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「自」営業で家族を養うという覚悟。

「週休1日とかですか?」

週休半日です。日曜日の午前中だけ休みで午後からはまた翌日の仕込みが始まるんで」

とある日。
仕事を介して知り合った方に話を聞いて心底驚いた。

週休半日の生活を、もう40年近く続けているそうだ。


その人は「作ってくれる人」だった


その人の事を、ジョーさんと呼ぶ事にする。

ジョーさんは、和菓子等に使われる材料を作る職人さんである。
よくよく話を聞いてみると、地元では大変有名な和菓子店をいくつも取引先として抱えていた。
勿論私も食べた事があり、大好きな和菓子の1つであった。


その「和菓子店」の名前はきっと地元の人なら誰もが知っている。
和菓子のファンという人も沢山いる。

だけど、その和菓子の原材料を作っているジョーさんの存在や、会社(工場)の名前は誰も知らない。


「有名な一品」の裏に、名前も顔も知らない誰かの活躍があるという事を改めて感じた。

まさに「作ってくれる人」がいるから「買う事ができる」という、この本に出てきたような社会のつながりを感じる話だ。

食っていくため

そんなジョーさんの仕事ぶりは凄い。

毎朝2時半頃起きで取引先へ配達。
6時頃には自宅兼工場に戻り、製造を開始。
お昼頃になるとやっと製造が終わり、1~2時間休憩。
その後15時頃から翌日の仕込み…

お休みは日曜の午前のみ。
製造業に携わるのは、ジョーさんと奥様の2人だけ。

この生活をもう40年以近くけているそうだ。

この工場の一代目は、ジョーさんのお父さん。
だからジョーさんは、子供の頃から「週休半日しかないお父さん」をずっと見てきたので、この生活を「当たり前」だと感じている。
むしろ「嫁さんは可愛そうですけどね」とねぎらっていた。

いやいや、大変失礼ながら「人間とは思えない」と言う表現が一番しっくりくるストイックさである。

思わず「凄いですね。何でそんなに頑張れるんですか?」と聞いてしまった。

ジョーさんは驚いた様子で
「いや、食っていく為ですよ。他にできることないんでね。」と笑っていた。

凄すぎる。

つい最近、フリーランスに比べて会社員は恵まれているという話を書いたばかりだ。

企業が「福利厚生」も「収入」も良くして、やりがいも与えて、必死で人を集めようとしている流れも強く感じる。

それに比べたら、ジョーさんは正反対である。
ジョーさん程働いてくれる従業員はいないし、ジョーさんの様に働かせたら違反行為である。

それでもジョーさんは自分でその道を選び、何の疑問も持たず、奥さんとお子さんをしっかり養っている。

何よりも、会社員だろうが、自営業だろうが、昨日の私のように体調がすぐれない日もきっとある。

それでもずっと続けてきたんだ。


自分が休めば、取引先のお菓子は完成しない。
連休なんて取ったら他の業者に仕事が奪われてしまうかもしれない

フリーランスと言えば、何だかふわっとした自由な働き方に聞こえる。
でも、これは「自営業」である。
自らが「営業し続ける」事で成り立つのだ。

一生超えられない存在


そんなジョーさんだけど、自分の作る作品に満足はしていないそうだ。
自分の作る作品よりも、亡きお父さんの作品の方が味が良かった。

最近になってやっと取引先から「上手になってきたね」と褒めてもらえる事も出てきたけれど「一生超えられないと思います」と語っていた。

その話を聞いて、
「ジョーさんは、一生超えられないお父さんという存在がいるから頑張り続けられるのかもしない」と感じた。


時代の流れが早くなり、求められる仕事は変わっていく。
大企業=安泰ではなくなりつつある。

一方で、価値観がどんどん変わり、正解のない世界で迷子になる人も多い。

私もその一人である。

でもジョーさんは、「親父の味」という超えられない壁に挑み続ける人生を選び、毎日休む事なく努力を続けている人なんだ。

勿論誰でもマネできる事ではないし、時代が求めなくなる日もくるかもしれない。

だけど、どんな道を歩むのかは人それぞれだ。
何よりも私は、休む事なく続けられるタフさにただ感服してしまった。


明日は、夫の実家へ帰省をする。
私はジョーさんの作った作品が使われた和菓子をお土産に買ってみたいと思う。

そして子供に、ジョーさんの話をしてみよう。

〈あとがき〉
私の父も週休1日でした。
半日ではないだけマシですが、平日1日しか休みがなかったので土日に一緒に出掛けた記憶が殆どありません。
逆に「休みの日に出かけた」数少ない思い出は物凄く色濃く残っています。

当時、私の母は「もっと休みの多い人と結婚しなよ」と私に忠告していましたが、きっとジョーさんのお母さんは「お父さんのお陰でご飯が食べられる」とかお父さんを心から尊敬して褒めていたのかな?と思います。
そうじゃなければ、中々その生活を継承しようとは思えない気がするのです。
どんな人生を選択するのも自由ですが、一生超えられない壁を追い続けるジョーさんは凄くカッコよく見えました。

当たり前ですが、人には色々な生き方あがありますね。

勿論、私は「8時間労働撲滅委員会 会長」を続けますが(笑)

今日もありがとうございました。




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