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【蒸留日記vol.18】北海道育ちのコウヤマキを蒸留する!

こんちはこんちは!
北海道で生きててまさか西日本育ちのコイツと出会えるとは思ってなかった素材を蒸留するよ!

コイツとは、コウヤマキ(Sciadopitys verticillata)!
その名に高野山を冠する、どエライやつだよ!

悠仁さまのお印としても有名な、名誉あるやつ!

とはいえ、最近雪解けが進んできたもので、公園や外を散歩するのが楽しい時期になってきたんですよね。
運良ければ大量の松ぼっくりや落ち葉落ち枝と出会えるので!
というそんなこんなで、コウヤマキに出会ったワケなんですな!

それも北海道で!

■コウヤマキ(Sciadopitys verticillata)のプロフィール!

いつ見ても葉っぱがデカすぎるコウヤマキ

北限は福島県あたりとされ、南は九州までだそうです。
名前の通り、和歌山県の高野山(真言宗の総本山があるところ)にめっちゃ生えているそうで、それが名前の由来になっているそう。
もちろん北海道の山には生えていません。
(今回GETした素材は緑地帯に植えられている木から)

高野山ときたら宗教とも結びつきが深く、御神木とかお供え飾りとか宗教儀式に用いられる、品位の高い針葉樹だそうです!ワォリッチ!

皇室でも、もれなく使われている。。。

エフゲニーマエダは北海道人なので詳しいことは知らないんだけどね!

どの針葉もサイズが10センチ以上ある

そんなおいらがコウヤマキを見たときの第一印象は、葉っぱがバカデカい

針葉樹において、おそらく日本最大の葉っぱの大きさがある。
それゆえに見慣れなさすぎて、逆にキモい。
ジュラシックパークとかにいっぱい生えてそうな、南国植物なイメージすらある。
(進化系統的に針葉樹はヤシ類と近い位置付け)

ダイオウマツ(Pinus palustris)とかいうサイズで張り合ってくるマツも一応いるんだけど、彼はストローブマツと同じ"アメリカ産"。
日本でもお寺とか庭園樹でダイオウマツがいたりするので、コウヤマキと見間違えやすいかも!

コウヤマキとキタゴヨウマツの葉っぱを比較。恐ろしくデカい。

実は農業高生時代の農クの鑑定競技で、「Q.この葉っぱの針葉樹を答えよ!」という設問があり、、、
北海道の山じゃ生えないから当然見たこともないコイツが出題され、無論正答できずたった1問のミスで東京行きを逃した苦い思い出がある。。。
なんだこのデッケェ葉っぱ!?と思った。どうやら校庭の樹木園コーナーに居たらしい。

そんなエフゲニーマエダ因縁のライバルでもあるコウヤマキ。


- コウヤマキは日本だけに生育する、生きた化石! -

松ぼっくりと樹皮。スギっぽさとマツっぽさどちらともの特徴を持っている

実はコウヤマキ、日本ではありふれた針葉樹でありながら、現代日本に生える一種一属の針葉樹なんです。すごい希有!

コウヤマキの歴史を辿ると、2億年前にマツ科とスギ科が分化した際、コウヤマキも分離独立したことがDNA調査で明らかになっているそうです!
だからスギとマツのどっちつかずな特徴を持っているんだねぇ〜

そして現在に至るまで、世界各地である程度繁栄していたコウヤマキ属がなぜか一気に絶滅方向へ向かい、現代に日本列島の本州を残すのみというところまで生育範囲を狭めたそうです。
(化石では世界各国で発見されているそう)

なんだか切ない運命を辿っている、そんなコウヤマキ。

- 生きた化石の称号をもつ者たち -

葉っぱ付きの未熟な松ぼっくり

コウヤマキには生きた化石の称号があります。

「生きた化石」というと他にはイチョウ(Ginkgo biloba)メタセコイヤ(Metasequoia glyptostroboides)など、数億年前からその姿形をあまり変えない〜とか言われがちな方々。
まぁ他の仲間が絶滅したからその分、特異な姿が目立つんだろうけど、絶滅した仲間を集めてみれば多少なりと進化していることが分かるハズ。

そしてエフゲニーマエダの個人感想なんだけれど、その生きた化石たちは古来からあまり姿を変えていないせいか、葉っぱがデカい気がする。
モクレン科ホオノキ(Magnolia obovata)とかも花に原始的な構造を持っていて、もれなく花と葉っぱがバカでかい。

@北海道の木の葉化石博士 さんは昔の葉っぱ化石から樹木の葉っぱサイズの考察をされており、気候や環境によって葉っぱのサイズが変わることが学べます。


■蒸留してみる!

コウヤマキの松ぼっくりと葉っぱ

今回は採れた素材の量がそこまで多くなかったので、松ぼっくりと葉っぱの両方を混ぜて蒸留しました!

