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苦しみを一緒に力に変える。

こんにちは。北海道とかち帯広で、児童養護施設や少年院出身の青年の自立をサポートするNPO法人スマイルリングでの、青年達との日常をnoteしています☺️

お母さん、

お母さん、

お母さんの、声が聞きたい…

何十回も鳴る携帯の着信音と
壊れたようなLINE通知に、

“今向かってるよ”と返信しても、
繰り返される通知音。

不安と怖さが
電波のように伝わって来る中、

妙に冷静な私が、
私の心を見つめている。

今は行くべきだ。
今、私はあの子に会わなくちゃ。

自分の心が強く
そう言っているのを信じて走る。

何回も届く、めちゃくちゃな
LINEスタンプにも
ぐっと胸が痛む。

私は、私を信じて走るしか無い。

青年達の
薬物、アルコール依存症に、
私は本当に悩まされている。

家族や周囲にそれはそれは
酷い迷惑を掛け、心配を掛け、
何度も何度も振り回される。

約束を破る。
当たり前のように嘘をつく。

お金も、仕事も、信用も、居場所も、
どんどん無くなっていく。

意識が飛んでいる状態で
めちゃくちゃな事をしでかしては、
“覚えていない”という。

本人もそうだが、周りの命だって、
何があるか、分かったものでは無い。

脳も、身体も、精神も、生活も、
本当にボロボロになってしまう。

何人かは、入院させた事がある。

ただ、医療につなぐのも、
専門性を持った支援団体につなぐのも、
そう簡単な事では無い。

『ダメだよ、やめなさい!』
そんな事を言ったって、
無駄な事も分かっている。

当の本人も、
本気で苦しみ悩むのだが、
どうしてもやめられない。

青年達は、そんな自分を恥じ、
自暴自棄となり、
自分の命も、生活も、
更に大切にしなくなる。

とてつもなく厄介な、
正真正銘の難病が『依存症』なのだ。

私は彼等が“シラフ”の時にしか
会いたく無い。

薬物やアルコールが入っている時には
話したく無い。

めちゃくちゃで
ろくな会話にならないから、
そんな時に会っても意味は無いと思う。

いくら私だって、あの子達の
そんな酷い顔や姿を見たく無いし、
一緒には居られない。

酒を一滴も飲めない私には、
酔うことの楽しさすら、
全く、分からないのだ。

酔っ払いは嫌いだ。

酔って饒舌になる人、
どんどん大声になって盛り上がる人、
ゲラゲラ笑い出す人、

飲んでいる本人達は楽しそうだけど、
私はそこにいるのがとても辛くて、
一緒には楽しめ無い。

賑やかな居酒屋も凄く苦手で、

よっぽど私が好きな人であったり、
ごく少人数であったり、
酔ってもほとんど
変わらない人とじゃなければ、

お酒の付き合いは、
普段は、絶対に、しない。

そんな私が、

めちゃくちゃに暴れて、
人に散々、迷惑を掛けて、
酷い顔をしていて、

とても辛そうなあの子達の事を、
一体どうすればいいのか。

私にはその病を
治してあげる事が出来ない。

時にはカンカンになって雷を落とし、

自分の人生なんだから、
何処にでも行って
自分の好きなように生きればいい!

あんたがホームレスになろうが、
何回刑務所に行こうが、そんなもん、
私は可哀想とも何とも思わん!

私が、どうしてお前たちの
尻拭いをせにゃならん!

困った時だけ連絡寄越して、
いい加減にしろ!!

本気で、そう思って、
本気で怒る。

寄り添うって、何だろう。

愛するって、何だろう。

私はどうすれば良いのだろう。

“いつも逃げ道になってあげて、
結局は許して貰えると分かっていると、
狡さになり、その子の為にならない”

“徹底的に全てを無くし、
寂しい、孤独になる事を経験して、
自分はようやく、分かったんです。”

