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【architecture】南向き信仰の日本人

戦後昭和30年に日本住宅公団が設立され、日本中にコンクリートの団地が大量に建設された
これは昭和50年頃まで続いた

全国には板チョコのような団地が綺麗に南を向いて並行配置され、それぞれの間隔も等間隔にならべられている

これには全ての住戸に平等に日照を確保することが求められた為である

冬至の日照を元に南側の棟の高さから棟間の距離が決まっているのだ

その様はまるで行進をする兵隊さんのように綺麗に並び、全員が南を向いている

各住戸はいわゆるnDKというタイプのものでいくつかタイプがあるがそれを並べてつくられている
nDKはダイニングキッチンといくつかの部屋で構成されている
リビング(=L)は最初はなくて一部の部屋が兼用していた
初期の団地は、とりあえず食事をするところと寝るところはせめて分けましょう(寝食分離)が謳われていたので、リビングでくつろいだのち布団を敷いて寝るのが当たり前だった

私も団地育ちであるのでこの暮らしには馴染みがある
しかも団地は板チョコみたいな形をしていて二列配置で南向きだった

この団地によって一般サラリーマンでも住宅を購入できるようになったのは間違いないし、団地の果たした役割は大きい

話を世界に向けると、フランスはマルセイユにル・コルビュジエという建築家がつくった『ユニテ・ダビタシオン』という共同住宅がある

1952年に完成したこの共同住宅は、ピロティという支柱で地上から持ち上げられた鉄筋コンクリート造17階建の建物で、独身者用から大家族用まで23タイプ337戸の住戸に加えて、食料品店やレストラン、郵便局、ホテルまでもが併設され、最上階には保育園、屋上にはプール、体育館、日光浴室といった共用施設が組み込まれている
地上から持ち上げられたこの共同住宅はまさしくひとつの街のようなものである

それぞれの住人が自由に暮らし、お年寄りから子どもまであらゆり人が共に住まうことを楽しんでいる

日本の団地のように、板チョコのような形状には変わりないが、ユニテは南北を軸にして東西にバルコニーを持つ構成になっている

日本では平等に日照を確保することを絶対としていたが、ユニテでは平等よりも東側の朝日や景色を楽しむ暮らしや、夕日を眺める暮らしなど好みに合わせて住戸を選べることが優先されている

ユニテ・ダビタシオンは日本の団地が誕生した時期とあまり変わらない時代にできた建築である

ユニテはル・コルビュジエが構想した理想の形で数少ない現実化したものであり、世界的にも最も有名な共同住宅のひとつもいっても過言ではない

日本の団地とユニテを比較することは、国も役割も環境も違うので一概には言えないが、いかに日本人が平等であることを第一に考えてきたかを表しているように思う

日本では今でも不動産には南向き信仰が強く、どの方位を向いているかが土地の値段を左右する
しかし世界を見ると、あらゆる方位での暮らしをそれぞれ楽しみながら暮らしている

南向きだけが全てではない
明るい空間や薄暗い空間があっていいじゃん
一日のうちに数分だけ綺麗な陽射しが差し込む部屋があってもいいじゃん
時間の移ろいで明るさが変わる住宅でいいじゃん
みんなと違っていたっていいじゃん

私の住む岡山にも空室の目立つ団地が廃墟のように残っているものをよく目にする
これは全国的に見られる状況だろう
近年では団地の再生が実施されて有効活用されている事例も多く見られる

しかし住人の高齢化し建て替えや改修が難しい団地が数多くあるのも事実だろう


団地に限ったことではないが、少しくらい人と違っていたって困らないのではと思う
むしろ個性を楽しみ、個性を許容する精神が社会を豊かにするのではないだろうか

みんな揃って”右向け右”的な”南向け南”の考え方は、もったいないように思う

最後にフランスで日本人建築家の藤本壮介さんが設計した共同住宅をご紹介

写真はHPより引用しました

大きな幹に枝が生えているような建築である
色々なタイプの住戸があり、様々な方位を楽しめる共同住宅である

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