鑑別所のこと、 家庭学校のこと、児童相談所のこと、 親のこと、生い立ちのこと……。 自分の人生を ゆっくりゆっくり話してくれた。 君に嬉しいことがあれば 私も嬉しいし、 君が悲しんでいれば 私も悲しくて、 可愛くて可愛いくて、 その分、沢山心配もしてきた。 上手

          失敗の繰り返しから。

          人は様々な失敗をするものだ。 とても努力する人でも、 どんなに優秀な人であっても、 生きている限りは、 “失敗しない”なんて事は、無いはずだ。 かく言う私は“失敗王”で、 極々当たり前のように 間違えたり、大失敗したりして、 頭を抱えながら日々を生きている。 小さな子供の頃から ずーっと、そうなのだ。 だからもう、 いちいち落ち込んでなんか、いられない。 細かい事にはこだわらない。 もうこれは、 “不治の病”なのだと 開き直って生きている。 スマイルリングには、

          『ごめんなさい』から始まる事。

          身体がモリモリと大きく、 タトゥーや入れ墨の入っている子もいる ヤンチャなうちの青年達ではあるが、 私からすれば、皆んなただの子供だ。 どうでもいい隠し事をしたり、 よく約束を破る。 やれやれ、というような事を しょっちゅうやらかすのではあるが、 面白い程、必ずバレる。 何故なら大抵、 『言わなきゃならない事があって…。』 そう言って、 自分から“白状”するのが常だからだ。 彼等の事が本当に可愛いくて じーっと彼等の顔を覗き込む私に、 嘘や隠し事なんか、 そうそう通用

          『ごめんなさい』から始まる事。

          幸せになっても、いいのか。

          母さん、今日は 夕方、忙しいですか? 朝起きてLINEに気付く。 すみません、 声、聞きたくて、 謝らなくていいのさ。 私だって、元気もらってるよ。 大体、“声が聞きたい”なんて そんな嬉しい言葉、 滅多に貰えるもんじゃあない。 感性豊かなこの子と話すと、 感激する事は沢山ある。 最近で一番のお気に入りの話は、 彼の子供の頃の思い出話だ。 自分、目玉焼きが 可哀想で食べられなかったんですよ。 目玉焼きって、黄身のところが まん丸で、ツヤツヤしてるでしょう。

          無償の愛をくれる君達へ。

          自分は今、 お風呂を入れながら、 味噌汁作ってるんすよ。 仕事で毎日朝が早い彼は、 ここのところあまりに疲れ過ぎ、 夜もよく眠れず、元気が無かった。 やっと少し、 食欲が出てきたようだ。 いろんな悩みがてんこ盛りで 頭の中も心の中も 整理が全然追いつかない。 それでも仕事の現場に行くと、 ニコニコ笑いながら、 皆んなと一緒に汗を流して働くから、 誰も彼の中が どんなにグルグルしているのか 分からないのだ。 このところ、 日勤、夜勤と続いて 相当ハードに頑張った。

          こんな気持ちになるなんて。

          何年も、毎日毎日、 ずーっと、 ただただ、辛かったこの心が、 “こんな事に負けてたまるか!” “負けない!”って気持ちになって…。 電話の向こうで 涙を流しながら、 しかし、 今までとは明らかに違う 力のある声でこう言った ○○君のお母さん。 ああ、これでやっと一歩、 何かが変わっていくのだろう…。 そう思った。 とても可愛い子だったようだ。 幼い頃は身体が弱く 入退院しては ヤキモキしながら育てた。 発達障害の多動で落ち着きが無く、 学校に行くようになると 先

          しょうもない君だけど。

          私もこの歳だし、 結構、いろんな経験をしてきた つもりでいるけれど。 まだまだ知ってたようで知らなかった、 未体験の事が沢山あるんだなぁ…と つくづく思うこの頃である。 刑務所への面会。 裁判の傍聴。 出所の出迎え。 全部 初めての経験であった。 テレビや映画で何度も観てきたし、 何をやらかすか分からない 危なっかしい“息子達”が居るのだから 想像してみた事は何度もある。 “もしも”最悪の事が有れば、 そんな事もあるんだよな…” と考えていたからだ。 ただ実際

          君の夢をみたよ。

          そーっと入ってきたのだろうか。 人の気配がする。 こちらもそーっと覗いてみる。 曇りガラスの戸の向こうには、 金髪と、見慣れた大きな身体のシルエット。 帰ってきたの!! 思わず戸を叩いて声を掛けると、 ぼんやりしたガラス越しにも分かる、 恥ずかしそうに笑う君の顔。 ゆっくり目の前に出てきた君に もう一度、 帰ってきたんだね! そう言うと、 やっぱり恥ずかしそうな顔で ハイ…と頷き返事をした。 私は嬉しくて、 “ああ、帰って来た。  何処で何をしていたのか分