壮絶な過去を生き抜いて、
そうして立ち上がったんだ、という
経験者から聞くと『そうだよなぁ』と思う。

でもそれじゃあ私は、
あの子達と、どう向き合って
いけば良いのだろう。

私はただただ、あの子達に
ご飯を食べさせたいし、

絶対に、孤独にさせたく無いし、

沢山、沢山、可愛がりたい。

その思いしか無いのだけれど、
それがあの子達を
ダメにしているのかなぁ…

私の接し方が悪くて、
こうなっちゃうんだろうか。

悩み苦しんでは、
とことん、自信を無くしてしまう。

それでもやっぱり私は、
自分の心をじっと見つめて、
毎日、毎朝、考える。

私はあの子達に、
どうなって欲しいのか。

私は本当に、
あの子達の事を、
どう思っているんだろうか。

私はあの子達の未来がみたい。

あの子達の事を、根っこの部分では、
絶対に信じられる、自分でいたい。

あの子達も、失敗を繰り返して、
でも絶対に、いつかは幸せになれるんだ。

あの子達の事が可愛い。

凄く面倒くさくて、
本気で腹が立って、

それでもやっぱり、
愛しているから、苦しみ悩む。

私やあの子達は、周囲に
迷惑や心配ばかり掛けているのに

こんな事を言うと世間に
凄く怒られるだろうが、

もしも、
本当にあの子達が何回か
刑務所に行くなら行くで、

そういう過去を経て
人生をやり直してきた人は沢山居るし、

それがあの子達にとって、
本当に必要な経験なら、
それでもいいと私は思っている。

ただ、被害者が出る事が本当に嫌だ。
あの子達が周りに迷惑を掛ける事には、
本当に、悩みぬく。

お母さんだぞ!

俺のお母さんなんだぞ!

電話の向こうで、酔っ払って、
お巡りさんに囲まれながら叫ぶ
あの子の声が聞こえる。

駆けつけると、
まるで小さな迷子のような顔をした
あの子が裸足で走ってきて、

泣きながら抱きついてくる。
肋骨が折れそうな程だ。

お母さん、

お母さん、怖かった、、

お母さんは、ガリガリだな、
俺が心配ばっかりかけるから、、

ごめんよ、お母さん、

ごめんなさい、、、怖かった、、

散々迷惑をかけたお巡りさん達、
特に、彼とそんなに歳の変わらない
若いお巡りさんは、

目に涙を浮かべて
そんな私達を見つめていた。

全てを無くしたと泣く君よ。

本当に目が潰れるぐらい、
泣いて泣いて、

私のTシャツをびしょびしょにした君よ。

君はまだ生きているんだよ。
それはこれから、
全てを生み出す、宝物なの。

私は君が何処にいようが、
どんな失敗をしようが、

生きている限り君のお母さんでね、

めちゃくちゃ怒るお母さんだけど、
酔っ払ってる時は電話切っちゃうけど、

でも、ずっと、君のお母さんなんだ。

酒や薬物、何かに依存するのは、
その人にとって、『生きる為の杖』
として必要だからと聞いた時、
私はとても納得をした。

その杖が必要無くなるようなものを
得られた時、回復が始まるという。

それは居場所だったり、
一緒に乗り越えていく仲間だったり、
医療だったり、
知識だったり、、、

生きる支えとなる大切なもの。

何にせよ、それも
自分自身が決める事で、
それは一生続く闘いとなる。

私が彼等を治してあげられる、
とは、思っていない。

余計な事はせず、その回復を、
待つことしか出来無い。

今まで、
出来る事は全てやったと思う。

だから私は、
毎日祈るしか無いのだ。

命という宝を君は持っているんだ。
だからどうか、
今日も生きていて欲しい。 

『生きてなさいよ!!』
と繰り返すしか無い。

薬物や酒という杖が無くても、
子供や若者達が生きていけるように、
本気で大人が頑張らないといけない。

そんな酷いもので、
若者達を食い物にして稼ぐ悪も、
絶対に許せない。

子供や若者たちを
本気で守っていく決意が大人に無ければ、
悲劇は決して無くならない。

だから、
私は負けてなんかいられないな。
感傷に浸ってなんかいられないんだ。
そう思う。


あんなに悲しい顔をした子供の顔、
あんなに涙を流す人間を、
私は見た事が無い。

あれから私の心もずっと涙が止まらず、

あの子をずっと、ポケットに入れて
生きていられたらと思ってしまうのだ。

この悲しみや苦しみ、
あの子が呼ぶ声を、
私は私の力に、きっと変えてみせる。

私達は不思議な縁で出会う。

沢山の人に、
心配を掛けたり、支えて貰って生きる
私達の人生の先にも、
必ず、素晴らしい未来が待っている。

そう、あの子達に確信をもって、
コツコツ伝え続けていこうと思う。

NPO法人スマイルリング
理事 ののむらちあき

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