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歩行

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2021年3月の記事一覧

歩行の基礎

歩行の基礎

正常歩行の姿勢制御運動パターンの生成を脳幹・脊髄の低位の層が担い、運動の計画や開始・終了、調節や学習を高位の階層が担うという中枢神経系の階層性制御が存在。

正常歩行と片麻痺歩行のバイオメカニクスロッカー機能の観点で歩行を評価するには足関節を中心に下腿と大腿が前方回転することと体幹の直立が着目すべき点。

片麻痺患者は、

麻痺側立脚後半に足関節底屈モーメントの低下によりpush offが減少し、

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下肢屈曲位の歩行はデメリットが多い

下肢屈曲位の歩行はデメリットが多い

下肢屈曲位の歩行は前脛骨筋による衝撃緩衝システムが機能せず、推進力の減衰が生じ、非麻痺側の下肢の歩幅の減少や、速度維持のための非麻痺側下肢による過度な代償運動の発生が推察される。

膝屈曲位での衝撃緩衝は下腿が前方へ倒れることの恐怖心を植え付けやすく、LRで代償的に体幹を前傾させる戦略をとることが多く、TStでの股関節伸展が不足してしまう。

荷重下での股関節伸展運動を可能にするためには推進力を維

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ステップ練習はどのようなことを意識するの??

ステップ練習はどのようなことを意識するの??

遊脚振子運動とは?の続編です。

歩行には倒立振子運動を形成し、それが遊脚振子運動へとつながります。

そのための前段階として有用なのがステップ練習です。

ステップ練習で意識することは、

麻痺側膝関節伸展位で踵接地をさせる

     ↓

荷重応答期から立脚中期にかけて大腿及び骨盤が前方推進するとともに

     ↓

立脚終期に股関節が伸展位となるように   側方から介助を加えることであ

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遊脚振子運動とは?

遊脚振子運動とは?

本来、膝関節は前遊脚期に屈曲し、遊脚中期から終期にかけて伸展する。

この膝関節の運動は遊脚振子運動と呼ばれ、立脚終期後に股関節が伸展位から屈曲方向へ移動する際の慣性力によって生じている。

つまり、遊脚期に先行する立脚期が確実に形成されることが重要な要素となる。

立脚終期に股関節が伸展せず、屈曲位の状態で倒立振子運動を形成できないと、遊脚初期に膝関節を十分に屈曲させるための慣性力が産生できない

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長下肢装具で歩くということ

長下肢装具で歩くということ

長下肢装具は遊脚期に膝が屈曲しないため、地面とのクリアランスを確保することが難しくなる。

そのため麻痺側遊脚の際は、通常よりも非麻痺側下肢への重心移動を強調しなければならず、おのずと非麻痺側下肢のみで立位保持するための下肢筋力とバランス能力が求められる。

重度片麻痺患者は非麻痺側筋力も低下していることが多いため、アプローチも必要に応じて行うべきである。

参考文献 脳卒中重度片麻痺患者の歩行再

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歩行周期とポイント 簡単なメモ

歩行周期とポイント 簡単なメモ

倒立振子運動歩行を効率化。ロッカー機能も倒立振子のためにある。脳卒中の歩行では崩壊している。

倒立振子運動の成功条件

①初速が速い

速度が遅いと重心が昇りきらない

②歩幅が大きい

歩行中重心は3~4㎝落下する。

重心の落下が大きいと歩行速度が速くなる。倒立振子の前進速度に有利なため結果的に倒立振子に有利となる。

つまりのところ、速く、歩幅を大きく、踵からついて歩ければよい。

遊脚振

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ロッカー機能!

ロッカー機能!

