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ブッダが説いた、幸せになるための経済的生き方とは? 『ブッダが説いた幸せな生き方』⑬

誰もがブッダの教えによって有意義な生き方を始めるために、『ブッダが説いた幸せな生き方』(今枝由郎 著 岩波新書)を読んでいます。

前回は、ブッダの教えを日常生活のなかで実践していくために守るべき「五戒」を取り上げました。


今回はブッダが説いた、幸せになるための経済生活について述べてみようと思います。

「仏教」(ブッダの教え)は「心の修養」というものに重点が置かれていますが、


『ブッダが説いた幸せな生き方』の著者である今枝由郎氏は、

「ブッダの関心は、第一に人々の幸せであり、それは、倫理的、精神的原則に基づいた清らかな生活を送って初めて実現されるものです」

としながらも、

「しかしブッダは、人間の生活の物質的、経済的、社会的側面を無視していたわけではありません」

と述べています。

そして、「そうした側面が好ましくない状況下では、人が精神的に進歩し、幸せになることは難しいということを十分に認識」しており、「物質的福利はそれ自体が仏教の究極目的」ではないものの、「ブッダは人間生活にふさわしい最低の物質的水準の必要性を認めていました」と説明しています。


そのうえで、ブッダは一人の信者に、普通の家庭生活を営む者にとって、

(一)全うな手段で得た富と経済的安定を享受すること。
(二)自分のため、家族のため、友達と親族のため、そして慈善事業のために自由に支出できること。
(三)借金がないこと。
(四)身口意の悪業を犯さずに過ちのない、清らかな生活を営むこと。

という四つの幸せがあると説いたとしています。そして、

この内最初の三つが経済的な幸せなことであることは注目すべきことです。しかし忘れてならないのは、ブッダは経済的、物質的幸せは、過ちのない、清らかな生活から生まれる精神的幸せには到底及ばない、と述べていることです。

としています。

また今枝氏は、ある仏典に「貧困は犯罪の原因である」と記されており、「同時に、犯罪を刑罰によって減少させたり、なくそうとするのは無意味で、けっして成功しない」とも説かれていることから、

ブッダによれば、犯罪を根絶するためには、人々の経済状況の改善が必須の条件です。農民が種と必要な農具を手にすることができず、商人やビジネスマンに必要な資本が供給されず、労働者が適正な報酬を得られなければ、人々は満足できず、恐れや不安を抱き、その結果として犯罪が生まれます。

と述べています。そして、「それゆえにブッダは、経済状況を改善することがいかに大切かを説きました」とし、「これは一人ひとりによって成し遂げられるものではなく、社会全体の課題です」ともしています。

ちなみにこの点については、今枝氏が訳しているラーフラ師の『ブッダが説いたこと』(岩波文庫)のなかでより詳しく述べられていますが、ラーフラ師は「経済状況を改善することがいかに大切かを人々に説いた」ブッダが示した、

(1)どんな職業に就こうとも、自分の職業を熟知した上で、技術を身に付けており、手際がよく、熱心で、エネルギッシュであること。

(2)まっとうに、汗水たらして得た収入を守ること(盗難に遭わないようにするの意。当時の社会背景を考慮に入れる必要がある)。

(3)忠実で、徳があり、自由で、頭がよく、悪事を避け、正しい道を歩むように助けてくれるいい友だちをもつこと。

(4)収入に見合うように、多すぎもせず、少なすぎもせず支出すること。言い換えれば、貪欲に富を蓄えたり、派手に浪費しないこと。すなわち、身の丈に沿って生きること。

という「今生の幸福の四因」を挙げており、このことが、ブッダが説いた経済的生活を学ぶうえで大変参考になります。

ここまでブッダが説いた経済的生活について述べてきましたが、この記事のポイントは「ブッダは人間生活にふさわしい最低の物質的水準の必要性」を認めていたということです。

いつの時代も「お金」についての悩みは尽きないものですが、日々の生活において衣食住を維持していくためにはお金はどうしても必要になります。ところがお金を人生の中心に据えたり、お金を儲けることだけを人生の目的にしたりしてしまうと、その分、何かのきっかけでお金が無くなったり、極端に収入が減ったりしたときなどは、強い脳ストレスの原因になります。

しかし心だけではなく経済的生活についてのブッダの教えも、時代と地域を問わず、無理しないですこやかに、人生をよりよく生きていくための指針であるように思うのです。すなわちブッダの経済についての教えは、「お金」や仕事・働き方への悩みが尽きない行き過ぎた資本主義社会への処方箋でもあるのですね。



いよいよ次回は最終回となります。

お忙しい中ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます😊


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