登ったり降りたりを一緒に。

こんにちは！社会的養護、少年院出身の青年達の自立支援団体ＮＰＯ法人スマイルリングでの、青年達との日常を綴っています☺️

そもそも“普通”が何なのかは
よく分からないのだけれど、

やっぱりウルトラ問題児との縁は
濃い私である。

昔の私がそうであったように、

私の周りの多くの大人たちが　
そうであったように、

必ずと言っていいほど、
ここに来る子たちはどの子も、
何かしらの問題を起こす。

『そりゃそうだよね』

そう思っているので
何か起こったときには
おお、そう来たねぇ、と思う。

それがスマイルリングの日常だ。

文字通りの行ったり来たり、
急勾配を上がったり下がったり、
急カーブでグルグル。

そんなジェットコースターに
乗り続けている青年がいる。

この彼のジェットコースターの隣に
ようやっと私も座れるようになったのは
丁度１年ほど前だ。

２年前、少年院を出て来たものの
甘ったれで、
何かに頑張った事が、
本当に無いんだな、という子だった。

中学生からずっと薬物漬けで
シラフでいた事が無く、

何か問題を起こすと、全て親に
尻拭いして貰いながら
めちゃくちゃしていた事を
自慢げに話し、

“親が金持ち”だから、と、
そんな話ばかりしていた。

人懐こくて可愛い顔をしている
この子自身も、きっと自分の事が
全然分からないんだろう。

本当は、
沢山不安で、
何が何だか分からない自分の状況を
しっかり受け止める事も出来ないし、

それが怖くて仕方ないのかもしれない。

いつも面白おかしい事しか言わない、
彼の心の痛みと触れ合えるのは
いつかな、

そう思いながら、
彼がやらかすしょうもないアレコレを
見つめていた。

しかし、
何度も何度も明らかな間違いや
現実逃避を繰り返していった結果、

彼は彼自身の行動によって、
どんどん追い詰められて
逃げ場を失っていった。

淡い願望だった頼みの綱の親は、
もう、どうしても助けてくれないと
ようやく気づいた１年前。

誰も人の尻拭いなんかしてくれない。
自分の人生ならば、やっぱり自分が
闘わねばならないのだと、
追い詰められた時、

ようやっとそこで私も、
伴走者として
彼のジェットコースターの横に
座る事が出来たのだ。

ジェットコースターに乗りながら、
覆っていた目を開け始めた彼の不安が
ダイレクトに伝わるようになっていった。

『助けて、怖い、辛い』
シラフで現実の一日一日を
歩きながらそう言う彼に、

そうか〜、辛いか、
怖いか、困ったねぇ、、、

とにかく一緒に居て、
なかなか上手くいかない日々を
一緒にオロオロ悩んでは、

あっちへ行き、こっちへ行き、
登ったり、降りたりした。

でもその先々では、

例えば市役所の保護課の人だったり、
入院先の病院のスタッフ、先生、
デイケアの皆さんだったり、

市議会議員の人だったり、
更生保護女性会の皆さんだったり、

いろんな人が暖かい声を掛けてくれ、
沢山の人に護られ護られ、

何と就労先も決まり、
運命の出会いとも言えるような
素晴らしい人格者の上司とも出会い、

数限り無い失敗と
周囲からの応援と愛でまた起き上がり、
ここまで来た。

“自分には、頑張る事なんか、出来ない”

そう思い込んでいる彼の、
諦めの“サビ”を丁寧に落とし、
回らない車に、油をさす。

燃料タンクが空になったら慌てず、
少し止まって、
タンクに燃料が少し、溜まるまで待つ。

まだまだ満タンにはならないタンク。

他人から見れば、
これぐらい、出来るでしょう？
ということでも、

彼は、予測不能の
ジェットコースターに乗っていて、

『最近、凄く良いね！』
と褒められたとしても、

今日は物凄い落下をして、
『どうして？』となる。

周りも本人も、
本当に訳が分からないのだ。

彼は薬物統合失調症という
とても厄介な業病と向精神薬と共に
生きている。

そんな一日一日を過ごす彼は、
やっぱり凄く、
頑張って生きていると、私は思う。

今日も彼は勇気を奮い起こし、
『行って来ます…』と
玄関を出て行った。

“頑張る”事が、
かなり出来るようになった。

彼が頑張る事に挑戦すると、
応援してくれる人達が、次々と現れる。

私は彼の代わりに頑張る事は出来無いけれど、
せめて、『行ってらっしゃい』だけは
あったかくしてあげたい。

彼のただ目の回る、
いつレールを外れるか分からない
危なかったジェットコースターは、

少しずつ、少しずつ、
この道で大丈夫だよ、という
軌道を描き出している。

そしてこのジェットコースターに
一緒に乗ってくれる人がいるのだから、
心から感謝するしか無い。

出会った頃と比べると、
いつの間にか
彼の甘ったれも卒業しつつあり、

顔つきも体格も青年らしく
逞しくなってきて、

私も彼が悪い事をした時には、
物凄い雷を落とせるようにまでなった。

暖かく忍耐強い周囲の理解と、
充分な休息、服薬に支えられて、

悩みばかりと言ってもいいぐらい
悩みと葛藤だらけの毎日を、
一歩一歩、歩いていく。

一歩あるけば、
その分筋肉がつく。

ボンヤリ薄ら笑いだった顔が
グングン逞しくなってきても、
まだまだ、可愛い顔をしている。

もう少しゆっくり、
一緒に登ったり、降りたり、
いろんな景色を見て行こうと思う。

ＮＰＯ法人スマイルリング
理事　ののむら　ちあき💫

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