Heel Rocker踵接地時に衝撃を吸収する役割。

前脛骨筋の遠心性収縮と大腿四頭筋の遠心性収縮が同時に起こる。

ICでは膝伸展0°である。

遠心性収縮した前脛骨筋は同時に下腿を前傾させ膝を屈曲させる。

大腿四頭筋の遠心性収縮により膝屈曲のブレーキをかけ、膝屈曲15°まで許す。遠心性収縮が得られない場合は膝が過伸展する。

TA、Quad、Ham、脊柱起立筋などほとんどが遠心性収縮する。

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片麻痺患者はどのように歩いているか?

片麻痺患者はどのように歩いているか?

一般的な特徴として

①歩行速度が遅い

②歩行周期が長い

③ストライド長が短く、特に麻痺側から非麻痺側へのステップ長が長い

④麻痺側の踵接地が困難であり、つま先あるいは足底全体で接地する

⑤立脚後期に麻痺側のつま先離れが悪く、遊脚期にクリアランスがとれない

⑥立脚期に麻痺側の足関節が内反し、不安定である

⑦立脚期に麻痺側の膝関節が不安定あるいは過伸展である。

もっとも重要な点は

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CPG!

CPG!

CPGとは?

自動的にリズミカルな共同的動作を発生させるニューロン群やニューロン回路のこと。

歩行においてはCPGを働かせれば、歩行運動は上位中枢からの入力が無くても可能ということ。

しかし、CPGにおける歩行は自動的な運動に近く、目的を持った歩行運動ではない。

歩行中枢中脳、脳幹:逃避的要素(中脳)、姿勢(脳幹)を作り、筋緊張を調節。自動的歩行を発現する。

小脳:適切に姿勢を変化させ、

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歩行における回復と代償

歩行における回復と代償

当り前だが理学療法のすべての対象が本来の姿に回復するわけではない。

必要とされる運動機能を「回復」させるのか、「代償」させるのかを見極めることは理学療法の分岐点。

回復:血流増加による虚血性ペナンプラの回復や機能解離(Diaschisis)の解消

代償:脳自体が失われた機能を取り戻すために可塑的に変化する機能的再組織化(functional reorganization)

この可塑的な変化

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歩行における網様体脊髄路

歩行における網様体脊髄路

皮質網様体脊髄路の機能として先行性姿勢調節(APA)が残存していれば、非麻痺側下肢を振りだす際に麻痺側下肢での支持性が得られる。この部分が得られれば、無意識下での歩行獲得に繋げられる。

脳卒中片麻痺患者の実用歩行獲得に至る要因の考察 中西康二 他

補足運動野と歩行

補足運動野と歩行

一次運動野から下降する皮質脊髄路は運動出力パターンを決定し、随意運動の制御を担う。

ところで、補足運動野からの投射が網様体にあり、網様体からは姿勢を調節するための姿勢制御に関わる出力がなされる。

皮質網様体路はこの補足運動野から脳幹の網様体への投射路であり、皮質網様体路の有無が脳卒中患者の歩行能力へ関与することが報告されている。

遊脚期の歩行介助は必要ない⁉

遊脚期の歩行介助は必要ない⁉

二重振子モデル(遊脚振子モデル)では遊脚相における膝の随意的な運動は必要なく、股関節の屈曲により、下腿は慣性によって受動的に屈曲する。

これらから考えると立脚相での膝伸展による安定性保持、遊脚相での股関節屈曲と膝関節の脱力により歩行動作は達成される。

また、予期的姿勢調節の皮質網様体脊髄路の観点から非麻痺側先行で歩き始めることにより、麻痺側下肢の支持は随意的ではなく自動的に行われる。

つまり

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維持期で歩容を改善する!

維持期で歩容を改善する!

正常歩行は倒立振子運動が形成されている。

倒立振子を転がすための機能としてロッカー機能が重要となる。

Heel Rocker:前脛骨筋の遠心性収縮

Ankle Rocker:ヒラメ筋の遠心性収縮

Forefoot Rocker:ヒラメ筋の求心性収縮

維持期脳卒中患者の歩行の特徴として

麻痺側下肢の足関節機能の低下

非麻痺側下肢の荷重を優位にした代償に基づく歩行パターンを形成

この歩

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