*この記事は、「はじめての本 - Imperfect story of mine」という有料マガジンに掲載されている私小説の第2話です。第一話はこちらから。
預けていたバックパックが紛失し、予想外に身軽な恰好でチューリッヒ空港から市内に向かうスイス国鉄SBBの車内で、私はぼんやり、
「なんで私は一人でこんな遠くまで来たんだろう?」
「初めての一人旅で、誰も知り合いがいなくて、物価も高いヨーロッパまでわざわざ来なくても、国内にしとけばもっと楽だったんじゃない?」
と、心
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はじまり - lost baggage
*この記事は、「はじめての本 - Imperfect story of mine」という有料マガジンに掲載されている私小説のはじまりです。このストーリーを書き始めた経緯についてはこちらから。
「あれ?荷物が出てこない」
人生初の一人旅。バイトで貯めたお金で買った、一番安く目的地のグルノーブル近辺まで行ける航空券は、台北 → クアラルンプール → アブダビを経由するチューリッヒ着の便でした。
3回の乗り継ぎを経てやっと到着した目的地で、ベルトコンベアーに乗った荷物が運び出