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「絶望の隣は希望です!」 やなせたかし


「人を喜ばせることがいちばん楽しいことだということが、年を取るごとにだんだんわかってきました。だから「人生は喜ばせごっこ」なのです。」



「絶望の隣は希望です!」 やなせたかし



やなせたかしさんが「アンパンマン」の作者であることは、ご存知だと思います。


子どもたちにこれだけ愛されるキャラクターを創られたやなせさん。


順風満帆な人生を歩んできただろうと思っていましたが、本書を読んで思わず「えっ!」と言ってしまうほどの苦労の連続。


だからこそ「アンパンマン」が誕生したんだ。やなせさんとアンパンマンは一心同体なんだと理解できた本でした。


この本は東日本大震災後、やなせさんが92歳のときに出されました。


第一章では「奇跡の一本松」、あの津波で生き残った一本の松と、ご自身の人生を重ね合わせて語っておられます。


第二章からは、やなせさんの生い立ち、戦争体験、若い頃のコンプレックスが。


やなせさんのお父さんは新聞記者で、中国に特派記者として渡りました。やなせさんが5歳のときに、中国で病気になり亡くなったそうです。


その後、お母さんは再婚することになり、やなせさんと兄弟(弟がいます。)は伯父さん夫妻に預けられます。


弟は一足早く伯父さんの養子になっていましたが、やなせさんはお母さんが再婚してから預けられました。伯父さん夫妻は、とてもいい人でした。


華やかな戦前。学生生活は楽しかったようですが、しだいに戦争の影が忍び寄ってきます。やなせさんは徴兵されました。


毎日のようにビンタを食らい、「涙の毎日でした」と語っています。でも見えない力に守られたとも。やなせさんの部隊は紛争地から逃れたのです。

僕は戦争に行ったけれど、実際ドンパチもやらずに生き残った。しかし、僕の弟は、フィリピンの海で戦死してしまった。


この戦争体験から、本当の正義を感じます。

戦争っていうのは、絶対にしちゃいけない。要するに殺人だから。

戦争というのは、人をおかしくする。どんなにいい人だって、戦場で撃たれたら、身を守るためにはこちらも撃たなければならない。人殺しをせざるを得ないわけです。

そう、あらゆる残虐行為も、すべて戦争という狂気のなせる業ですよ。


そこで経験したこと。


戦争でいちばん辛かったのが「ひもじさ」だったのです。


肉体は辛くても、一晩寝れば元に戻る。でも、お腹が減ることは何よりも耐え難いことだったといいます。


もうひとつ痛感したことが、正義のための戦いなんてどこにもないこと。正義というのは、ある日突然に逆転するものであるということ。


やなせさんはその中で「覆らない正義」というものを考えました。

それは


「ひもじい人を助ける」ということ。

ここからアンパンマンを誕生させることに繋がったんです。


戦争後もやなせさんは、コンプレクッスを抱える日々が続きました。


サラリーマンから漫画家へ。でも漫画はヒット作が出ません。


そんな中、自分の居場所が見つからなくて作った詩が有名になります。


「♪ 手のひらを太陽に」です。


僕も小学校の頃よく聞いた歌で、今でも歌うことができます。


それから、絵本「やさしいライオン」 を出し、光が射しはじめます。でも、漫画ではなかなかヒット作が出ません。


そんなとき


「あんぱんまん」の絵本ができました。


はじめ「あんぱんまん」は批判が殺到しました。


当時のヒーローは、ウルトラマンや仮面ライダー!


でも、やなせさんの正義とは、
前述した「ひもじい人を救う!」だったんです。


幼稚園の先生や出版社からも「顔を食べさせるなんて、荒唐無稽だ。もう、二度とあんな本を描かないでください」と言われます。


やなせさんは思います。

「でも正義を行い、人を助けようと思ったなら、本人も傷つくことを覚悟しないといけないのです。自己犠牲の覚悟がないと、正義というのは行えないのです。」


しかし


3歳児から5歳児の間で、じわじわと人気が出てきたのです。


そうすると、状況は一転してしまいます。恐るべき3歳児から5歳児!


その後のアンパンマンの人気は、周知のとおりです。


60歳のころから、「アンパンマン」で有名になったやなせさん。本当に人生って、いつ花が開くかわかりませんね。


その他にも、やなせさんご自身の病気や、奥さんをガンで亡くされた話。


本当に苦労の連続なんですが、やなせさんの文章を読んでいると暗さというものがありません。


いつも「希望」が隣にある文章なんですね。


最後の方に「人生は喜ばせごっこ」だと語っています。


僕もいろいろ悩み癖がありまして、日々もやもやしていることが多いんです。だからこのような文章を書いて、解消しているわけなんですが・・・


その、もやもやを吹飛ばしてくれるやなせさんの考え、文章が本書にはたくさんあり、僕にとって希望の一冊になりました。


「喜ばせごっこ」


これが、人生の真髄じゃないでしょうか。

人を喜ばせることがいちばん楽しいことだということが、年を取るごとにだんだんわかってきました。だから「人生は喜ばせごっこ」なのです。

僕たちが生きているのは、人を喜ばせるためなのです。どんな人も、誰かが喜ぶ顔を見ているのがいちばんうれしいのです。


やなせさんが一番言いたかったのは、「一寸先は光」

絶望の隣にだれかが
そっと腰かけた
絶望はとなりのひとにきいた
「あなたはいったいだれですか」
となりのひとはほほえんだ

「私の名前は希望です」



【出典】

「絶望の隣は希望です!」 やなせたかし 小学館






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