どうやらマツ科やスギ科と似通ってコウヤマキはあまり葉っぱをボロボロと落とさない性格のようで、釜を満たすだけの素材は採れず。。。
なので拾い物だけで蒸留素材を得るには、コウヤマキが5本以上は植えられている地点をベースにしたいですね。

先に松ぼっくりを釜の下に詰め、しっかりと蒸気が松ぼっくりに当たるようにします。

で後にヤシみたいなオバケみたいにデカイ葉っぱを上に詰めます。
蒸留釜上部でしっかり蒸らされた葉っぱから出た精油成分が、しっかり冷却管に入ってもらえるようなイメージ!

で蒸留スタート!

蒸気が冷却管を抜けて外気に出てきたとき、コウヤマキ蒸留の独特な香りが漂ってきた!
それはアカマツとかストローブマツのようなThe松・パインアロマに加えて、独特の甘ったるさ・トロピカル感があります。

そのトロピカルアロマが行きすぎると青臭さの領域に入ってしまうような、、、とりあえずそんな香りです!

これが南国に生える針葉樹のアロマなのかぁ、、、と精油に出会う前に謎の感動(笑)


■どれだけ精油が採れた…!?

漏斗下部まで液面を下げてもこの程度しか溜まらなかった

精油がぜんっぜん採れない!ほんとにぜんっぜん採れない!

うすーく水面に油層が広がる程度で、きっかし2時間半蒸留してもこの程度しか精油が抽出されなかった!
和歌山でコウヤマキの精油やジン作ってるところ、どれだけ苦労してんだろうか。。。

結果、サンプル分の精油が採れたのはよいものの、、、

うっすらオリーブ色つきの精油

5mLサンプル瓶の半分程度しか溜まらない抽出量となった。

まず北海道で安定的なコウヤマキの精油生産は向かないだろうなーと即思った。
どこに精油が多く含まれているかわからないけど、蒸留部材に松ぼっくりを混ぜていたのがせめてもの救いだったかもしれない。

精油に色が着く”ということは、精油に含まれる芳香物質の分子サイズが大きいこと(C15のセスキテルペンとか)で色が着く場合が多いので、おそらくは酸化されやすい松ぼっくり由来の精油なのかなぁーという見当。
思っただけだけどね。

- コウヤマキ精油の香りは? -

肝心のコウヤマキ精油の香りは、、、といっても踏まえておきたいのが、
極寒の日本最北の地で育まれたコウヤマキは、おそらく西日本のコウヤマキと構成成分が違っている可能性が高いということを前置きしてもらいたい。

精油は、そこまで強く香らない感…(鼻の調子が悪いのかも)
間違いなくミドルノートとかに分類される香りの立ち方だと思う。
フローラルウォーターの方がまだわかりやすい香りで、精油となると濃すぎるゆえか逆にわかりづらい香りとなっている。

うーん・・・

コウヤマキから採れたフローラルウォーター(芳香蒸留水)は、どことなくパインアロマ感が半分の、スッキリ感とトロピカルな甘さを感じる、独特に感じる香りだった。

- 蒸留後の残渣について - 

精油があまりに採れなかったもんだから、もしやと思って蒸留後の残渣を触ってみた。

したところ案の定、触ってもぜんぜんベタつかず、ヤニ感がぜんぜんなかった。蒸留釜もそこまでヤニで汚れていなかった。
蒸留が終わったあとのトドマツとかはベッタベタで片付けに案外苦労するのだけれど、コウヤマキはそれの対局というような感じだった。

葉っぱがデカくブ厚いので断面から内部構造が観察できる

コウヤマキは案外ヤニが少なくHealthyな針葉樹なのかもしれない。
マツともいえず、葉っぱにオイル分が少ないのはスギに似通ってるイメージがある。

■総評 ・北海道産コウヤマキの展望

エフゲニーマエダからみたら南国の和歌山にメインで生えているコウヤマキ。
南国の植物を北海道で栽培させたその樹木素材からエッセンシャルオイルを得ると、極寒環境がゆえにもしかしたらケモタイプ精油のような秀でた特性が出るのかもしれませんよ!?と。。。

しかし、日本にのみ生育する針葉樹というワケあって、海外の調査資料がまったくないのが現実問題。
なので資料検索はあまりアテにならなそうだったり。

調査費出して①北海道産コウヤマキの精油と②西日本産コウヤマキの精油の成分比較をやってみると価値が見出せるのかもしれないですね!

- コウヤマキ精油の市場価格 -

本州の精油販売者でだと、コウヤマキ精油の取り扱いが結構ある。
やはり本州や西日本では盛んに精油が作られている感じだろうか。

価格帯もアカエゾマツほど高くはない感じ。
やっぱり本州育ちのコウヤマキからはたくさんオイルが採れるのだろうか?

日本特有の針葉樹なので、"Japanese Fossile Pine"とかって俗名つけて海外に向けて売れば、付加価値生んで売れそうだけどね!


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若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。