見出し画像

ブッダの教えは誰もが「充実した人生を生きるための指針」。『ブッダが説いた幸せな生き方』最終回

誰もがブッダの教えによって有意義な生き方を始めるために、『ブッダが説いた幸せな生き方』(今枝由郎 著 岩波新書)を読んでいます。

前回はブッダが説いた、幸せになるための経済生活について述べました。


最終回のこの記事では、ブッダの教えは誰もが「充実した人生を生きるための指針」であり、ブッダとしての生き方は誰にでも実践可能であるということについて述べていこうと思います。

ここまで取り上げてきた、普段の心がけである「四無量心」や、日常生活において守るべき生き方のルールともいえる「五戒」、経済的生活についての教えなどは、今枝氏がこの本の第3章の「ブッダが「目覚め」たこと」のなかで取り上げている「ユマニスム」という概念に通じているように思います。

フランス語のことばである「ユマニスム」とは「日本語では人本主義、人文主義、博愛主義など」と訳されますが、「人間を中心に考える、より人間的なものを追求するという意味で、「人間主義」と訳すのがふさわしい」と今枝氏は述べています。



またフランス文学者である渡辺一夫氏の、

「ユマニスムとは、わたしたちがなにをするときでも、なにを考えるときでも、かならず、わたしたちの行為や思考に加味されていてほしい態度のように思う」

という言葉を挙げていますが、この言葉が「ユマニスム」という概念をうまく説明しているように思います。

社会が複雑化・不安定化していく中でどういう生き方を選べばいいか、頼るべきものが無いなかで一体何を頼っていいのか、もしくはどの方向に進むのが倫理的に正しいのか、など、時に私たちは森の中をさまよっているかのように、方向性を見失います。


しかしブッダの教えとは、迷った時に正しい方向を指し示すコンパスのようであり、「わたしたちがなにをするときでも、なにを考えるときでも、かならず、わたしたちの行為や思考に加味されていてほしい態度」であるというように、「幸福のレシピ」「幸せな人生への指南書」としていつも肌身離さず携帯し、その都度、参照すべきものなのです。

 ブッダの教えと実践体系は、時代と地域を問わず、人生をよりよく、より人間的に生きたいと願うすべての人にとって意義のあるものです。ブッダの時代から二千五百年近くが経ち、グローバリゼーションの時代といわれる今日になっても、それは変わることなく、ブッダのメッセージはすべての人間が、幸せで、充実した人生を生きるための指針であり、まさに幸福のレシピだと確信します。

今枝由郎『ブッダが説いた幸せな生き方』 174頁



ブッダとしての生き方は誰にでも実践可能。

そしてブッダとしての生き方は誰にでも実践可能であるように思います。ちなみにここでいう「ブッダ」とは「目覚めた人」を意味します。

今枝氏はこのことに関して大乗仏教の「一切衆生悉有仏性」(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)という理念を紹介し、

自らに潜在する仏性に気付き、それを開花させるための修養を積めば、誰でも「目覚めた人」となることができます。大切なのは、自分の内に眠っている可能性を自覚し、修養を積むことです。

と述べていますが、「ブッダの教えは誰にでも開かれたもの」であり、生まれや育ちや学歴や年収は関係なく、心はもともと曇りのない鏡や青空のようなもの、自分自身の「意志」次第で、誰もがブッダ(目覚めた人)を目指せるのです。


ブッダの教えは誰にでも開かれたものであるという考えは、仏教の基底に脈々と生きています。それをはっきりと提唱しているのが、大乗仏教の一切衆生悉有仏性という理念です。これは、すべての生きもの(一切衆生)――といってもブッダの教えを聴くことができる生きものということで人間が念頭に置かれています――には、一人ひとりがブッダとなる、すなわち「目覚めた人」となる可能性(仏性)が潜在している、という思想です。潜在的に内蔵されているとはいえ、普通の人はそれに気付かず、それを啓発し開花させようとはしていません。それが凡夫として、煩悩に囚われ、この世界に彷徨っている状態です。しかし「才能に目覚める」と言われるように、自らに潜在する仏性に気付き、それを開花させるための修養を積めば、誰でも「目覚めた人」となることができます。大切なのは、自分の内に眠っている可能性を自覚し、修養を積むことです。

今枝由郎『ブッダが説いた幸せな生き方』 178頁


 ブッダは人として幸福に向かって歩むべき道すなわちレシピを教えるだけであり、その道を誤らずに歩めるかどうか、美味しい料理ができるかどうかは各人次第です。
 ブッダは、自分の教えはことばの次元ではなく、実践によって一人ひとりの人格に具体的に反映されて、初めて意味があるものと考えていました。
 ブッダはこう述べています。
 「よい教えは理解してこそ糧になり、理解したことは、実践してこそ糧になる」
 仏教は、空虚な理論、教義ではなく、誰にでもできる、誰もが行うべき実践の教えです。

今枝由郎『ブッダが説いた幸せな生き方』 36頁



ここまで今枝由郎氏の『ブッダが説いた幸せな生き方』(岩波新書)を14回に渡って読んできました。

最初の記事でも書きましたが、この新書はお釈迦様の教えが詳細かつコンパクトにまとまっており、わかりやすく、初めての方が仏教(ブッダの教え)を学ぶのに最適であるため非常にオススメです。


そういうわけで、これからブッダの教えを学び実践することで、幸福で有意義な生き方を始めてみませんか?

この記事が少しでもそのきっかけになるのであれば、筆者としては大変うれしく思います。


お忙しい中ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます😊


関連記事



この記事が参加している募集

推薦図書

新書が好き

もしサポートしていただいた場合は、令和の時代の真の幸福のための、より充実したコンテンツ作りに必ず役立てます。